いい女は振り返らないし敵に容赦しない
「テオドール、一つ頼まれてくれます?」
「え、なになに」
「上の階に先回りして、どこかしら隠れられそうな場所を見つけてくるのです」
「僕の仕事多くない?まあ別にいいけど」
悪態を付きながらも素直に応じ、飛び立っていくテオドール。プラシドさんの無言の頷きも確認し、あとは上手くいくか祈るだけ。
コミュニケーションを取れるのが味方だけと分かっているテオドールは重宝する。私も昔であればこういう時大活躍なのだが、ないものねだりしてもどうしようもない。
一味の女から情報を引き出そうとしていたプラシドさんも機会が来るまで黙り、歩みを進め階段を踏み込んでいく。そして登り切ろうというところで、
「ただいまー。見てきたよ」
「首尾は?」
「あっちの一番奥の暖炉のある部屋。あそこ無人だよ。逆にこっから上の階は誰かいるね。よくわかんない白服だったけど」
よし、道は見えた!
「テオドール、プラシドさんに合図を」
「プラシド聞こえてるよね?さっき言った部屋に突撃!いっちゃえー!」
テオドールのその言葉を聞くと同時に走り出すプラシドさん。突然の全速力に体を大きく揺らしつつ、件の部屋へ駆けていく。
「あっちょっどこ行くんだい!?」
困惑しながら追いかけてくる女をよそに部屋に突入する。彼女も入ってきたところでプラシドさんが部屋の扉を閉め前に陣取る。そして私は猿轡を放り出し……!
「プラシドさん!やーっておしまい!」
「神妙にお縄につけ賊め!」
「!?」
二人して態度を180度変え、一味の女に襲い掛かる。
さすがに先生の下っ端をやれるだけあって、プラシドさんの攻勢に彼女は抵抗する間もなかったようだ。わりと一瞬で制され、気づいたころには、さっきまで一応拘束されていた私と立場が逆転していた。
「貴族令嬢の略取…………捕縛の過程で生死を問わないケースも多い重罪だ。大声でも出すようなら命はないと思え」
「お前、仲間じゃなかったのかい!?まさか憲兵か!?いつの間に…………!」
初めて出会った時を思わせる威圧感で女を脅すプラシドさん。
確かに凄味は出せているのだが、経緯を知っていると思わず笑いがこみあげてしまう。付けていた縄を放り投げ、腹を押さえながら立ち上がる。
「何を笑っているのですかシャルロット嬢…………大体なんですか先程の台詞は」
「プラシドさんもノリノリだったではありませんか」
やーっておしまい。一度言ってみたかったのである。シャルさんの清楚な印象には合わないかもしれないが、女傑になったようで気分がいい。悪の女幹部を目指す気は毛頭ないが。
「まあいいです………………さて、言った通りお前の命はこちらが握っている。惜しいなら今のうちに心証を良くしておくんだな」
「具体的に言えば、こちらの質問に洗いざらい答えてもらう。ということですわね」
「ぐっ…………わ、わかった話す、命が惜しくて始めた仕事だけど、さすがにこうなっちゃ意味ないね………………」
首魁を攻める前に、まずはこの女から尋問していくことにしようか。




