025話
もし私が転生じゃなく、ただの蘇生だったなら──
この物語のタイトルは、きっとこうだったに違いない。
『復活の【テクノブレイカー】エイジス』
……だが、現実はもっとタチが悪い。
身体はエイジス君でも、中身は三十路OLの私である。
なんでよりによって、こんな不名誉な肉体で人生ニューゲーム?
何の罰ゲーム? ……いや、原因は私だよ。私なんだけどさ!
でもさ、あんまりじゃない!?
よりによって“歴史的に見ても稀有な変態的死亡要因”で散った奴が、
私の転生先の元・持ち主って、どういうこと!? チクショウ!!
冷静になろうとすればするほど、
この身体に対する理不尽な怒りと恨みばっかりが湧いてきて、
無意味で、無駄で、生産性皆無な精神ループに突入してしまう。
……わかってる。わかってるけど!
「その……お使い様……落ち着かれましたでしょうか?」
村の長が正座のまま、おずおずと顔を上げてきた。
視線は宙を泳ぎながらも、声には必死の気遣いがにじんでいる。
私は一瞬だけ深呼吸して、理性を取り戻そうとする。
……が。
「あー……えー……まあ……その……なんですか……」
ぐつぐつぐつ……と、沸騰寸前の感情が戻ってくるのを、はっきりと感じた。
「フザけんなクソがああああああっ!!」
──無理だった。
冷静になろうとした。
この長の態度を見て、「私、ちゃんとしなきゃ」って思った。
でも、駄目だった。
「お使い様! お使い様ぁ! どうか、どうかお鎮まり下され……!」
長は突如として床に突っ伏し、肩を震わせながらおいおいと泣き出した。
「このような奇跡……天の遣いが、我らの前に姿を現すなど……
わ、我が生涯で、この目で見ることが叶うなどとは……!
ああ……エイジスの馬鹿が……!
あれだけ才もあり、皆に慕われていたというのに……
どうして、どうしてあのような最後を……!」
その悲痛な姿に、私はようやく少し冷静さを取り戻した。
……いや、というか、冷めた。なんかもう、いろいろと。
結構な年齢だと思うけど、長さん……ごめんよ。
怒鳴って、ほんとごめん。
そこからは、互いに謝罪合戦が始まった。
私は錯乱して怒鳴り散らかした無礼を、ひたすら謝り続け、
長は自分の部族の管理能力の不備と、
エイジス君という奇特な存在を育ててしまったことを、またひたすら謝った。
ただ、ひとつだけ気になったことがあった。
「……あの、長さんはエイジス君の父親なんですか?
そうではなさそうな気がするのですが……」
「はい。私はエイジスの肉親ではありませぬが……
ああ、そうか。お使い様は外の世界から来られた方で、
人の社会に近い文化の中で育たれたのでしたね」
そう言うと、ハンカチで涙の跡を拭いながら、
長は姿勢を正して、再び正座を取り、語り始めた。
「我々の種族は寿命が長く、
そして森と調和し、物質に依存しない……
人族の言うところの“ゆったりとした生活”を送る種族でございます。
そのためか……あるいは種族の性なのか、
子を成す能力が非常に低いのです。
ですので、子は何よりも大切な存在。
生まれた子を、両親だけで育てるのではなく――
部族全体の宝として、皆で育てる風習があるのです」
……はー。
なんというか、仏教伝来以前の日本の社会みたいな感じで育てるんだな。
やっぱり、ここは異世界なんだなぁ……と。
そんな小さな文化の違いに、しみじみと思うのであった。




