029話
《まあ、なんだ? そう落ち込むなよ、ギャラクティ――》
「その名前で呼ぶなあああああっ!!」
私はそこらに転がっていた空き瓶を拾い、アラグ=ザイン――自称・別世界の神――に全力で投げつけた。
もう一人の神、マレフ=ティオンはというと、せっせとビールを作ったりツマミを並べたりして、必死に機嫌を取ろうとしている。
……ただし、“人間の感情”がよくわからないらしく、私の要求を「完了した後も」延々繰り返すという、厄介なバグモードに突入中だった。
「このまま私は、“テクノブレイカー”だの、“ギャラクティカオメガリオンソード”だので、一生エルフたちから陰口叩かれるんだろうね……。どうせ、渾名はそのどっちか、あるいは両方。……くそがああああっ!」
もう一本瓶を拾って投げると、今度はマレフ=ティオンの頭にクリーンヒット。
「ゴッ!?」と情けない声を上げ、そのまま床に倒れ込んだ。
《ナイスヒット! いやー、落ち込んでてもキレがあるっていいねぇ!》
アラグ=ザインは、相変わらずニヤニヤしながらこっちを見ている。……ほんと腹立つ。
《でもまあ、悪いことばっかじゃねーぞ? あんたは俺を笑わせた。で、記録を見る限り――“神を楽しませた存在は、褒美を受け取る”ってことになってる。だからさ、ちょっとしたご褒美、用意しといてやる》
「へぇ、それはどうも……まあ、期待しないで待ってるわ」
《いやいや、期待していいぞ? 俺はあんたに期待してるから、投資は惜しまないつもり。なんせ、あんた次第で俺の世界も延命できるかもしれないしな》
「……どういう意味?」
思わず聞き返すと、アラグ=ザインは「前にマレフ=ティオンにも話したけど」と前置きしつつ、自分の世界の話を語り始めた。
曰く――
彼の世界は、すでに終末期に突入しており、破壊の連鎖――とくに武器の過剰進化――によって崩壊が加速している。
そのなかで、マレフ=ティオンが私の転生計画に際してリソース借入を申請した際、アラグ=ザインは「お試し」で少しだけ貸し出したらしい。
そして今――
正式にその債権を放棄し、今後も“無制限とはいかないが、期待していいレベル”でのリソース無償供与を約束したのだという。
「気前よすぎて逆に怖いんだけど……そこまでして世界を延命したいなら、一つアイディアあるんだけど?」
《マジで!? もう出てきたの!? それ、期待していいヤツ??》
本気で食いついてきた。私はマレフ=ティオンを煽り、持ち込んだ地球の情報ライブラリから、とあるアニメ作品をタブレットに表示した。
「このアニメ知ってる? “新しい粒子”の登場で電子機器やレーダーが無効化されて、人型ロボの近接戦がメインになるやつ。あれを参考にするの」
《なるほど?》
「その粒子みたいな干渉体を作って、世界に介入させる。索敵は死ぬ、砲戦距離は縮小。下手に撃てば位置バレ。結果、前線が縮んで双方慎重になる。対抗手段ができるまで、時間稼げるでしょ?」
《うわああ、それ天才かよ……やっぱ、異世界の発想はスゲェや……!》
上機嫌のアラグ=ザインに、さらに畳みかける。
「それと――戦争に“美”や“様式”を持ち込むんだよ」
「たとえば、惑星の破壊行為は『我が作りし大地を汚す、我への冒涜』。
群れの戦いではなく、『個の技量が光る戦』を尊ぶ。
そう宣言して、“神を喜ばせる戦い”をした側を正当化する」
《なるほど……“俺もあいつらが好きだけど、あいつらも俺のことが好き”って関係を利用するわけだな》
「そうそう。誤解を恐れず言えば、神は親で、神に作られた存在は子。
子が親に認められたいって心理は、世界が違っても変わらないと思うよ?」




