びっくりタイム
「では余興が終わりましたので、これよりショータイムとなります」
オークションが終了してすぐにアナウンスが響き渡った。
ん? オークションは余興?
次は何が出てくるのかと身構えると、ステージの袖から3人の女性が出てきた。
3人とも薔薇のモチーフがついた真っ赤なナイトドレスを着ている。顔には白い羽根の仮面。手には薄く透ける素材の布地。
その布がひらひらと振られ、女性たちはそれぞれ踊り出した。
しかし音楽はなく無音だ。それに踊りが妙に艶めかしい。サイドスリットから覗く太腿の色気にドキリとする。
「な……何だか色っぽいダンスね」
スティーブンに耳打ちした。
スティーブンがどんな気持ちで見ているのか気になった。
踊り子の動きはさらに扇情的になっていく。くねくねと動き、まるで客席を誘っているような。
と思うと、舞台袖から3人の男が出てきた。素肌にナイトガウンを羽織った姿で、踊るような足取りで踊り子たちに近づき、手足を絡め始めた。
えっ。これはちょっと流石に。
これはもはやダンスじゃない。男女が唇を重ねたり体をまさぐったりする行為は、人前で披露すべきものではない。
何じゃこりゃ。えっ、これって本当にどういうこと?
私たちは一体何を見せられているのか。
静かにうろたえていると、スティーブンに肩を抱かれた。
ひゃっ!と声を上げそうになった。
「目を瞑ってろ。見なくていい」
ぐいと胸板に引き寄せられた。
良い子には目の毒だと思ってそうしたのだろうが、これはこれでドキドキして困る!
スティーブンが思っているほど箱入り娘ではないけれど、カマトトぶって顔を伏せ、守ってくれる腕に抱きついた。
こんなときくらい、どさくさに紛れて可愛こぶっちゃえ。
あー、やっぱり『守られている感』って女子には必要だわ。
常日頃から上から目線で「守ってやろうか?」は嫌だけど、不安なときには広い胸に包まれたい。あー、このドキドキ感と安心感。相反する感情が混在する。
女子であることを噛みしめていると、変な声が漏れ聞こえてきた。
押し殺したような「あっ」とか「んっ」とかだ。荒い呼吸音も聞こえてくる。
えっ、ん? ええっ。これってまさか……
気付けば会場のあちらこちらから、艶めかしい吐息が上がっている。
なっ、何みんな、なに始めちゃってんですの!?
扇情的なショーを見て、興奮したんだろうか。それにしたって周りに大勢人がいるのに……それとも周囲の雰囲気につられて、じゃあ自分たちもと……?
「ね、ねえ……スティーブン、何これ」
「どうやらこれがこの会の主旨らしいな。悪趣味すぎるな。しばらく我慢してやり過ごすしかないようだ。本当にすまない。こんな会だとは知らずに、連れて来てしまって」
ボソボソと謝るスティーブンに首を横に振った。
「無理を言って、一緒に行くと言って聞かなかったのは私だもの。謝らないで」
なるべく目立たずやり過ごそうと、くっついたままじっとしていた私たちだが、いい加減気まずくなってきた。
なんせ周囲の喘ぎ声が一層遠慮なくなってきたからだ。
声以外の生々しい音も響いてくる。
いくら生真面目な堅物と言えど、スティーブンお兄ちゃまも年頃の健全な男子だ。
この状況に身を置いて、夜着姿の女と肩を寄せ合っていて、変な気分にならないのだろうか?
そう意識すると、こちらが意識しすぎて身体が硬直する。心臓がどっどっどっと早鐘のように鳴る。どうかスティーブンに聞こえませんようにと祈るばかりだ。




