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ツンツン、ツンときてからの〜デレ?ない!


「何だ、そんなことをわざわざ言いに来たのか」


私の話を聞き終えたマークス様は、相変わらずのツンとした態度でそう仰った。


「別に私が推薦している訳じゃない。お前たちがどう見てもそういう風だったから、それならば、収まるところに収まれば良いと思っただけだ。違うなら、勝手にしろ」


その言い草はどうかと思うが、マークス様が色々手回ししてくださったから助かった部分は多く、頭が上がらない。


それにいま何て仰りました?

私とスティーブンが「どう見てもそういう風」って……それって、お似合いの2人って意味ですよね?

端から見てそう見えたということは、それなりに良い雰囲気?


「それにしても貪欲だな。どうせならもっと上を望みたいと。スティーブン・コンラッド・ウェストンと話したが、真面目で誠実で、良い男だと思うが? 結婚相手としては不足か」


とんでもございません。


「いえ、私ではなく。スティーブンが、次期子爵には自分よりもっと相応しい人がいるはずだと言い張るので。それではもう少し他を当たってみようという話になりました」


「そうか、それは体よく断られたな。自分には勿体ない、もっと他にいい人がいるというのは、断るときの常套句だ。残念だったな」


フンと鼻で嗤われた。


「いえ、断られてはいません。他に良い人がいなければ、スティーブンと結婚します。そうしたいとスティーブンが言いましたから」


「なるほど。妥当だな」


クールな相槌を打つと、マークス様は何か思い当たったような表情をした。


「トリスタンは無理だぞ。諦めろ」


「分かってます!」


「本当か? 昔はどこで会っても無理やり割り入ってきて、何とかしてトリスタンに取り入ろうと必死で見苦しかったぞ。苺プロジェクトで手を組むことになったと聞いて、新たな手を使ってきたなと思ったら……」


ら?


「何か違う。私の知っているクレア・プリシラ・デイヴィー子爵令嬢ではない」


そう言って、マークス様は怪訝そうに私をじっと見た。

トリスタン様とそっくりのお顔で、ブルートパーズ色の瞳で、でもトリスタン様と違って温度が低い。ぞくりと背中が粟立つ。


そしていま新たな発見をした。


マークス様は過去に何度か会った私をしっかり覚えていらっしゃるのだ。

良い意味ではなく、悪い印象が強すぎて記憶に残っているのかもしれないが……


それにしても、あの日パジャマパーティーの会場で出会ったとき、よく私だと気付いたなと、今になって気付いた。

普段の姿ではなく、夜着に仮面を着けていたのに。

マークス様ほどの変装はしていなかったものの、普通は分からないと思う。


「……あの会場で、闇オークションの会場で、よく分かりましたね。仮面を着けていたのに、私だと何故お分かりに?」


「胸だ」


はい?


「そのでかい胸と腰のくびれ」


どっ、どこ見てんのよっ!!

と思わずツッコミそうになって、呑み込んだ。


「それと、その闇夜のような濃い蒼い瞳」


青空のような明るい碧い瞳をしたマークス様と、数秒間見つめ合った。


あれ、何だろうこの感じ……


まさか、まさかとは思うけれど、マークス様ってもしかして私のことを……?


いや、それは絶対ない!!

断言する。

マークス様のタイプの女性を知っている。

小柄で華奢で、ふわふわしていて、小動物のように可愛らしい女性がお好きなのだ。


そういう女性に対しては、別人のようにデレデレするのを知っている。

私に対しては、言いたい放題の毒舌だし、常に馬鹿にしたような態度でいらっしゃるし、とっても感じが悪いのだから。


でもキスしたんだよなあ、この人と。と急に思い出してしまった。

もう忘れていようと思ったのに。


気まずさに耐えられず、逃げるようにして帰った。


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