なんちゃってスパイ作戦
「それでこの後どう動きます?脱出地点は確保してあるので強行突破しましょうか」
「でも敵が何人いるかもわかんないよねー。シャルロットが把握してるのはそいつ含め4人って話だけど、足音もっと多いよね」
気を失った追手に目を向ける。プラシドさんが制圧した後この監禁部屋もとい倉庫に連れ込み、私に使われた拘束具でそのまま縛り上げた。
連中は一度脱出した部屋に私が戻ってくるとは思っていないのか、現時点ではこちらに気付いていない。とはいえ近くに迫っていることは間違いなく、状況は好転してはいるがピンチには違いない。
「…………あの手を使うべきかなぁ」
「なにか手があるんですか?あまり気乗りしていなさそうな雰囲気ですが」
この部屋に突入された時に確認したが、連中は皆覆面姿だった。それを聞いた自称女神が、冗談なのか本気なのかわからないテンションで考えた作戦がある。
あるのだが……あの自称女神らしい無茶な内容というか。
「結構危険だと思われますが……やります?」
「これ以上の危険もそうないでしょう。何をすればいいんですか?」
「脱いでください」
「……………………え?」
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「…………おっと、やっと見つかったよ。物音がすごいから何が起きたのかと……ってお前それ、人質捕まえたのかい!?」
慎重に通路に出ると、そこにはランプを持った覆面姿の不審者がうろうろと周辺を探っていた。その中の、前にも見た女のメンバーが話しかけてくる。
「あ、ああ、ばっちりな」
「しかも既に着替えてるじゃないか。まさかお前が剥いたのかい?釘刺したじゃないかこの変態野郎」
「…………」
今プラシドさんが覆面の下で、苦虫を噛み潰したような顔をしているであろうことがなんとなく伝わってくる。
彼は今、捕らえた追手から剥ぎ取った服と覆面で犯人グループに成り済ましているのだ。
『あ、今思い付いたんですけど、連中は皆覆面付けてるんですよね?捕まえて身ぐるみ剥がせば変装して敵の本拠地まで安全に連れていってもらえるんじゃないですかねぇ?女もいたでしょう確か』
……という、本来は私がプラシドさんの役割を担う想定だったらしい自称女神のアイデアを、状況に合わせてアレンジしたのが今回の作戦。
そんな私はというと再び拘束されプラシドさんに抱えられている。目が覚めた時同様縛られてはいるが、猿轡も手足の拘束もその気になればすぐ外せるように仕組んである。
「お前それ、目隠しはどうしたんだい」
「あ、ああ、布が足りなくてな。声が出せなきゃ大丈夫だろ」
「それもそうかね。ほら、移動の準備済んでるからさっさと行くよ。先生も大仕事が控えてるって話なんだから、アタシらも急がないと報酬下げられちまうよ」
「そ、そうだな。急がねぇと」
…………さて、ここからが問題だ。隙を見て二人で脇道に入りプラシドさんが使った出入口から脱出するか、自称女神の最初のアイデアの通り敵陣まで付いていくか。
どちらの選択をしてもテオドールは付いてきてくれるから、どのみち援軍にはありつけるだろう。
ただ後者を選んだ場合の方がヘマした時の代償は大きいだろう。プラシドさんの命に関わる事態にもなりかねない。
…………とはいえ、私の使命を考えると後者を選ぶべきなのではと思ってしまう。
誘拐犯はシャルさんを拐い何をするつもりだったのか。そして何より、どうやって向こう側と繋げるのか。それを知らなければ、シャルさんに身体を返せる未来もない。
私が取るべき行動は一体なんだ?




