コーヒーをブレイクする
「それで、何の用があって街に?」
ひとまず近くのカフェで腰を落ち着けた三人。こういう洒落た飲食店に入ることなんて滅多になかったので緊張しているが、今の身分でそれは不自然なので頑張って抑えている。
シャルさんの身体だからなのか単に質がいいのか、コーヒーが異様に美味しい。生前はカフェインの摂取目的でしか飲んでいなかったので新鮮な感覚だ。懐かしいな、安い分やたら不味いインスタントコーヒー。
「簡潔に言えば、家出ですわね」
「はい!?」
「冗談ですわ………単独行動に慣れるために、勝手に抜け出してとりあえずあなたに会いに来ただけです」
「どちらにせよひどいですね。未婚の令嬢が………」
耳が痛い話だ。私が勝手なことをしなければ済む話ではあるが、そうも言っていられない。危機感が足りないという話ならそうかもしれないが………。
「まったく……本当に身辺には気を付けてくださいよね?記憶も未だ戻らないのでしょう」
「善処しますわ。あ、マカロン食べます?」
「オフとはいえ恐れ多いですよ。遠慮しておきます」
美味しいのに。人に施す余裕があるのはいいことだなーと感じていたが、こういうハードルもあるのか。でも確かに、もし受け取る側だったら私だって遠慮する。
「責任ある立場でそのような真似をなさるものではありませんよ。もっとも、あなたのことですからそれ相応の理由があるのでしょうな」
「な、なんのことでしょう?」
シャルさんに対する信頼が高いのはありがたいが、それがきっかけで詮索されても困る。無関係のシャルさんの友人まで巻き込みたくないし。
「しかしご実家に帰ってこられるのも珍しい。何かありましたか?」
「えっと…………先日熱病に罹って以来いろいろとありまして。なにかと両親にも心配をかけているようなので顔を出そうと」
「よき心がけです。少し見ないうちに随分と親孝行な方になっていたようで。無論これまではそうでなかったと言いたいわけではありませんが」
親孝行…………ねぇ。
親不孝な娘としては、シャルさんに対する評価だということはわかっていても気まずい。
たった1人でどれだけ愛情を注いでくれたか知っていた筈なのにこんな………………
「…………?」
自責思考に陥りそうだった頭が、急に身体に伝わってきた振動によって現実に引き戻される。
これって……
「どうかなさったんですか?シャルロット嬢」
「あっ、いやえっと…………少しお花を摘んでこようかと。ここで待っていてくださいますか?」
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「あっ、戻られましたか」
「お待たせしましたわお二方。さて、この辺りでわたくしは失礼いたします……あ、プラシドさんはついてきてくださいます?またナンパ師に絡まれては困るので」
「いいですよ。それでは、神父とはここで」
そう言って自分達の分の会計を済ませる。この世界での物価の高い安いはわからないのだが、プラシドさんが若干苦い顔をしていたので恐らく高い部類なのだろう。貧乏舌の私には少し勿体ない。
その後はグランエル神父を見送り、2人きりとなった。
「で、この後のご予定は?」
「流石にそろそろ帰らなければバレかねませんので、マリーへのお土産だけ買って解散しようと思いますわ」
「またショッピングに付き合うんですね僕」
「それもあるのですが、もう1つお願いしたいことがありまして」
「…………?」




