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ヒーローとのお見合い

とうとう運命の日がやって来た。

他領の貿易商2世、パーシヴァル・クラレンス・ワイズとのお見合いの日が。


貸し切りの高級茶屋で、約束の時間ぴったりに現れたパーシーは、バリッとした三つ揃いスーツに身を包んだ、いかにも青年実業家だった。

年齢は24歳、私より8つ年上だ。


初対面なのに、不思議と懐かしい感じがした。

そういえば、前世での私は享年25歳。年齢が近いのだ。そして職場にはこの手のバリッとした感じ(中身はぐったりしていても外側は)の人間が多かった。

だから懐かしさを感じたのかもしれない。


挨拶を済ませ、席についた。

パーシーに秘書だと紹介された男性は、同席せず部屋を出て行った。

こちらはお母様と叔母様(お父様の弟嫁)とその息子で私の従兄弟のハーマンが同席している。


「ハーマンから聞いていた通りの、美しい方で緊張しています」


パーシーが硬い笑みを浮かべた。

計算され尽くした「緊張した笑顔」なのだろう。実際は落ち着いて見える。


「あら、こちらこそ。聞いていた通りの素敵な方で緊張しているみたい。ねえ、クレア」


お母様が仰った。はいと頷くと、続けてお母様がべらべらと喋り始めた。

パーシーの家業の規模や年商、家族構成など、ズケズケと無遠慮に聞いている。

まるで取り調べのようだ。これでは私が何もしなくても嫌われそうだ。


「あの、お母様。私もワイズさんとお話したいのですが」


お母様の取り調べに嫌な顔ひとつせず丁寧に答えていたパーシーが、こちらを見て微笑んだ。


「それは僕もです」


これは大抵の女子がキュンとする笑顔なのだろう。

お母様が前に仰ったように、パーシーの容姿は金髪碧眼で、まるで絵本の王子様のようだ。

しかし伯爵令息のあのお二方によって、類まれなる免疫力がついてしまった私には、それほどの威力がなかった。


パーシーがこれまで恋人を取っ替え引っ替えしてきた遊び人であることも、前世の愛読書で知っているし。

一言でいうと「モテモテのプレイボーイ」だ。

そんなヒーローが唯一、平凡なヒロインにだけ本気の恋をしてしまうという、いわば王道少女漫画のような流れである。


「実はここへ来る直前に、宝石商をしている友人から、たまたまクレアさんの話を聞きまして」


「え?」


「リズノール伯のご令息主催の、商人を招いての意見交換会。先月出席していた友人から、立派なご令嬢が居合わせたと聞いたんですよ。よく聞いてみたら、クレアさんのことだと分かり、これはもう運命的だなと感じました」


へっ、と思わず変な声が出そうになった。

ああ、あの意見交換会か!

別名、トリスタン様がお膳立てしてくれた合コン。


確かに他領からの客人が多く、シュッとした感じのイケメンも何人かいた。

だけどトリスタン様の前では誰もが霞んでしまうし、男性陣は男性陣で、私ではなく美人モデルに気を向けていたはず。

まさか私のことを気に留めていた人がいたなんて。


「とても優秀なご令嬢だと感嘆していました。発言者の言葉に真摯に耳を傾け、細かくメモを取り、人とは違った視点で質問をしたり、自分の意見をしっかりと言葉にできる。ご令嬢にしておくには勿体ないと。ああ、すみません。とても失礼なことを申し上げました。どうかお許しを」


パーシーの言葉に本当にびっくりして、目を丸くした。

会議に参加するにあたり、普通のことをしただけだが、そこまで詳細に私を見ていた人がいたなんて。


「その友人は個人的に貴女のことを気に入ったようですが、貴女の眼中にはご令息しか映っていない様子だったと苦笑していました。聞くところによると、リズノール伯のご令息はたいそうなご麗人だそうですね」


そう言ってパーシーは、私の瞳をじっと覗き込んだ。


「貴女の瞳に僕を映してもらうことは可能でしょうか。見てもらえるよう、これからうんと努力いたしますので」




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