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自主規制音と警告音

黙っているのも気まずいので会話をした。

探しに来たカイザーのこと、お父様のこと、苺プロジェクトのことなど、とにかくこの状況から気を逸らすべく。


幸い、周囲はそれぞれの睦事に没頭していて、それなりに賑やかなため、小声で話していれば聞かれる心配はない。


周りを気にしないよう、気にしないようにと努めていると、ドサッと隣に人が座る気配がして、びっくりした。

スティーブンも同じく、ぎょっとした様子で乱入者を見た。


いきなり隣に座ってきた男も、私たち同様に仮面を着けている。それがこのパーティーのドレスコードだからだ。

仮面に夜着。


しかし男は半裸だった。正確に言えば、全裸でナイトガウンのみ羽織っている…多分。咄嗟に目を背けたので、薄暗いのも幸いして、はっきり見ずに済んだ。


きゃーー!変態っと叫びたい気持ちをこらえ、というか、心底恐怖を感じたときは声なんて出ないものだ。

ひっと息を飲み、怯えた。ななななに、何この人。


ぐいっとスティーブンが私の手を引いて、ソファーから立った。そして自分の後ろへ私をやって背中でかばうと、


「何ですか、あなたは。とっとと去ってください」と聞いたことのないような、冷たい声を出した。


変態はソファーに座ったままこちらを見上げ、


「何言ってんの、お兄さん。こういうの好きで来たんでしょお。うちのは年季いってるけど、その分いい技持ってるよ。ほら、あそこで黒仮面にいいようにされてるのが、うちの奥さん。ここからじゃ見えないか。交換しようよ。それとも一緒に? とりあえずこっちに混ぜてよ」


スティーブンの後ろで、ずこーんと衝撃を受けた。

えっ、ちょっと待っ……

奥さんと交換って。奥さんが他の人としてるから、こっちに混ぜてって……それってもしかしていわゆる、スワッ……「ピー!(自主規制音)」


この会の本当の主旨って、それ!?


自主規制音と同時に、警告音も脳内で鳴り響いた。危険危険、ただちに回避せよと。


「初参加で知らずに来たんだ。申し訳ないが、僕達には構わないでくれ。彼女も怯えている」


事情を理解したスティーブンが先程よりは幾分丁寧に、しかしやはり低くて硬い声色でNTR癖の男を牽制した。


スティーブンの方が若く、職業柄体格も良く、鍛えられた雰囲気を持つ。

どう見ても敵わないはずなのに、少したるんだ体つきの中年男は、なぜか全く怯まなかった。


「お初かあ。じゃあ怖気づくのも仕方ないけど、一回やってみると良いもんだよお。ねえ彼女ぉ、オジサンもいいもんだよ。ちょっとだけ触らせてよ。気持ちよーくしてあげるから」


げ、気持ち悪い。吐きそう。

スティーブンの横を回り込んで私に近付こうとしたオジサンを、スティーブンは素早くガッと押さえた。


「イテテっ、何するんだよぉ!」


変態仮面オジサンが大きな声を上げた。


「暴力反対! 暴力はやめろ! 誰か助けてくれぇ」


大袈裟に叫ぶが、スティーブンはオジサンの腕を掴んでいるだけで、殴ったりはしていない。

むしろオジサンがジタバタと暴れ出して危ないため、取り押さえているだけだ。


周りの音が一斉に静まり、オジサンの声だけが響く中、3人の黒服の男がやって来た。

仮面は漬けているが夜着ではなく、身なりや雰囲気から、会場の警備だとすぐに分かった。腰に警棒を携えている。


彼らは速やかに行動し、変態仮面オジサンと、スティーブンと私を会場から連れ出した。

前後を挟まれて長い廊下を移動しながら、リーダーらしき先頭の男が前を向いたまま言った。


「揉め事を起こされては困ります。このような会ですから、本来身元の確認はしておりませんが、それなりのお立場にある方しか招待状は入手できないはず。申し訳ありませんが、身元確認をさせていただいた上で、今後の参加は禁止させていただきますので、御了承ください」


つまり出禁か。それは全然いいけど、困るのは……


「待ってくれ。俺は何も悪くない。この若造がいきなり乱暴を働いてきたんだぞ。身元だって明かすもんか。金なら払う!」とオジサンが喚いた。


「言い分は奥の事務所で私達のボスが伺いますので、そちらで存分に」と先頭の男が答えた。


ちなみにスティーブンと私は、オジサンの後ろを歩いている。

特に拘束などはされておらず、揉め事を起こしたものの、一応客人としての扱いだ。


「どうしよう……身元確認なんて」と隣を歩くスティーブンに不安をこぼした。


こんな会だとは知らずに来たのだ。

怪しそうな会だとは思ったが、蓋を開けてみればグレーどころではなく、真っ黒だった。

オークションの品は盗品だし、メインは乱れた性の開放だし、とてもじゃないが「参加していただけだから白です」と言えるような会ではない。


私が子爵家の令嬢だと知れたら、脅されたりするんだろうか。

この会を主催しているのが真っ黒な犯罪者であることは間違いない。

私達が追っているカイザーとは全く別筋なのか、繋がっているのかは、分からないけれど。


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