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避けられない出会い?


しかし家に戻り、何度も思い返したのは、マークス様のことではなく、マークス様付きの近衛兵ヘンリーのことだった。


ヘンリーが言っていた、スティーブンの話だ。

スティーブンが、警ら隊の寮の食堂の女性といい雰囲気だったという話。そのことを周りが面白おかしく冷やかして、相手の女性がスティーブンと距離を置くようになってしまった、と。


周りの冷やかしが無ければ、2人は交際に発展していたはずだとヘンリーは語った。

2人は互いに好き合っていたはずだと。


改めて胸がズキリとした。

何よお兄ちゃま、ちゃっかりそういう相手がいたんじゃない。


いつぐらいの話だろう。

もっと詳しく聞けば良かった。

もしかしてスティーブンはまだその女性のことを……


彼女はまだ寮の食堂で働いているのかしら?

じゃあ今も頻繁に顔を合わせているということ?


あのお兄ちゃまのことだから、自分を避けている相手に対してぐいぐい行くことはないだろうし、女心に鈍感だから、本当に嫌われたと思っていそうだ。


彼女は冷やかされるのが嫌なだけで、スティーブンのことはまだ好きなんだろうか?

それとも、もうとっくに冷めちゃってる?


うー、気になる。


スティーブンに聞いても、きっと「周囲の誤解で、そんなんじゃない」と言うだろうし、彼女の気持ちは本人にしか分からない。

まあ今度スティーブンに会ったら、領主様のお城でヘンリーに会ったことはチラッと話してみよう。


そう思っていたが、スティーブンはいま仕事が立て込んでいて、しばらく休みがないようだ。

あのパジャマパーティーの翌日に無断で欠勤したせいだ。

後処理はマークス様が手を回してくださったものの、そのしわ寄せで当分は休み返上で仕事しなくてはいけないみたいだ。


もちろんお兄ちゃまはそういうことを私に言ったりはしないのだけど、多分そうなんだろうと察せてしまう。


そして、どんなに忙しくても私が無理を言えば、睡眠時間や食事の時間を削って、時間を作ってくれるのだろうなということも想像できる。


だから私は全然大丈夫、今はお兄ちゃまの助けを少しも必要としていないわ、という風に過ごすしかない。


それに今は、お母様が家のことを取り仕切っているし。

隠居を命じられて以来、遊び歩くのをパタリとやめたお母様は、今は私のお婿さん探しに没頭している。


家に届く釣り書きを眺めては、文句をつけてダメ出しをするのが日課となっている。


「田舎男爵ね」

「良家です? しょせん平民でしょ」

「連れ子あり? ふざけてるわね」

「これならスティーブンがマシね」


スティーブンがマシ、どころか、スティーブンが1番いいのに。

お母様は本当に見る目がない。


自分の娘がどれほど社交界で不評を買っていて不人気か、お母様はちっとも気付こうとしない。

クレアは美人ね、スタイルも抜群だしと、お母様が昔から褒めてくださるのは主に容姿で、私を表面的にしか見ていない証拠だ。


そんなお母様のお眼鏡にかなうお婿さん候補が、ある日突然浮上した。


お父様の弟の息子の友人らしい。

お父様には弟が2人いらして、1番下の弟の奥さんの歳の離れた弟が、スティーブンだ。

その1番下の弟ではなくて、すぐ下の弟の息子――つまり私の従兄弟、の友人だという。


従兄弟一家はリズノール領には住んでいない。別の都市に住んでいて、貿易関係の仕事をしている従兄弟が、友人を私に紹介したいと言っているそうだ。


貴族ではないが、貿易商で財を築いた2世で、貴族以上の教育を受けて育ったいわゆるブルジョワだ。

その名前を聞いて、心臓が止まるかと思うほど驚いた。


パーシヴァル・クラレンス・ワイズ。


パーシー!?

この物語のヒーロー。

ヒロイン、エノーラの相手役の、パーシーだ。


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