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DEATH TERRARIUM  作者: 美味いもん食いてぇ


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第43話


 ……九十九が目隠しを外すと、そこは人一人入れる程度の小部屋だった。『装着してください』という指示に従い、黒いチョーカーを装着する。……これが爆発するのか? 殺意高いな。その時、目の前の扉に文字が浮かび上がった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▼Genre   :【Mission】+【Combat】

 ▼Title   :【X or Die】

 ▼Rule   :全ての部屋から脱出せよ!

 ▼Time limit :【∞】

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『それでは、10秒後にゲームを開始します』


 ? ……随分と単純なルールだな。九十九は関節を回し、銃のマガジンを確認する。難しいことを考えなくて良いのは助かる。今回はやりたいことが多いしな。


「……さぁ、勝ちにいこう」


 九十九はニヤリと笑い、扉を開けた。

 ……初めに浮かんだ感想は、白い。だった。広さは学校の教室くらいだろうか? 壁も床も天井も、全てが白い部屋。白い以外に何も無い……いや、一つだけあった。部屋の中央にポツンと置かれた、台座のような構造物。大理石のような質感のそれが、天井から降り注ぐ柔らかな白光を受け、ぼんやりと光っていた。とそこで、向かい側のドアが開く。出てきたのは、重装備を着た太めの……あれ?


「っお、お前!」


「あはは、この前のゲームで会った人だよね? 良かった、クリアできたんだ」


「良いわけないだろ⁉︎ 見ろ! お前のせいで全身大火傷だぞ‼︎」


 フルフェイスヘルメットを外した男の頭部は、見るも無惨に焼け爛れ、髪も全損していた。ペナルティをくらったけど、装備のおかげで助かった感じか。フスーッフスーッと鼻息を荒げる太めの男に、九十九は面倒臭そうに苦笑する。


「何で僕のせいなのかは分からないけど、取り敢えず今のゲームに集中しようか」


「あっ、おい! 勝手に動くな‼︎」


 太めの男の声を無視して、九十九は中央の台座を覗き込む。そこに書かれていた文字を見て、九十九は全て察した。


 ━━━━━━━━━━━━━

 祭壇に《右目》を捧げよ。

 ━━━━━━━━━━━━━


 このゲームのルールは、【X or Die】。恐らくこの部屋のXが、《右目》ということになるのだろう。祭壇に指定されたXを捧げない限り、次への扉が開かない。だから制限時間【∞】か。

 ……何か最近見たぞこんな感じのミーム。〜しないと出られない部屋だっけ? 面白いこと考えるよなー。

 祭壇を見た太めの男も、「ヒィッ⁉︎」と悲鳴を上げる。


「う、動くな⁉︎」


 向けられたサブマシンガンに、九十九は溜息を吐く。


「あの、なるべく痛くしないから、右目貰うね?」


「ふッざけんな⁉︎ お前のを寄越せ‼︎」


「嫌だよ。痛いじゃん」


「頭湧いてんのかお前⁉︎ あと目っ、目ぇ見て話せよ⁉︎ 親に習わなかったのか⁉︎」


「え、いや、さっきから泳いでいるのそっちでしょ」


 ……何か面倒臭そうな人だな。震えている目を見つめ返しながら、九十九は嘆息する。どうせ繰り抜かないと次に行けないんだし、さっさと貰って……ん? あれ⁉︎


「……ふひっ、ぶひひっ、ぶひゃひゃひゃひゃっ‼︎」


 いきなり笑い出した太めの男が、勝ち誇ったように九十九を指差した。


「バカがッ‼︎ 俺の異能は【催眠】! 七秒見つめ合った相手を操れるんだよぉ‼︎」


 ……な、何で教えてくれたんだ? しかしなるほど。道理で体が動かないわけだ。思考できているってことは、支配されるのは体の自由までか。


 太めの男がヘルメットを祭壇に置き、九十九の顔を見回して舌打ちする。


「っ顔も良いくせに、異能にまで恵まれやがって。どうせ毎日毎日女ヤり捨ててんだろ⁉︎ あぁ⁉︎ お前みたいなのが一番嫌いなんだよ‼︎ 顔が良いからって調子乗りやがってよぉ⁉︎ バカな女を侍らせて、俺みたいな人間を見下しやがる‼︎ 女ってのは顔しか見てねぇバカな生き物なんだよ‼︎」


 九十九の動かない表情筋が、未知の思想を前にピクピクとひくつく。


「……あん時もそうだっ。俺を上から見下して、わざと見逃しやがって‼︎ 知ってんだぞ! あの後女ばっか助けてハーレム作ってたの‼︎ クソがっ、あいつらもあいつらでバカだから気づかねぇしよ⁉︎ どうせ連れ帰って自分の女にしたんだろ⁉︎ TERRARIUMをマッチングアプリとでも思ってんのかこのヤリチン野郎がっ⁉︎」


 唾を飛ばして怒鳴る太めの男。九十九がそんな彼に対して感じたのは、嘲笑でも、蔑みでもない。

 ……え、こっわぁ。ただそれだけであった。


「ぶひひっ、知ってんだぜ? お前の異能、口に出して呼ばないと召喚できないんだろ? ずっと見てたんだよぉ! いつかぶっ殺してやろうと思ってたからよぉ!」


 ……なぜその時間で、ポイントを集めようと思わなかったのだろうか? 太めの男が、サブマシンガンで九十九の右目を指す。


「お前みてぇな顔だけの人間には、できるだけ苦しんでもらう。まずはそうだな。自分で両目を抉れ! ぶひゃひゃッ! 安心しろよ! あの二人は俺が貰ってやるからよぉ‼︎」


 太めの男の指示通り、九十九の両手がゆっくりと持ち上がる。目に向かい、近づき、近づき、目玉に指が触れようとした瞬間。


「ぶひゃひゃっ、ぶひゃっ、ぶ……へ?」


 現れたアイギスが触腕を使い、九十九の腕をゆっくりと下ろした。

 ……ありがと。次は僕を殴ってみてくれ。


「(プルプル!)」


 良いから、必要なことなのんッ⁉︎ ぐぅ……だ、大丈夫。解除されないなら、じゃあ次はあっちをお願い。


「ヒッ⁉︎ 死ね――ッぶぎゃびげギョバギャグべゲェ⁉︎」


 弾丸を防いだアイギスが、太めの男の足を絡め取りメチャクチャに振り回す。天井、床、壁、祭壇を跳ね回る彼を見ながら、九十九は動くようになった体に安堵した。


「ストップ」


 触腕が急停止し、吹っ飛んだ太めの男が「ブゲェ⁉︎」と壁に激突して血を吐いた。九十九は四肢があらぬ方向に曲がっている彼に近づき、しゃがんで目線を合わせる。


「僕がいつも彼女達の名前を呼んでいるのは、召喚には呼名が必要だと勘違いしてくれるかもしれないから。その実用性を、君で証明できた。ありがとう」


「……ぁ、だぅ、げぇ」


「それとアドバイスだけど、たぶん君が嫌われているのって、顔じゃなくて性格のせいだよ。女性を見下している人間に、女性が惹かれるわけないでしょ」


「ぁ……ぁあ……ああぁ」


「それじゃあ、失礼」


 九十九は太めの男の右目を抉り、祭壇に捧げる。途端、祭壇周囲に刻まれていた幾何学的な模様が、まるで魔法陣のように紫色の光を放った。


「おぉ〜ぅお⁉︎」


 厨二心をくすぐられていると、いきなり内臓が浮遊する感覚に襲われる。まるで上下左右に動く高速エレベーターに乗っているみたいだ。流石イベント、お金がかかっている。


 数秒後、光と一緒に振動も収まり、壁が変形し扉が二つ現れた。白と黒の扉だ。

 ……九十九はふと疑問に思い、気絶している太めの男の首を確認する。嵌っているのは、白いチョーカー。僕のは黒い。扉の色も白と黒。……これは、確認する必要があるな。


 九十九は太めの男から装備を剥ぎ取りパンツ一枚にした後、男が持っていた手榴弾四つを懐に入れ、両手両足を男の持っていたロープで縛った。


「……アイギス、開けてくれ」


 太めの男を引きずりながら黒い扉を潜り、短い通路を抜けた瞬間、数発の火球がアイギスに着弾。予想通り、待ち構えられていた。

 このゲームは早くクリアすればするほど、同じ部屋に来る人間に優位なポジションを取れる。火球をくらい続けてジュウジュウと溶け始めたアイギスを見て、九十九は慌てて口を開いた。


「落ち着いてください‼︎ たぶん味方です‼︎ 僕!」


「は? 何言ってんのよ? って何よその男⁉︎ 何やってんのあんた⁉︎」


 祭壇の裏から顔を出した女に、九十九は太めの男を引きずりながら近づく。


「っ、止まりなさい! 味方ってどういうこと?」


「チョーカーの色、何色ですか?」


「は? 黒だけど」


 ビンゴだ。


「たぶんこれ、個人戦に見せかけたチーム戦です。僕達は最初から白チームと黒チームに分かれていて、扉の色も当たるチームの色に対応しています。あなたも黒い扉を潜りましたよね?」


「え、ええ」


「だから黒チームの僕と当たった。このゲーム、気づかなければ加速度的に味方が負傷していきます。残った総数で勝敗を決めるのか分かりませんが、一度同色の部屋に入ったら、強制的に仲間割れです。エゲツないですよ、このゲーム」


「……嘘でしょ。……いや、違うわ。今回のジャンルには【Combat】が入ってる。数勝負じゃない、たぶん最後は総力戦よ!」


「余計マズいですね」


「でもどうすんのよ⁉︎ 私達同じ部屋に入っちゃったわよ⁉︎ てかあんた、何でそこまで分かっててこっち来たのよ⁉︎」


「情報を共有するためですよ。それで、この部屋の指定は何ですか?」


「ひ、《左腕》よ。っどうすんのよ、嫌よわた、し……」


 しかし俯いた女の目が、九十九の引きずってきた《《それ》》を見て見開かれた。


「……っ、まさかあんた⁉︎」


「はい。扉を二人で潜ってはいけない、なんてルールはありませんでしたから。一人でも多くの生存者を出すために、彼には頑張ってもらいます」


 自分の末路を悟った太めの男が、目隠しと猿轡を外そうと絶叫する。芋虫のようにもがくそれを見て、女は乾いた笑いを浮かべた。


「ハっ、イカれてるよあんた」


「合理的だと言ってください。それにその人、女性を物扱いするような人なので、あまり気にしなくて良いと思いますよ」


「ああそう、なら良いわね」


「ぶぅふぅうう⁉︎」と悲鳴を上げる太めの男を二人で祭壇に上げ、九十九は拝借したサブマシンガンで左腕を連射する。……昔お爺ちゃんと一緒に、鹿を解体したのを思い出す。骨ってかなり硬いから、ナイフじゃ切れないんだよな。


「ふぅ、火で止血お願いします。死んだら使えなくなる可能性もあるので。あと彼の目は見ないでくださいね、七秒見つめたら催眠にかかってしまいますから」


「あいよ。キモい異能ね」


 魔法陣の中で浮遊感を感じながら、九十九は現状の最悪を想定する。頭に浮かぶのは勿論、黒月の顔。……もし敵だったら、腕の一本くらいで勘弁してもらいたい。


 扉が現れ、九十九は一旦黒の扉を開ける。


「……ちょっと確かめたいことがあるので、一緒に行きましょう」


 女と一緒に太めの男を担ぎ、九十九は境界線を跨いだ。瞬間、アラートが鳴る。


「なるほど、二人は良くても三人はアウトか。……気をつけてくださいね。二対一の構図になる可能性もあるので」


「え、ええ」


「僕は白に行くので、黒に行って情報を広めてください。では」


「分かった。ありがとね」


 気絶した太めの男を引きずっていく女に手を振り、九十九は白い扉を潜った。


 三部屋目・白・《右足》――銃弾をアイギスで防ぎつつ、片手片足を撃ち抜き制圧。


 四部屋目・黒・《左目》――前の部屋で生け取りにした男と、情報を提供。


 五部屋目・白・《舌》 ――飛び道具が効かず、ガルムとの連携で制圧。


 六部屋目・黒・《指5本》――黒い扉を潜った九十九は、通路を抜けた瞬間いきなり襲われて驚く。


 出口の真横で待ち伏せていた男が、アイギスにナイフを防がれると同時に飛び退いた。


「あ?」「えっ?」


 しかし九十九と男、お互いの姿を見た瞬間、両者同時に驚いた。懐かしい顔に、九十九は笑顔になる。顔と言っても、人工の植物に隠されているせいで、顔らしい顔は見えないのだが。


「おお! 小僧!」


「篝さん、お久しぶりです」


 ギリースーツに身を包んだ彼に、ペコリと頭を下げる。この人がこっちのチームにいるのは、相当心強いぞ。


 篝はナイフをしまい、キャリーケースを開く。


「まさかイベントにまで参加してくるとはな。驚いた」


「僕もです。篝さんも参加していたんですね?」


「お前との死合で火がついてな、久しぶりに承諾したんだ。ってことでやろうか」


 問答無用で弓を放とうとする篝に、九十九は慌てて両手を挙げる。


「待って待って⁉︎ 気づいていないんですか⁉︎」


「あ?」


 九十九は自分の推測を話し、篝を説得する。「ああ、確かに」と納得した彼は、不承不承と弓をしまった。


「んだよ、せっかくリベンジできると思ったのによ」


「勘弁してください。……てか篝さん、味方殺していないですよね?」


「……」


「……」


「おし、次行こうぜ?」


 最悪だぁ。絶対殺ってるじゃんこの人。


「まぁ固いこと言うなよ」と九十九が引きずってきた女の指を切りながら、篝はケラケラと笑う。


「次は白だろ? せっかく会ったんだ、一緒に行こうぜ?」


「いや、扉には二人までしか」


 言い終わる前に、篝が女の喉を掻っ切った。


「これで二人だ」


 篝に引きずられるようにして、九十九は白の扉を潜った。


 七部屋目・白・《腎臓》――部屋では、こちらと同じく二人組の男が待っていた。スカジャンを着た男が、首を鳴らして立ち上がる。


「……九十九 依絆だな?」


 いきなり名前を呼ばれて驚く九十九を、篝が肘で小突く。


「良かったな。お前有名人らしいぞ?」


「絶対そんな話じゃないでしょ。……何で知っているんですか?」


「答える義理はねぇ。悪いが貰うぜ、腎臓」


 ニヤリと笑う篝の横で、九十九もアイギスを構えた。その後圧勝。腎臓がどこか分からず手こずっていたら、一人は出血多量で死んでしまった。もう一人になぜ自分を知っていたのか聞いても、挙句舌を噛んで自害してしまった。


「根性のねぇ。つまらんつまらん」


 ……。真剣な顔で考える九十九を、篝が白の扉へと引きずっていった。


 八部屋目・白・《肺》――圧勝。

 九部屋目・白・《肋骨6本》――勝利。


 肩で息をする九十九は、祭壇に寄りかかり呼吸を整える。

 ……なぜか後半の全員が、僕の名前を知っていた。というか、僕を狙っているようにすら見えた。九十九はガルムを撫でながら、深く息を吐く。……確定だな、これは。


「いつまで続くんですかね? 流石に疲れてきました」


「軟弱な。……だが見ろ、終わりらしいぞ?」


 現れた扉の色は、黒と金のマーブル模様。……どうやら、次が最後らしい。


 立ち上がった九十九が、意を決して扉を開くと、


「え?」「ほぉ、こりゃ良い」


 ……そこは今までとは違い、温かい光が降る談話室だった。黒と金を基調にしたヨーロッパ風の装飾。高い天井にはシャンデリアが輝き、軽食や飲み物まで用意されていた。中では既に二十人ほどのプレイヤーが休んでいる。チョーカーの色は全て黒。やっぱり、これはチームカラーだった。


『これより、三十分間の休憩を取ります。最終ゲームに向けて、英気を養ってください』


 アナウンスを耳に、慣れた足取りで入室する篝に続く。革張りのソファに座り、談笑している者。黒いパーテーションの裏で、傷の手当てをしている者。

 辺りを頻りに見回していた九十九は、


「あっ」


 ソファに座り小さく手を振る黒月を見つけ、安堵を胸に笑顔で駆け寄った。


 シャワーを浴び終えた九十九は、バスタオルで頭を拭きながらソファに座った。


「生き残ったのは十八人。五体満足なのは十五人ね」


「ありがと。……結構残ったね、上々だ」


 黒月から水を受け取った九十九は、周囲の仲間達を見回しながら頷く。

 黒月は拭きの甘い彼の髪を再度バスタオルでワシャワシャし、愛おしそうに撫でた。


「あなたでしょう? 敵を使い回すの提案したの」


「味方も救えて敵も減らせる。良い案だと思ったんだけどね」


「……あなたのそういうとこ、嫌いじゃないわよ」


「光栄なことで」


 悪い笑みを浮かべる黒月に、九十九も笑みを返す。黒月は丁寧に包装を剥がし、エナジーバーを九十九の口に押し込んだ。


「敵チーム、たぶん固めてきているわね。統率力は白の方が上よ」


「うんむ(モグモグ……ごくんっ)。運営も粋なことするよね」


「あなたを使って邪魔者を消したいだけでしょ」


「ハハっ、まぁ僕が提案したことだから」


 パサついた口を水で潤していると、前から茂みが歩いてくる。


「おうおう、恋人同士で参加たぁ、肝が座ってんなぁ?」


「篝さん、休む時くらい脱いだらどうです? それ」


 篝という名前に反応した黒月が、「……こいつが」と語気を強める。


「おっと嬢ちゃん、そんな怖い顔しないでくれ。小僧を取る気はないからよ?」


「次依絆くんを傷つけてみなさい。その中身引きずり出して四肢を()いであげるから」


 ポカンと立ち尽くした篝が、九十九に顔を寄せる。


「……小僧、お前こういうのがタイプなのか?(ボソッ)」


「ははは」


「女は選べよ〜」と去っていく篝に、黒月が舌打ちする。二人ともバトルジャンキーなところは似ているからな、仲良くなってくれたようで僕も嬉しい。

 ……さて。残り五分。立ち上がった九十九の元に、しかしまたしても来客あり。


「お前、九十九か?」


 松葉杖をついた男には、右足と左目がなかった。「はい」と答えた九十九に、男は頷く。


宍戸シシド兄弟からの伝言だ。お前を必ず殺すらしい」


 いきなり知らない人から知らない伝言を貰い、九十九は「はあ」と間抜けな返事をする。


「何あなた? 殺すわよ?」


「っ待て待て! 俺だって意味分からねぇんだ。いきなり拷問されて見逃されてよ、この通り片目と片足と臓器何個か持ってかれてんだよ」


「よく生きていますね」


「幸い回復力は高い方なんでな。てかあいつらに名指しされるとか、何したんだお前?」


「その前に宍戸兄弟って誰ですか?」


「し、知らねぇのか? 今勢いづいてるランカーだぞ? 残虐で有名な兄弟だよ」


「異能は?」


「弟の方はゴリゴリのパワータイプ。兄貴の方は不明。何かいきなり消えるらしい」


「ありがとうございます。その体では戦えないでしょうし、隠れていてください」


「お、おう、気をつけろよ。……何だよ、良い奴じゃねぇか」


 現れた扉へと歩き出した二人に続き、仲間達も気合を入れて立ち上がる。


「その兄弟は私が殺すとして、あなたの方はどうする? 苦しませて殺す?」


「いや、時間をかけるつもりはないよ。異能に気をつけながら、さっさと終わらせよう」


 独りでに開いた扉へと、九十九は一歩を踏み出す。


「……さぁ、勝ちに行こうか」



 最終ゲーム――開始。


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