表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第8章・女騎士アルテミスと統合世界の公爵様

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/100

『迷宮革命』第2話・勇者制度の終焉

 四つの塔に四種類の眷属たちが蠢く。


 北には水晶の兵士。東には風光の幻獣。南には灰燼の精霊。西には死霊の騎士。

 前三者はエルドラドの産物。最後の一種は、ペルセポネの手配だ。


 迷宮は整った。けれど……


「……その前に『宣戦布告』という名のルール説明をしなきゃね」


 私、魔王サティーナは、この世界の意思であるエルドラドに語りかける。


「エルドラド。各種族の都の上空に、私の虚像(ヴィジョン)を映してくれるかしら?」


 魔王の城が淡く光り、巨大な思念が応答する。


「良かろう」


 さあ……魔王を、再開しましょう!


 ◇◇◇


 各種族の都の上空に、虚像が映る。


 ここ人間の都でも、漆黒の鎧を着た禍々しい姿を、人々が不安げに見上げる。


「この世界の住人たちよ。我が名は、魔王サティーナ!」


 どよめき。ある者は恐れ、ある者は睨みつける。


「諸君らが送り込んだ『勇者パーティー』は、我が前より敗走した。そして我は『この世界』を手中に収めたのだ!」


 『勇者パーティー』が敗れた。その衝撃に、へたり込む者もいる。


「……証拠を見せよう!地震(アース・クエイク)!!」


 魔王の号令に、エルドラドが身体を震わせる。ただそれだけで、世界に地震が起こった。


 人間たちは、パニックに陥る。

 この世界は安定していた。そして魔族は、魔王は、勇者によって滅ぼされる。


 その価値観を、地震が打ち砕いたのだ!


 空に浮く魔王を見つめる、一人の老人。人間族を束ねる族長である。


「……早く、次の『勇者』を召喚せよ!此度の魔王は、更に強大じゃ!」


 若者が短く返事をして『勇者召喚』の魔法陣に駆けていく。


 次第に大地の揺れが収まる。空には魔王サティーナの笑い声が響く。


「……ふふふ、満足いただけたかな?我はこの世界を『エルドラド』と名付け、支配下に置くことを宣言する!」


「……『エルドラド』?」


 族長は思わず、声を漏らす。


 名付け、それを自在に操る。

 今まで想像していなかった、魔王による世界の掌握。


 魔王の眼が光る。族長は心を見透かされた気がした。


「諸君らの事だ、新たな『勇者』を召喚しようとしているな?……『勇者召喚の魔法陣』は『エルドラド』の制御下。つまり、我が手中にある!」


 若者が戻ってくる。


「駄目です!魔法陣の輝きが、失われています!」


「なんじゃと!?」


 新たな『勇者』は来ない。絶望が辺りを支配する。


「ふはははっ!諸君らは自らの力のみで、我に挑戦し『エルドラド』を奪い返さなければならない!」


 魔王サティーナは、声を上げて笑う。


「一人に全てを背負わせ、他を弱者のままにする制度……それが勇者だ」


 『勇者』を打倒した強大な魔王。その事実が、今更ながらに人々を恐怖させる。


「……だが、我が城に行き着く前には、結界を破らなければならない!我が配下『魔王四天王』が守護する四つの塔が、結界の発生源だ!」


「……魔王にも匹敵する『魔王四天王』と、四つの塔じゃと?」


 各種族の到達点……『勇者』とは、それほどの存在。

 最後の『勇者』は、女騎士ながら、卓越した剣の技量を持っていた。


「迷宮や我が城へは『六人までのパーティー』で、挑戦してもらおう!」


 若者が、叫ぶ!


「族長!他の種属とも話し合い、一番強い者を『勇者』として送り込みましょう!今度こそ、アイツを倒すのです!」


 しかし、人間族の族長は、へたり込む。


「……無理じゃ。お前は『勇者』を、よく知らない。我ら普通の人間が、束になっても勝てない……それが『勇者』じゃ」


 その目には涙さえ浮かべ、うわ言のように話す。


「あの女騎士を見ただろう。都の若い者を叩きのめし、剣の稽古を付けていった……彼女ですら、かなわなかったのじゃ」


 若者は、両手を見つめる。最後の『勇者』……銀髪の女騎士に、木刀を叩き落とされた痛みを思い出す。


「我に挑戦するも、服従するも、諸君らの自由だ!……我は城にて、諸君らの挑戦を待つ!」


 そう言い残し、魔王サティーナの姿が消える。


 魔王の宣言は、世界中を駆け回る。


「これは魔王の戯言だ!」

 冷静に分析しようとするエルフの学者。


「魔王め!差し違えても、倒す!」

 自暴自棄になる獣人の戦士。


「新たな勇者を探せ!」

 未だに勇者に縋るドワーフの鍛冶師。


「ふふふ……流石、魔王様」

 堕天しつつある天使の司祭。


「勇者じゃなくても、挑めるのか?……僕だって!!」

 自分の可能性を信じるフィッツの若者。


 ◇◇◇


 『ルール説明』を終えた私は、玉座に深く腰掛ける。


「……ふふふ、どうだったかしら?エルドラド」


 城の壁は脈打ち、世界の意思を私に伝える。


「見事だ、サティーナ」


 エルドラドは、深く満足したように応える。


 各地の様子を映し出し、住人たちが衝撃に打ちひしがれているのが手に取るように分かる。


「お前、の宣言により、この世、界の全ての住人、たちは理解しただろう。これまでと、は異なる、新たなルール、が課せられ、たことを」


 私とエルドラドは、イタズラが成功した子どものように笑う。


「もしかしたら『エルドラド』……黄金郷、理想郷という意味にも、気付く冒険者が現れるかもね?」


 私の声に、エルドラドは映像を映し出す。


「……ならば、その時、は望む物を、望む、だけ与えよう」


 壁面に映るのは、地下深く眠る鉱脈。過去の魔王たちの時代に、蓄積された財。

 ……過去に思いを馳せながら、私たちは、しばらく眺めていた。


「……そろそろ、結界を張らなければ、ならないかしら?」


 私は『仲間との絆』を司る権能に、力を込める。

 玄武。青龍。朱雀。白虎。四つの塔へ、呼びかける。


「……あれ?」


「どうした?サティーナ」


 エルドラドが不安そうに聞いてくる。


「……四天王の権能の気配が……消えた……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ