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DEATH TERRARIUM  作者: 美味いもん食いてぇ


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第38話


          666


 6:00――起床――


 東京の空は、まだぼんやりと灰色に沈んでいる。男は静かに目を覚ますと、アラームが鳴る前に目覚まし時計を止めた。男はあくびをしながら体を起こし、カーテンを開ける。差し込む朝日が、整えられた本棚と観葉植物を柔らかく照らした。


 軽くストレッチをしてから、キッチンでお湯を沸かし、手際良くハンドドリップでコーヒーを淹れる。朝食はトーストとゆで卵、少量のサラダ。


「おはよう。ポチ、コロ」


 飼っている犬と猫にも朝食をあげ、男はシャワーに向かった。




 8:00――出発――


 黒のジャケットを羽織り、密閉型の二重ドアを開けて家を出る。今日は川越の少年院で、作文指導の仕事がある。電車に揺られながら、本のページを捲る。『Morality is the herd-instinct in the individual』そんな一節に目を留め、男は僅かに微笑んだ。




 9:00〜12:00――少年院での授業――


 今日のテーマは、未来への手紙。生徒達は最初こそぶっきらぼうだったが、男の柔らかく落ち着いた語り口と、一人一人に向けられる誠実な眼差しに、徐々に心を開いていく。


「誰かに届ける『ありがとう』や『ごめんね』というのは、書くことで整理されるものですよ」


 男は決して焦らせず、急かさず、生徒たちのペースに寄り添った。





 12:30――昼食――


 駅近くのカレー屋で、激辛カレーとラッシーのセットを注文。

 お気に入りの静かな店で、今日の授業の様子を小さなノートに記す。

 ・Sくん、筆圧が弱かったが最後まで書ききった。

 ・Tくん、途中から集中力が上がってきた。

 ・全体的に、先週よりも落ち着いていていた。

 男なりの、信頼の記録である。





 13:30〜16:00――名門私立高校での授業――


 午後は、高校で現代文の講義。四十名ほどの生徒の視線を受け、授業を始める。


「今日は夏目漱石の『こころ』を読んでいきましょう」


 朗読から始まる授業は静かで落ち着いていて、生徒達も自然とその空気に引き込まれていった。授業が終わった後、生徒の一人から声をかけられる。


「先生って、何で先生になったの?」


「そうだね。……人が好きだからかな?」


「わっ、めっちゃ解釈一致! 好きそ〜」


 終会後。教室に残っていた生徒達に手を引かれ、雑談を交えた進路相談が始まる。


「先生、心理学部って私に向いてるかな?」


「向き不向きより、知りたいっていう気持ちが大事だよ」


「はいはい! 彼女はいますか?」


「いないんだよね〜これが」


「じゃあ私と付き合お!」「私も立候補する!」


「バカバカっ、先生人生終わっちゃうから!」


 教えるというより、一緒に考える。その姿勢が、生徒達に安心感を与えるのだ。





 17:30――一度帰宅――


 ジャケットを脱ぎ、洗濯物を取り込んで、軽く部屋を整える。ペットのトイレを掃除して、ペットが戯れている様子を眺めながら、一日の復習と翌日の準備を済ませてしまう。





 20:00〜21:00――夕食――


 冷蔵庫にある野菜と肉で、さっと夕食を作る。お気に入りの録画映像を鑑賞しながら、夕食に舌鼓を打った。





 21:00〜24:00――自習課題の添削・生徒対応――


 自室のデスクで、午後の授業で集めた小論文を読みながら赤ペンを走らせる。『よく考えたね』『この表現は素晴らしい!』文字だけのやりとりでも、生徒に伝わるようにと、温かい言葉を選んでいく。男は「……ふぅ」と息を吐き、少しだけ二重窓を開けた。生暖かい風がカーテンを揺らし、蛙や虫の輪唱が響いてくる。


「疲れたぁ。…………よしっ」


 席を立った春國は、財布片手に車を走らせ、歌舞伎町へと繰り出した。


          999



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