Sideルシエラ 提出期限のない宿題もそれはそれで大変
「それで?結局宿題は提出できそうなのかなこの教唆犯め」
「まあ、師匠の話についていけるぐらいの予備知識は蓄えてこれましたかね」
「その過去最低の呼び名はさらっと流しちゃうんだ」
紆余曲折の果て、今日こそはアンジュさんより情報を引き出したいと再び研究室を訪れた私たち。
教唆犯呼ばわりはテオドールに窃盗を頼んだ時のことでしょうが、何故ナルシスト呼ばわりには文句を言ってこちらには異議を申し立てないのか。自覚がおありなんでしょうか?
「……先日、物憂げな顔で歩くヴィルジニーを見かけましてね」
本題に入りましたね。昨日通りがかったヴィルジニーさんを問い詰めて発覚したいろいろな事実。出せるカードは少ないですが……
「あの子が陰気臭いのなんていつものことだよ」
「この場にいないからってひどいこと言いますね!?」
「昨日話してみた限りでは正しい見解だと思うけどね。しかし師匠のその反応、やはり事実なんですね?ヴィルジニーの検診を定期的に行っているという話は」
何らかの怪しげな行動をとっていた疑惑のある3名。その中でも彼女はあのレオンの身内。私たち目線では何もかもが怪しい存在ですが、その彼女は事件よりも前からアンジュさんにお世話になっていたと話していました。
そう、王立魔法学研究所の才媛としてのアンジュさんに。
「あの子はねえ……生まれつき魔法がからっきしの実技落第生で。この国で貴族って時点で血統は申し分ないはずなのにこの始末。君らも知っているんじゃないかな?お陰で学園じゃなかなか生きづらそうだけど」
彼女の言う通り、ヴィルジニーさんは私たちの学年ではそれなりに有名です。座学の成績は優秀なのに実技は最低。授業に出席した形跡すらないとの噂もあります。
おおよそ予想はつく真相ですが、勝手に暴露されるヴィルジニーさんが不憫ですね……。
「っていうわけで、うちで彼女の体質を研究して、先天性魔法不全の謎を解こうとしているわけだね。ちなみに今のところ孤軍奮闘状態だしなんにもわからない。予算下りないんだもん。上は価値観が旧世代の人間だし。なーにが呪いの子だよ馬鹿じゃないの」
「愚痴は聞き流すとして、その検診の縁で、先生から聴取を受けたことを師匠に相談したと彼女は言っていましたよ」
「セビの字もあんまり踏み込んだ質問はできなかったみたいだからなー。そりゃ証人が幽霊の坊やじゃあ、無理強いできるほどの説得力もないし仕方ないんだけど。それもあってか、本当になにがなんだかわからなかったみたいだよ。彼女」
「酷いよね。せっかく協力してあげたのに説得力ないとか。あのおじさんめ」
頭上でこちらも愚痴るテオドール。彼がどうこうではなく、単純に幽霊が存在を他人にそう簡単に証明できるものではないから説得力に欠けるという話だと思います。
物静かな彼女に高圧的な態度で何かを問うのは正直言って憚られる、というのもあると思いますが。
「ここんとこ記憶が曖昧だって話もしてたし、不憫な子だよまったく」
「……心当たりがなにもないと答えたその彼女に、あなたは信じると話したそうですね?」
疑惑の渦中の人間の”心当たりがない”なんて鵜呑みにできるはずがありません。ですがジャック様に言わせれば、いい加減な方ではあっても悪質な嘘はつかないと。ならその信じるという発言には根拠がある……とのことです。であれば。
「そもそもヴィルジニーへ事情を聞いたこと自体シャルロットの事件が関係しているという話だからね。師匠がそんなに詳細な情報を持っていると分かった時点で、もう宿題は解けたと思いますが。話していただけますか?師匠が気づいたこと」
「……………………アホ弟子にされるがままっていうのも癪なんだけどな。仕方がないか」




