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ヒーローの本性は?

不覚にもドキリとしてしまった。


さすがプレイボーイ、パーシーは手慣れている。

どのタイミングでどんな表情で、どんな言葉を吐けば女性がグッとくるのか、心得ているのだ。


「ではパーシヴァルさん、わたくしのことをもっと知っていただけますか? お母様、我が家にパーシヴァルさんをお招きしても宜しいですか?」


お母様がえっと声を上げた。


「パーシヴァルさんはお忙しくてなかなかこちらへ来られませんでしょう。ですから今日、この機会に我が家の雰囲気などもご覧いただきたいわ。結婚して、婿入りしていただくかもしれませんもの。どのような家か、知っていただくのは大事ですわ」


用意していた台詞を畳みかけるように述べると、お母様もすぐに乗り気になった。


「そうね、クレア。その通りだわ。ワイズさん、宜しければこの後少し我が家へ寄って頂けます?」


「はい、喜んで。子爵家にお招きいただけるなんて光栄です。嬉しくてドキドキしています。いえ、さっきからドキドキしっぱなしですが。ありがとうございます」


お母様にそう答え、パーシーはにこりと私に微笑んだ。


誘惑的に微笑んでいられるのも今のうちよ。

あなたはもうじき運命の恋に落ちるのだから。


今日、うちにはエノーラを呼んである。

パーシーとのお見合いがあることは伏せて。

そこでパーシーとばったり出会わせて、2人を結びつけるのだ。

我ながらナイスアイディア。


パーシーはまだ独身だ。私との婚約もまだ成立していない。今日エノーラと出会い、お互い運命の恋に落ちればいい。


エノーラは平凡だけどいい子だ。

仕事熱心で夢があって、それに向かって一生懸命で、でも世渡りは不器用で、つい応援したくなる。

経験豊富なプレイボーイのパーシーが、本気で好きになるのはエノーラだけだ。


と思っていたのに――……


エノーラに出会ったパーシーの反応は、拍子抜けするものだった。


私が謀ったとおり、パーシーを家に招いてすぐのタイミングでエノーラが訪ねてきて、二人を引き合わせることには成功した。

前もって執事のニコライに、エノーラが訪ねてきたら決して追い返さないように言っておいたし、「友人を紹介したい」と言うとパーシーも快く応じてくれた。


しかしパーシーはエノーラには特に興味を持たず、彼女がデザインしている私のドレスに高い関心を示した。


「そのデザイン画、僕にも見せていただけますか?」


「あ、えっと…宜しいですかクレア様」


了承すると、エノーラは大きな鞄からあたふたとスケッチブックを取り出して開き、パーシーに見せた。


「ああ、どれも素敵ですね。これは全部、ドレスに仕立てるデザインですか? 3着とも」


顎に指を添え、スケッチブックに目を落としていたパーシーが言った。


「いいえ、その中から選んで一着を仕立てる予定ですの。エノーラはまもなくリズノールを離れますから、縫製は他の者に頼む予定です」


「それなら、僕に贈らせていただけませんか?」


「え?」


「出会ってすぐにこんな我儘を言うのは図々しいと承知しています。でも僕は、このドレスを3着とも気に入りました。これを着ているあなたを是非見てみたい。ですからどうか僕に作らせてください」


えっ!

私が驚いている間にパーシーはお母様とエノーラに交渉を済ませ、私が嫌じゃなければという条件で、約束を取り付けてしまった。

もはや嫌とは言えない状況だ。


それに、この要求を呑めば、パーシーとエノーラの接点を保てる。

私に贈るドレスをエノーラがデザインし、それをパーシーが買い取って、形に仕立てる。共同作業だ。


出会ってすぐにビビッとは来なかったようだが、共同作業を進めるうちに好きになるなんてのもよくある話。


「ええ、では……こちらこそ出会ってすぐにそこまでしていただくなんて大変恐縮しいですが……、お気持ち嬉しいですわ」


「気になさらないで下さい。僕が無理を言って、勝手を通したいというだけの事ですから。こういうところが強引すぎて、人に嫌われることも時々あります。どうか嫌いにならないで下さいね。あ……もしかして、もう嫌いですか?」


にこやかな表情が一転し、急に不安そうな色を浮かべる。

ライオンが急に子猫になったような幼さに、きゅんと母性本能をくすぐられる女性も多いだろう。


パーシーは本当に上手い。表情や言葉の使い方や雰囲気づくりが。

さすがプレイボーイ、そう分かっていも不覚にもきゅんとしてしまう。


駄目よクレア、チョロすぎるわよ!

しっかりして!


「いえ、とても感じの良い方だと。強引なところも駆け引きも、ご商売には大事なことでしょうし」


「ご理解いただいてありがとうございます。駆け引き……そうですね。ドレスを贈る約束を交わせば、また会っていただけると考えてしまいました。すみません、こうでもしないと自信がなくて……」


自嘲気味に苦笑するパーシーが、演技なのかどうか分からなくなってしまった。


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