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<70>悪役令嬢は友達と恋人の境目に悩んでいるようです

 食事を終えたシャーロット達は何かを話すでもなく、3人で座っていた。エリックはブルーノの方のひじ掛けに腰かけて、その様子を眺めている。サニーは自分に引き寄せたシャーロットの手を撫でているし、ブルーノはシャーロットが自分の太ももの上に置いた手の上に自分の手を重ねて動かそうとしなかった。

 動けないまま、シャーロットは広間の様子をぼんやりと眺めていた。

 大人達はカクテルグラスを片手に何か盛り上がっている。ブルーノの両親と宰相とうちの両親と祖父となんて、何を盛り上がる共通の話題があるのだろう。シャーロットは不思議に思いながら見ていた。

 ミカエルとリュートはガブリエルとレインと何かを話していた。

「王子様は、薔薇の元へ帰れたのかしら。」

 シャーロットが謎かけのように呟いた言葉を、サニーが答えた。

「そのために儚くなったんでしょう? 帰れたと思いたいですね。」

 ブルーノは言葉を選びながら言った。

「いつも心の中で咲いているから、いつでも会えたのに、気が付かなかったんだ、きっと。」

 エリックは何の話なのか少し考えた様子だったけれど、あの本の話だと悟った顔になり、小さく頷いた。

「もともと長い夢を見ていたのかもな。目の前にある薔薇に背を向けて、旅に出た気になって、ずっと考えていたのかもな。」

「え、ナニソレ。」

 エリックの発想は他の4人にはない発想だった。シャーロットが思わず突っ込みを入れる。

「考えても見なよ、シャーロットお姉さま。子供の王子様が、どうやって他の星へ旅をするんだよ。」

 それもそうねえと思ってから、シャーロットは急に可笑しくなった。

 くすくすと笑いだしたシャーロットに、ブルーノは嬉しそうに笑みを作る。サニーも愛おしそうにシャーロットの手を撫でる。

「何がおかしいんだよ、お姉さま。」

「エリック、それじゃあ、いろんな国で読まれてるお話が長い夢だったなんて、そんなつまんない話ってある?」

 思っていた以上に弟は夢もロマンもないんだと思うと、シャーロットは可笑しくて堪らなかった。

「現実的なあなたらしくって面白いわ、エリック。」

 ソファアに座り男性陣に囲まれて楽しそうに笑うシャーロットの笑顔を見て、リュートとミカエルが話を止めて見入っている様子を見たガブリエルが、「素直にシャーロットの傍に行けばいいのにね、」とレインに囁いていた。

 レインはサニーが満足そうにしている様子を見て、ミカエルとリュートの表情と見比べてサニーが勝ったなと思っていたけれど、ガブリエルには言わずに微笑んだ。


 パーティーの後、シャーロット達公爵家の人間は自室に引っ込んでしまい侍女達に世話を焼かれていた。今日の招待客達は帰ってしまっていなかった。広間で安心して片付けをしながら、十数人いる給仕役の執事達は集まって、4人の品評会を始めた。公爵夫人に言いつけられて観察した結果を、お互いにすり合わせていくのだ。

「ミカエル様は本当にお嬢様のことがお好きなんですね、いつも気にしていらっしゃいました。」

 若い執事が感心したように言うと、他の執事達も頷く。

「ブルーノ様は美しいうえに素晴らしい体格ですが、あの方はちょっと酒乱の気配がしますね。」

 年配の執事が心配そうに言うと、うんうんと納得したように頷く者が沢山いた。

「お坊ちゃまが結構流されやすい方なのだと知って驚きました。あの方はしっかりしたように見えて、まだまだお子様なのですね。」

 エリックをよく知る執事達は深く頷く。ブルーノのやっている事を止めようとしなかったエリックを、嘆かわしいと思っているのだ。彼らの目には、道具を使わず手掴みで給餌する行為が野蛮に見えていた。美しい礼儀作法を至高とする上流社会で生活する彼らにとって、自分の仕える主の娘が人前でああいう扱いをされることには抵抗があった。

「リュート様は大人しい方でしたね。背が高くて賢くていらっしゃるのに、今一つ、奥手というか…、お嬢様に逆上せ上っておられる御様子でしたね。」

「浮気はしなさそうですけどね。」

 苦笑いをして誰もが頷く。ここ一番という時に役に立たないようでは困ってしまう。

「サニー様が一番場に慣れていらっしゃるご様子でしたね。ブルーノ様がやっておられることを、面白がっておられる御様子なのがちょっと引っかかりましたが。」

 うーん、と深いため息が誰からも漏れる。異国の文化なのだと言われてしまえばいい返す言葉もない。

「悩ましいですが、結果を奥様にご報告しなくてはいけません。では、採決を取りましょう。」

 古参の執事が提案すると、誰もが頷いた。

「4人の中で一番お嬢様を振り回しそうなのは…、」

「ブルーノ様でしょう。」

 満場一致で誰もが納得して手を挙げた。たった一杯のカクテルであの痴態なのだ。この先が思いやられた。

「一番自分の娘を嫁がせたくないのは…、」

「ブルーノ様でしょう。」

 力強く頷く者が沢山いて他に名前は出なかった。誰も身近にああいう男性の知り合いがいなかった。

「一番魅力的だったのは…、」

「ブルーノ様です。あの方と一緒にいると退屈することはないでしょう。」

「一番破天荒な人生になりそうですけどね。」

 低く乾いた笑い声を誰もが押し殺しながら、満場一致で手を挙げた。主にもしたくない部類の男性だと誰もが思った。

 夫人には古参の執事が結果と理由を伝えた。額に手をやって、悩ましそうな表情を浮かべながら、「そ、そう、ありがとう、よくやってくれたわ、感謝しているわ」と執事達を労っていた。 


 夫人は結果を紙に書いてまとめ、夫である公爵の執務室に入って行った。手渡された紙を読んで、公爵は頭を悩ませた。

「これは…、想像していた結果と随分違うようだね。」

「そうなの、私も困ってしまって。」

 二人はブルーノは一番評判がいいだろうと思っていた。一番評価が低いのがミカエルだろうとも思っていた。付き合いが長い分、ミカエルはシャーロットにとって刺激にはならないだろうと思っていたのだ。

「そうか、仕える者からこんなに評価が低いと、この先不安だな。」

 二人は溜め息を付いた。評価の書かれた紙は、公爵の机の引き出しの一番奥に丁寧に仕舞われた。その隣には、幼い頃シャーロットが描いた公爵の似顔絵が仕舞われている。

「もう一度、私達の目で確認できる機会があればいいのだけれど…、」 

 夫人の呟きに、公爵は深く考え込んだままだった。


 週明けの月曜日の朝の教室前の廊下は、期末テストの結果が張り出されていて、生徒達で大変な混雑だった。ごった返す中にガブリエルの後ろ姿を見つけたシャーロットは、人込みを掻き分けて近寄った。

「おはよう、ガブリエル、名前、見つかった?」

 シャーロットを振り向きながら、ガブリエルは微笑んだ。

「シャーロット、おはようございます。おめでとう、今回も私は負けましたわ。」

 素直に褒めたたえることが出来るガブリエルは凄いなと、シャーロットは思った。ガブリエルが指差した方向には背の高いエリックやブルーノ、サニーの頭も見えた。

 シャーロットは2位だった。1位はまたもやサニーだった。困ったな…、また何かおねだりされちゃうのかな。今回は必死で頑張ったんだけどなあ…。シャーロットは眉を顰めた。でもまあ、おねだりも一人ならまだましだわ。

 シャーロットの姿を見つけ、エリックとブルーノが寄ってくる。

「お姉さま、おはよう。ご褒美を寄越せ、」

「はい? 私2位なのよ?」

「よく見ろお姉さま、同点2位が何人いると思ってるんだ。」

 サニーの隣の2位にはシャ-ロット、エリック、ブルーノ、リュートと名前が並んでいる。名前の順番はおそらく選択している科目順なのだろう。6位にガブリエルの名前があり、9位にはローズの名前があった。

「え、じゃあ、ガブリエルって、実質3位じゃない。ガブリエル、すごいじゃないの。」

「そうですわね、ありがとう、シャーロット。ご褒美を頂けるのかしら。」

 くすくすと笑うガブリエルに、シャーロットは首を振る。

「ガブリエルのご褒美はレイン様におねだりしてくださいな。それが一番だと思うわ。」

 ガブリエルがぽっと頬を染めたので、微笑ましいなとシャーロットは思った。私もおねだりできる誰かがいればなあ。二人分頑張っているミカエルにおねだりするのは気が引ける。

 ミチルの名前は10位だった。シャーロットは結果を知らせに2年生の教室に見に行こうと思った。今朝会った時、ミカエルとは今回のテストの結果にキスの約束はしていないけれど、結果がどうなったのか気になっていた。

「シャーロットお姉さま、無視してないで現実を見ろ。同点2位なんだから、勝ったのと同じだよな?」

「違うと思うわ。」

 エリックは誤魔化せても、他の二人は煩そうだなとシャーロットは思った。ブルーノはにやりと笑うと、シャーロットの耳元で囁いた。

「今度一緒にご飯食べよう? 今日の放課後、細かいことを決めようか?」

 そう言えば今日の放課後一緒に過ごす約束をしていたっけ。シャーロットはお礼の内容を思い出して困ったなと思う。

「じゃあ、放課後。一緒に帰ろう、」

 にやりと笑うとブルーノはエリックと教室に入って行ってしまう。

 急にガブリエルはシャーロットに微笑みかけると、「先に行きますわね」と先に行ってしまった。

 戸惑うシャーロットの肩にぽんと手を掛けた男子生徒を見上げると、リュートだった。リュートの傍には、騎士コースのチーム・屋上の学生達が何人かいた。

 だからガブリエルは逃げちゃったのね…とシャーロットは思った。また屋上に誘われると思ったんだわ。

「シャーロット、2位おめでとう。私も2位なんだ。同じだから、お祝いを一緒に出来るね。」

「しなくていいと思います。」

 シャーロットが即答すると、リュートは苦笑いをした。

「少しづつ距離を縮めて行こうと話したばかりだろう? お祝いもかねて、みんなとお昼ご飯を一緒に食べよう、」

「姫、我々騎士コースの学生達は、今回もいい成績だったのです。婚約者が決まった者も5組増えました。報告もかねて明日のお昼を、一緒に学食でしましょう。」

 トミーが嬉しそうに言った。

「マリエッタは元気にしてますか?」

 シャーロットが尋ねると、トミーは更に嬉しそうに答える。

「ええ、マリエッタも今回は頑張ったみたいで、順位が上がったとさっき話してました。姫が気にかけてくださったと伝えておきます。」

「それは良かったです。」

 シャーロットが微笑むと、他の騎士コースの者達も嬉しそうに婚約者の話を始める。一通り聞いてから、リュートが話を締めくくる。

「みんな嬉しいのです、シャーロット。明日のお昼ご飯を学食で一緒に、で、構いませんね?」

 リュートに念を押されてしまい、シャーロットは頷くしかなかった。

「わかりました。明日は皆さんとのお昼ご飯を楽しみにします。」

 シャーロットは遅れてやって来た学生の中に、ローズの姿を見つけていた。

「では、皆さん、明日。またね、」

 手を振って騎士コースの者達と別れ、人込みを掻き分けてローズの傍に行った。

「ローズ、おめでとう!」

 シャーロットがローズの手を掴んで握手すると、ローズは涙を浮かべていた。

「ありがとう、姫様、やっとゆっくりできます。」

「あなたの実力だもの、もっと誇っていいと思うわ。」

 シャーロットが関わらなくても自力で9位を獲れたのだから、ローズは凄いと思う。これでしばらくどこかの伯爵の後妻なんてならずに済む。

「これで堂々とあなたとお話しできるわ。」

「はい、頑張りますよ、次のテストも!」

 ローズは嬉しそうに微笑んだ。髪がすっかり伸びて後ろに流しているローズは、透明感のある中世的な美少女だった。そんなローズが微笑むと、いろんな男子生徒の視線を釘付けにしていた。

 シャーロットも男子生徒ではないけれど釘付けになっている一人で、また可愛くなったんじゃないかしら…と、キュンキュンして眺めていた。

「あの、姫様、お願いがあるのです。」

 ローズがシャーロットの手を握りしめたまま、恥ずかしそうに言った。

「姫様に御礼がしたくて、言い出せなくてずっと言えなかったんですが、冬の長期休暇で、私の為に姫様の時間を下さいませんか。ななしやで、おもてなしをさせてほしいんです。」

「お礼って…、」

「看病して貰ったのに、言い出せなくてずっと気になってて、やっと話せることが出来て。今更になってしまいましたが、お礼がしたいんです。」

 ガブリエルと揉めなければ、ローズはもっと早くに話し出せたのだろうなとシャーロットは思った。お礼をしなかったんじゃなくて、出来なかったんだと思った。

「ええ、嬉しい。冬休みになってすぐくらいに、伺っていいかな。その方が御迷惑にならないだろうし。」

 年末年始はどこのうちも都合が悪いだろうとシャーロットは思った。

「はい、姫様の御都合の良い日で、大丈夫ですよ?」

「じゃあ、返事は明日でもいい? ちょっと、いろいろ予定が込み合ってて…、」

 一度、寮の自分の部屋に帰って情報を整理したいな。シャーロットはカレンダーを頭の中に思い浮かべた。実際書いて計画を立ててみないとややこしくなりそうだった。母には、街に出かけるなら日程だけでも知らせるようにと言われている。

「大丈夫です。では、楽しみに待ちますね。」

 ローズは嬉しそうに教室の中に入っていた。

 手を振って見送ったシャーロットは、ミカエルの事を思い出して急いで2年生の教室へと階段を駆け上がった。

「シャーロット、」

 ミカエルが慌ててやって来たシャーロットを見つけて微笑んだ。

「みて、あれ、今回は頑張ったんだ。」

 順位は7位だった。

「すごいじゃない。」

 ミカエルに思わず抱き着いて、シャーロットは頬にキスしていた。

「ミチルでも10位だったのよ、すごいわ、ミカエル、」

 小声で囁くと、ミカエルはシャーロットを抱きしめた。

「ありがと、シャーロット、」

 嬉しそうなミカエルの傍に、クララ達侯爵家4人組が寄ってきていた。

「私にも、ご褒美をくださいませ、シャーロット様。ご褒美を頂くと縁起が良いんですの。」

 え、ナニソレ、シャーロットはクララの言葉に凍り付く。そんな縁起の話、聞いたことないわ。

「私、今回は2位でしたの。前回からの縁起担ぎが良いんですのよ。」

 ミカエルを見つめると、ミカエルは仕方ないなといった表情で頷いている。

 シャーロットがクララの頬にキスをすると、クララはやはり頬を赤く染めて走って教室に逃げて行ってしまった。

 アントワーヌや二コラ、アンリエットも頬にキスをねだり、シャーロットは義務感からキスをする。誰も同じように走って教室に逃げて行ってしまうので、ほんとに縁起が良いのかなとシャーロットは首を傾げた。

「そのうち、2年生の上位の学生みんなにキスをねだられるんじゃない?」

 ミカエルが苦笑いをして言った。


 お昼休みに一緒に過ごす約束をしていたので学食の前の廊下でミカエルを待っていると、友人達と連れ立ったサニーが通りがかった。友人達に先に行ってもらうように頼んで、サニーはシャーロットの元へやってくる。

「シャーロット、少しだけ時間をください。」

「少しだけね、」

 ミカエルが来るまでね、とシャーロットは頷いた。

「1位のご褒美は今回もおねだり出来ますよね?」

「してくれなくてもいいけどね?」

 シャーロットが微笑むと、サニーは負けないように微笑んだ。

「この前は一緒にお茶、でしたね。じゃあ、今回は、一緒にお出かけにしましょうか。」

「二人で?」

「ええ、二人で。」

「二人は嫌かな。婚約してるのに別の相手とそういう事はできないもの。」

 シャーロットはお出かけ自体を断るつもりで答えた。

「では、3人で。ローズも一緒ではどうでしょう。」

「ローズ?」

「ええ、ローズとなら、あなたは来てくれるでしょう?」

「ローズがいいというなら、それがいいわ。」

 シャーロットはサニーが急にいい人に思えてきた。

「では、ローズにもその話をして、ローズがいいという日に、一緒に出かけましょう。」

「嬉しい。ありがとう、サニー。」

 シャーロットの自然な笑顔に、サニーは目を細めた。シャーロットは浮かれていて、ローズとお出かけ、ローズとななしやでおもてなし、冬休みって素敵、と思っている。

「では、また、シャーロット。」

「またね、サニー、」

 サニーを見送って、機嫌よく手を振るシャーロットに、やって来たミカエルは訝しんだ表情をした。

「どうしたの、サニーと仲良くして。」

 ミカエルの機嫌が悪そうな声に、シャーロットはさっきのサニーの提案をそのまま伝えながら歩く。学食はテストが終わった解放感で学生達が騒いでいて、いつもよりも煩かった。シャーロットはミカエルとカップル席でランチを食べ始めた。

「ふうん?」

 ミカエルはシャーロットと向かい合って座って食べながら、シャーロットの顔を見つめる。不機嫌そうなミカエルの硬い表情は、シャーロットをどきどきさせた。怒っているとしか思えなかった。

「あのさ、シャーロット、」

「なあに、ミカエル。」

 シャーロットは食べながら返事をする。

「シャーロットって、僕の婚約者だよね?」

「そうよ、当たり前じゃない。」

 この前、改めて国王の前で確認したよね? 

「その割には、いろんな人とほいほい約束してない?」

「え?」

「冬の長期休暇中に、リュートの家族とご飯でしょ、ブルーノと今日は放課後会うんでしょ? エリックとも出かけるのかな? サニーとはご飯を食べに行くんでしょ?」

 昨日寮に帰ってから、シャーロットはミカエルには本のお礼の、これから行う約束だけを伝えてあった。あの日に済んでしまったことは詳しく伝えてはいない。

 シャーロットは目を見開いて、ミカエルを見た。

「どれも友達の範囲で出来ることしか、約束してないと思うけど?」

「そうなのかな?」

 シャーロットには、そういうつもりしかなかったのだけれど、ミカエルにはそう思われてはいない様子だった。

「気になるなら一緒に来る?」

 ミカエルに尋ねると、ミカエルは険しい表情になり、シャーロットの顔をまっすぐに見つめた。

「友達と恋人の境目って何だろうね、シャーロット。」

 シャーロットは首を傾げる。

「恋人って、友達以上の関係があるってこと?」

 それってつまり、友達だと出来ないような行為をするってことなのかな。シャーロットはミカエルの顔を見つめ返した。

「私はミカエルと恋人だと思うけど、友達だったりする?」

 シャーロットの答えに、ミカエルは黙り込んだ。

 私達の関係は実は恋人未満なのかもしれないなと、シャーロットは思った。ミチルの存在を消させないために、私達は恋人にはなれないのかもしれない。

 もしかすると、婚約しているだけで、ミカエルと婚約していない他の3人とは同じ立場なのかもしれないなとシャーロットは思った。だから、ミカエルはこんなことを聞くのかもしれない。

「私にはあなたが特別よ、ミカエル。」

 そう言って微笑むしか、今のシャーロットには出来なかった。

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