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苺の名付け

それから数日後、私は再び領主様のお城でトリスタン様と会っていた。


『苺増産プロジェクト』のことで相談があると呼び出されたのだ。

正直とても気になっていたので、二つ返事で飛んで行った。


計画の発案者はお父様名義となり、苺ハウスの建設もお父様の管轄下、苺の栽培は農家へ委託と。もう私の出る幕はないときっちり線引されてしまった以上、今後は関わることができないと少し寂しく思っていた。


まだ私の力が必要とされているのなら、はい喜んで!だ。


「苺の名前ですか?」


「ああ。新しく苺ハウスで増産する苺に、特別な呼び名を付けようという話。覚えてるかな?」


「ええ、勿論です。でもそれは、生産者のグーチさんに決めてもらうというお話では……」


「うん、グーチには候補名を5つ挙げてもらった。1つに決めさせて、あまりにちょっとアレな名前でも困るからね。5つ考えさせて、その中から決めるという約束だ。候補の中から、あなたに選んでほしい」


「私が、ですか。私なんかが決めて宜しいんですか?」


「『なんか』じゃない。あなたに決めてほしいんだ。この計画の発案者だからね。形式上は子爵へ譲ったが、実際にこの計画を立ち上げたあなたにも、何かその証を。というのはただの私の自己満足かな」


「いえっ、とんでもございません! ありがたき幸せっ」


ははーっと土下座したくなる。というか、いつの間にかグローリアの口調にかぶれてしまっていることに気づき、赤面した。

危うく、変なポーズをとって忠誠を誓うところだった。あぶないあぶない。


あたふたする私を穏やかな笑みで包み込んでくれるトリスタン様は、今日も神々しく尊い。


意識するな、意識するな私。

ビジネスパートナーを変に意識して、ギクシャクしてしまうとか痛すぎる。自意識過剰!


分かってる。このお方のタイプの女性は清楚で凛とした優等生タイプ。

過去に散々アプローチしても私のことなんて「どこかで見た顔だな」程度の認識だったもんな。眼中に無いとはこのことだ。


そのトリスタン様が、私に会いたいと言って何度も逢瀬(打ち合わせ)を重ね、じっと目を見て楽しそうに微笑んでくださるなんて、まさかこんな日が来るなんて。


苺さま様だ。

そう、勘違いしてはならない。

これは苺繋がりの、ただの仕事の一環。


女としてではなく、私のアイディアを買ってくださったトリスタン様のご期待に報えるよう、良い仕事をするのみ。


グーチさんが考えたという5つの名前候補を見せてもらった。

トリスタン様の仰るように、確かに「あまりにちょっとアレな名前」も散見する。


『グーチさんの赤い恋人』とか……ちゃっかり自分の名前を入れてるし、白ならロマンチックな感じがするけれど、赤い恋人ってちょっとホラー感がある。血まみれ??


照れてほっぺが赤いとか、初々しく赤面している恋人を想像できれば可愛いけど。


「うーん、悩みますねえ……」


甘々リズ姫の誘惑……うーん、なんか言いたいことは分かるけど…ちょっと下品?


レッドサンシャインクイーン……うーん、悪の組織の女王感。


スイート・ルビー……うん普通。普通すぎ?


リズりんの赤いほっぺ♡……そう来たか。ある意味ありな気もする寄りのナシかな。


この中から選べと?

む、難しい!



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