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元地縛霊が逝く異世界脱出記~入れ替わり令嬢蜂須賀渚~  作者: 茄伊かいん


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ほっと一息つけると考えていた時期もあった

「あなた方がどう主張なさろうが、そのような不確かな情報でここから先へ進ませるわけにはいきませぬな!」

「事態は急を要するんだ!それに、場合によってはあんたらの関与も疑うことになるぞ!」

「信徒を守護する我らがそのような悪事に荷担するわけなかろう!疑う行為そのものが大いなる間違「ちょっと待ったぁぁぁぁあ!」

「「!?」」



 一触即発状態の集団を遮るようにして飛び降りる。


 片手を付けて着地し、精一杯カッコつけながら2つの集団に対し向き合う。


「…………お、お嬢様!ご無事だったのですかー!?」

「マリー!来ていたの!」


 覚えのある方に顔を向けると、そこには途中までプラシドさんと行動していたマリーが。


 泣きそうな笑顔の彼女と抱擁を交わし、ひとまず落ち着かせる。正直かなり心配をかけてしまっている事実から目を背けていた。途中から自分の意思で敵陣へ向かったのを思うと罪悪感が心に来る。


 いや、そんな懺悔をしている場合ではない。



「皆様、そちらのシャルロット・ド・フランベルジュ嬢が我らの教会に捕らえられていたのは事実なのです。そして、まだその首魁が上に潜んでいる」

「グランエル神父……何故あなたが一緒に」

「状況が落ち着き次第そちらについては説明させていただきます。それより、潔白を証明するためにも彼らと協力しなければ!」

「現状プラシドさんが単騎で抑えに行っていますわ。すぐにでも援軍が必要です!」


 神父と共に、なるべく格好よく、センセーショナルに呼び掛ける。


 生前は大根役者だった私も、この身体に入ってから演技力が格段に上がったような気がする。金○一の犯人的な火事場の馬鹿力だろうか。


「わかりました!よし、我々は教会内に突入する!数名は残り彼女らの警護を!……今更止めないよな?」

「…………グランエル神父の証言もあっては仕方あるまい」








■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■







「…………説得へのご協力ありがとうございましたわ」

「いえいえ、我々にとっても一大事ですからな。マリー嬢もお久しぶりで」


 憲兵達を見送り、警護されながら久々の平穏を享受している私達。プラシドさんが戦っている最中ではあるが、私としてはようやく肩の力を抜ける瞬間だ。


 マリーと自然に会話している神父には一瞬驚いたが、シャルさんの友人であり師匠でもある彼とフランベルジュ家に仕える彼女に接点がないはずないか。



 しかし、教会の立ち位置がいまいちわからなくなってきた。


 あんな私兵がいる中でこの場を誘拐の拠点にできるならジュダイナ教自体グルなのだと踏んでいたが、そうするとグランエル神父の行動と結びつかない。


 さっき揉めていた連中も最終的には折れていたし。


「神父、賊が何故入り込めたか、心当たりはありますか?」

「いえ……そもそも私がこの場にいるのは偶然の産物なもので。諸事情あって私含めた複数人が王都の方に呼ばれていたのですが、憲兵の方が詰めていて街から出られず」

「事件が起きたからですわね……これができるなら、何故一度目の誘拐を防げなかったのか」


 今回はいろいろとうまくいっているというのに、かえって過去に対する苛立ちが湧いてくる。確か身内相手に検査の手抜いたんだっけ……


 自分で言うのもなんだが、私が根に持つって相当だ。何度だって反省してほしい。


「しかし流石シャルロット嬢といいますか、誘拐されたばかりというのにその気丈な振る舞い。昔に比べ感情豊かになられても冷静さは増しておりますね」

「その通りですねー。私は無事を確認できてようやく落ち着いてきたところですー……本当にお怪我とかないのですよねー?」

「え、ええ大丈夫よ。汚れはしたけれど怪我はないわ。…………多分」


 少し前まで血塗れの幽霊をやっていた関係で、大抵のことには動じなくなっているし純粋な痛覚には鈍感だ。中身が違うのもそうだが、こういうところでも彼らと私にギャップを感じる。


 自分の感覚はあてにならないと手足を見回すが、ひとまず大丈夫そうだ。


「後は彼らの無事を祈るばかりですねー。お嬢様の安寧が懸かっておりますしー」

「…………そうね」


 ゆるふわな口調でわかりづらいが、不安が顔に出ているマリー。


 安心させようと手を添えるが、よく考えたら本来逆であるべきだよな。場慣れしているのも考えものだ──────







 

 そう、自分の安全を信じきっていた最中に、何かの割れる音が周囲に鳴り響く。


「ひぃっ!?」

「な、なんです!?」


 上空から降り注いだのはガラス。それも色とりどりの、きっと元はステンドグラスであったのだろう物が、落下しひび割れ砂のように飛び散っていった。


 全員が入り口から引いた位置にいたお陰で身体にかかったりはしていないが、あまりに危ない。急な事態に警護の人間もてんやわんやで、一旦彼らに促され教会からさらに遠ざかろうとする。


 それに応じようとした私に、話しかける声がした。


「シャルロット!上!プラシドがヤバい!!」

「ふぇっ!?」


 

 唐突な呼び掛けに素っ頓狂な声で反応し、顔を向けると、そこにいたのはプラシドさんに連れていかれた筈のテオドール。


「え、何故テオドールがここに……」

「僕はいいから上!プラシド死んじゃうよ!?」

「なんですって!?」

 

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