026話
長との世間話の中で、不意に彼は口を開いた。
「しかし私は、少し気になっていることがあるのです」
「ん……?」
「最初に目を覚まされた時、お使い様は錯乱状態で、自分が“女性なのに男性になってしまった”と叫ばれていましたよね?」
――ああ、あの時のことか。
できればなかったことにしたい。記憶から消してしまいたい。完全に黒歴史だ。
「ですが、私には……お使い様が“女性”に見えるのです」
「……え?」
「どういうことでしょうか。里の者は皆“男性”だと申しますが、私には人族の女性、いえ……我らエルフの女性に近い印象すらあるのです」
「えっ? ちょ、えええ???」
意味がわからない。理解が追いつかない。頭がぐるぐるする。
とりあえず確認だ。ズボンの中へ手を突っ込む。
――あった。希望空しく、確実にある。
念のため、上も確かめる。――あれ? なんか、少し……ある?
思わずばっ!とシャツを脱ぎ、胸元を押さえる。
そこには、まるで「第二次成長が始まりました」とでも言うような、ごくわずかな膨らみが存在していた。
「え、なにこれ? 前はこんなんじゃなかったはず……」
揉めるかどうかでいえば……頑張ればいける。でもブラなんて要らないレベル。
「まさか……魂が肉体に定着した影響で、身体が女寄りに変化してきてる……?」
でも下は……うん、まだそのままだ。
「これって……魂に合わせて肉体が中間調整されてるってこと? やば……性別バグってない!?」
「お、お使い様! 落ち着かれてください! とりあえず、服をお召しに!」
長に言われて、慌ててシャツを着る。
外からではほとんどわからないが、裾から手を入れて触れると、やはり微妙なふくらみはある。
「……これ、どういうことなんでしょうか。私が確認しても、男性固有の器官は間違いなくあります。
そして混乱していたので確証はありませんが、最初の肉体はもっと筋肉質で、胸も完全にフラットだったような……。
今は少し女性的というか、太っているか幼児体型というか……とにかく筋肉っぽさがなくなっていて、ふっくらしています。長、何か思い当たる節は?」
「申し訳ありませんが……このような事例は初めてです。
これはもう、神に直接お訊きになるしか……」
やっぱりそうなるか……。でも、神(仮)との交信手段なんてあるのか?
疑問が顔に出ていたのか、長が続ける。
「村の外れに祠がございます。そこにマレフ=ティオン様が祀られております。
祈りを捧げれば、きっと神に届くことでしょう」
――ほう、神(仮)は「マレフ=ティオン」と言うのか。




