完璧な計画
あー、何だかとっても疲れたな。スティーブンお兄ちゃまに会いたいな。
パーシーのことをお兄ちゃまに相談したら、何てアドバイスされるだろう。
良い人が見つかって良かったねって、祝福されてしまうかな。それはちょっと辛いかも。
もしかして、少しは嫉妬してくれるかな?
それはないか……他の人を探せと言ったのはスティーブンだし。
あー、どんな口実でもいいからスティーブンに会いたいな。
スティーブンの顔を見ると安心するし、気を張らなくていいし、特別なことをしなくても一緒にいるだけで元気になる。
知らず知らずのうちに摩耗した心が、すーっと回復する感じ。
ああそうか、私にとってスティーブンお兄ちゃまは『癒やし系』なんだわ。
癒やし系というと、ふんわりしていて人当たり柔らかで、ニコニコしてるイメージだ。
硬質な雰囲気のスティーブンは、ちっともそうじゃないけど、何故かとっても癒やされる。
『妹のように大事に思っている』
というお兄ちゃまの言葉を思い出し、まあつまりはそういうことかぁと納得した。
そもそも、お兄ちゃまが女性として好きになるタイプってどういう人なんだろう。
周りから冷やかされるほど良い雰囲気だったという『寮の食堂の可愛い女性』って、どれほど可愛いのか。
正直めちゃくちゃ気になるし、見てみたい。
トリスタン様がお好きな、清楚で凛とした優等生タイプとか、マークス様がお好きな、庇護欲をそそる小動物タイプとか。それともクリストファー様の奥様のように、強くて美しいスーパーモデル系の美女か。
とにかく私とは全くタイプが違っていて、どうあがいても私では無理だなと諦めがつくのかな。
じゃなくて、これなら私の方が上だとマウントを取りたくなるような相手だったら……?
嫌な過去を思い出す。
私の方が美人だ、私の方がスタイルがいい、家柄だって上だ。そう見下し、マウントを取ってきた相手はこれまで大勢いた。
だけどその娘たちは社交場で私よりもモテて、そのたびに見る目のない男どもを憎々しく思ってきた。
今は分かる。私は誰よりも性格ブスだったのだ。見る目のある紳士たちはそれを見抜き、私を避けた。
そんな私の悪評を物ともせず、幼女時代と変わらぬ態度で優しく接してくれるスティーブンお兄ちゃまって、やっぱりすごい。
住む世界が違っていて、仕事漬けで寮暮らしのため、私の悪評が耳に入らないという可能性もあるけど。
それでもこんなに可愛げのない「殆ど他人」の親戚の少女を、「妹のように大事に」思ってくれているというのだから、本当に奇特な人だ。
お兄ちゃまには昔からよく可愛がってもらったし、ワガママを聞いてもらったし、今回お父様の件でも大いに助けてもらったし、迷惑をかけた。
私もお兄ちゃまのために何かしたい。
恩返しというほど大袈裟なものでも、罪滅ぼしというほど殊勝なものでもないけれど、とにかくお兄ちゃまには幸せになってほしい。
もしお兄ちゃまが今も寮の食堂の女性のことを好きで、相手もそうだったら……両想いで万々歳じゃないか。
うん、クレア・プリシラ・デイヴィー、ここに決心いたしました!
私が、2人の恋のキューピッドになろうじゃないの。
相手の女性に何とかして近づいて、スティーブンへの気持ちを聞き出して、焚き付けて2人をくっつける。
我ながら完璧な計画だわ。
でも問題は、果たしてどうすれば彼女に怪しまれずに近づけるのか――?




