絶叫系は得意……なつもりだったんすけど
「ほらっ!きりきり歩きなさい!」
「んーっ!(手を拘束されてるんじゃ足元覚束なくなって当然じゃないか!)」
「何を言っているかさっぱりですわね……これから下に降りますが、舌噛まないようにだけ気を付けなさいね」
「んーっ!?(ちょっとどうする気!?)」
一味の女の口を塞ぎ、彼女を連れ下を目指す。テオドールの情報通りなら、ここから降りる道には敵はいない…………筈。
足手まといを連れて、ちまちまと階段を降りる手間も惜しい。ここはいっそ……!
「ハチスカ☆スカイウォーク降下版っ!」
「んーっ!?」
連れ合いごと身を投げ出し、いつもの防御壁でそれを拾い、一気に下の階へと進む。
私達2人の体重を支えつつ、それでいて一刻も早く援軍の元へ辿り着けるよう早く。重力に逆らいながら重力に従うままに魔法をコントロールする。
「んーっ!んーっ!」
「何を喚いているか知りませんが、犯罪者に身を落としたわりに根性がありませんわね!」
と言いつつ、私も少しばかり恐怖している。高所……地面が足から遥か遠くにある感覚には慣れたつもりだったのだが、生身と幽霊の違いか。あるいは、シャルさんの身体を傷物にすまいとの思いからか。
プラシドさんは私に、ここでもう降りるよう言った。それは比喩でもなんでもなく────
「とりあえずシャルロット嬢、あなたにはここで降りていただきます」
「………………へ?」
"先生"にどう立ち向かうかの話の中でそう発言したプラシドさん。
思い返せば、出会った頃から私がこうして前線に出ることには否定的だった。それにしては折れやすいと感じなくはないが……
とはいえ敵陣真っ只中でそんな今更なことを言われるのかと唖然としていると、それに気付いたプラシドさんは慌てて弁解した。
「ああ、いえ、文字通りの意味ですよ。シャルロット嬢にそこの女を連れて、地上まで降りていただきたいのです」
「それはどういう……?」
「あなたの存在があれば、教会側も憲兵を突っぱねてばかりではいられなくなります。ジャンならそうそう引き下がりはしないでしょうし、まだ下に皆いる筈です」
「…………!」
「そこにあなたが現れれば強引な突入もできる筈」
「それは相当な賭けなのでは……」
「あなたがそれを言いますか。誰の発案でこんなことになっていると思っているのです?」
そう、作戦内容と共に耳が痛いことを言われてしまった。近頃はプラシドさんの発言も、敬語は崩さないが気安くなっている気がする。例えるなら、自称女神に対する私のような。
「ということは、プラシドさんは"先生"の足止めですか」
「はい。全員でジャン達……憲兵に合流することも考えましたが、ここはアウェーです。奴らにどんな方法で逃げられるかわかったものではありません」
「どうせそこの女は知らないでしょうしね……」
「悪かったねぇ下っ端で」
「なのでテオドールを借ります。彼を斥候に脅威を最低限に抑えます」
「さらっと勝手に決めるね。皆こんな扱いなの?ルシエラといい」
とまあ、途中気になる発言も飛び出しつつ、立ち回りはこのように決まった。
ルシエラがどんな行動をしていたか興味は尽きないが……今はそんなことを考えている場合ではないか。
今ここが何階なのかはわからないし、確認する余裕もない。さっき拘束を破った時ほどではないが、この魔法もなかなか頭を酷使する。今もまた、方向転換のために意識を集中────
「っ!?」
「なっ、なんだ!?」
したところで、目の前から人の声が。
避けようとして咄嗟に止まろうとしたところで、私と一味の女は防御壁から投げ出される。方向転換しようとしたタイミングだったからか私の身体は大きくひっくり返り、目線の先に上の階が見えるように。
…………その、背を地面に向ける感覚が。
なぜだか私の脳を、急激に侵食していった……




