やり口の引き出しが少なくないすかね
『どうです蜂須賀さん。私達の見立てでは下水道管が通っていると思われるのですが』
監禁部屋を脱出し狭い通路を抜けた先には、確かに巨大な管が伸びていた。扉を開けた辺りから若干臭うと思ったが、これが原因か。
『手口がレオンの時と類似しますわね。施錠はされていますが日頃から警備されているわけではありませんし、彼の入れ知恵だとしたら納得ですわ』
『私はあの時下水道側までは行かなかったんすけど、なんとなく雰囲気は似てるっすね』
『私もいろいろ調べましたけど、アルメリアの公衆衛生はその下水道含めかなりの高水準なんですよねぇ。文明レベルが同程度だった頃の西洋はもう会話にもしづらいヤバさだったんですが』
暗がりをガラケーで照らしつつ慎重に周辺を見ていく。ここから見た限りではしばらく一直線に続いているみたいだが、果たしてどちらに何があるのやら。
『地下下水道の存在はわかっていても内部については私じゃ情報が手に入らなくて、どうしようもないので手動でマッピングを。不思議のダンジョンやってる気分ですよ』
『聞いたことしかない単語なんで例えに使われても反応に困るっすよ』
ゲームタイトルでたまに見た気はするが、意味までは知らない。
とりあえず勘で歩みを進めているが、明かりが見えたら即隠れなければならないと思うと心臓に悪い。
『今東に進んでいるみたいで…………あ、ちょっと待ってくださいね。はいこちら捜査一課……あ、弟子一号、首尾はどうです?』
なんか他の人と電話し始めた。あんなに脅してくるのだったら、向こう側オンリーでの会話でも回線を繋ぎ続けるような真似はよしてほしい。
弟子一号さんというとテオドールとの連絡役になってもらっている自称女神の後輩の方だったか。自称女神同様、成仏できない魂のケアを担っているという。
自称女神はあれで意外と面倒が良さそうに思うが、どうなんだろうか?
『余計なお世話ですよ蜂須賀さん。それより報告が上がりましたよ。プラシド君一行も無事地下下水道の存在に辿り着けたようです。なんかメイドさんと一緒みたいだったらしいですが』
『もしかしてそれマリーが付いてきてるんすか?』
『そうかもしれませんねぇ。次の段取りですが、彼ら東側から入ってくるようです。合流できそうな地点でまた連絡するので、あなたもそちらへ進んでください!』
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「…………これでよし、と」
下水道への出入口で遭遇した賊を縛り上げる。おそらくこの出入口の見張り役であろう男は、武器を持ってはいたが動きが荒っぽいだけで制するのは簡単だった。
「ジャンへの土産話が増えましたね。下水道にも警備を付けた方がいいと」
「…………重要なのでしょうが、この臭いではなかなか警備も大変でしょうねー。あ、明かりをお持ちしましたよプラシドさん。ランプ代あなたにツケておいてよろしいですかー?」
「構いませんよ。最終的には経費で落とすので」
まず先に自分達はテオドールの言う孤児院を訪ねたが、マリーさんの言った通り地下に通じる物は何もなかった。
ただ、この国の一部の都市に張り巡らされた地下下水道の存在にマリーさんが思い当たり、職務柄この街に詳しいジャンを頼ってみたところ大正解。孤児院のちょうど真下を通るポイントが存在した。
最寄りの出入口に到着し鍵を開けたところ、中にいた不審者が襲いかかってきて今に至る。
「マリーさんはジャンの所へ戻ってこのことを伝えてください」
「わかりましたがープラシドさん、単身で突っ込むおつもりですかー?」
「あまり時間がありません。報告さえできればすぐ応援を寄越す筈なので、マリーさん急ぎ目で頼みますね。さあ、行きましょうかテオドールさん」
「人使いがあらいよね。もちろん行くけど」




