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お兄ちゃまの気持ち

頑張って言おうとしたとき、「うん、知ってるよ」とお兄ちゃまが悟ったような口調で、私の言葉の続きを引き取った。


「マークス様から結婚のお申し入れがあったんだよね」


え!!

何でお兄ちゃまがそれを!?

驚きのあまり言葉を失った私に、お兄ちゃまが補足した。


「ああ違うんだ。マークス様からその話を聞いたんじゃなくてね、その話を直接聞いたんだ」


ん??どういうこと?


「あの場に居合わせたんだ」


「えっ」


「マークス様から頼まれて、昨日はマークス様の執務室の奥にこもって、書類仕事をしていたんだ。領主様とトリスタン様がご不在の間、人手が足りていないらしくて、猫の手も借りたいということでね。そうしたら、マークス様が君を伴って部屋へ入って来られて、話し始めた。バタバタしていて、奥に俺がいることをお忘れになっていたんだろうね。俺も2人の話し声が聞こえてきて、初めて気付いたし、出ていって邪魔をするのもはばかられたから、じっとその場でやり過ごしてしまった。もちろん後でマークス様には話して、謝った」


な、なるほど。ていうかマークス様……何ていうことをして下さったのか。

人知れずの大事な話を、うっかり他に人がいることを忘れてしてしまうなんて。しかもその相手がお兄ちゃまだなんて。


「すごい良い話じゃないか。良かったね、おめでとう」


お兄ちゃまが珍しく口角を上げて、微笑した。その笑顔にズキリと胸が痛んだ。


「そう思うのは事実だが……クレア。今さらこんなことを言うのは滑稽だと分かっているが、どうしても俺の気持ちを伝えたくて。……俺は、君のことを愛している」


えっ!!!

いっ、いま何て……

あっ、愛してるって、でもそれは……


「妹みたいに、愛してくれている、ってことよね?」


「いや、違うんだ。ずっとそう思っていたが、君の縁談が上手くいったと手紙で知らせを受けたとき、喜ぶべきだと分かっていたがとてもショックだったんだ。でもそれは、君を妹のように可愛く思っているからこそ寂しく思う、親心のようなものかと納得した。けどね、あのコンテストの舞台で君を見て、改めてはっとさせられたんだ。綺麗で堂々としていて、勇気のある君に心底見惚れたよ。任務中だというのに」


あまりにも思いがけない告白を、ただただ信じられない思いで聞いた。


「いつもね、思ってた。君は小さくてただただ可愛くて、俺が兄のように守ってあげなければならない存在だと。でもそれは単なる俺の願望で傲慢で、君はもう一人前の立派な大人の女性なんだなって。俺の助けは要らない。なのに、俺はいつまでも君に頼ってほしいし、甘えてほしいし、離れてほしくないと思ってしまった。そして昨日、マークス様との話を聞いたとき、ようやく自覚したよ。俺は、君を妹のような存在として以上に、1人の女性として愛している」


ゆっくりと一言一言、噛みしめるように言って、お兄ちゃまは真剣な瞳で私を見つめた。


「君を困らせると分かっていたが、どうしても伝えたかった。秘めておくのが苦しくてね。だけど、言ったからといって君に何かを求める気はない。苦しいから吐き出したいという、俺の身勝手に過ぎない。聞いてくれて本当にありがとう。君はマークス様と結婚して、幸せになってくれ。それが俺の願いだ」


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