第4話 新たな挑戦者たち
「これで……終わりだ!!」
闇夜を貫く一条の光。
それは、弓使いのエルフたるルキウスの狙撃。
聖なる魔法を込めた一撃が、散々手こずらされた蝙蝠男の胴を穿ち、ようやく墜落させるに至る。
「ふう……手強かったな……」
「ああ⋯⋯」
疲れを隠しきれず座り込んだのは、東の国から武者修行にやってきた若き拳闘士ウォン。
その横では、勇者ジェイクもまた、剣を手にして肩で息をしている。
彼らは三人組の勇者パーティーだった。
強みは明白で、前衛たるジェイクとウォンの技量が極めて高く、ルキウスの狙撃も一級品。
更に3人それぞれが、聖剣の力や東洋に伝わる気の力、エルフの魔法によって、自力である程度の治癒もできる。
即ち、個々の能力の高さは疑いようがない。
その一方で、弱点もかなり明白だった。
遠距離要員が、事実上の狙撃要員たるルキウスしかいないのだ。
そのせいで、空中にいる敵に対しては不利なのが否めない。
動きがのろいならともかく、魔族も馬鹿ではない。
エルフ族の優れた感覚器官を用いた弓術すらも、相応の魔族なら回避したり、或いは弾いたりしてくるのだ。
一応、ルキウスの弓以外の遠距離攻撃として、拳闘士ウォンが気の力で掌から波動をぶっ放す技を持ってはいる。
しかし、攻撃範囲等を考えると強敵とのタイマン向きな上、連射は絶対にできない大技だ。
もっと低リスクかつ効率よく弾幕を放つ技とか、各人の必殺技を確実に撃ち込むための拘束技、もしくはそれが可能な人材―――要するに、細やかなサポートをしてくれる要素がほしい所である。
なんなら最悪、広範囲を一気に破壊するような大技でもいい。
とにかく、遠距離攻撃のバリエーション不足は悩みの種だった。
そして、もう一つ―――
「全く⋯⋯だから俺は、魔道士や賢者を仲間に迎え入れてから挑むべきだって言ったんだ!! それをお前が突っ走るから!!」
「ふざけるな!! 目の前で助けを求める奴をすぐに助けないで、何が勇者だ!!」
「無策で挑んでこうして苦労してるんだろ!?」
「やめないか二人とも!!」
ジェイクとウォンは、強く意識し合うライバル関係にある。
出会い、力比べ、共闘。
やがてルキウスが仲間となってからも繰り広げられてきた、人間ドラマの数々。
譲れぬ信念、男の意地。
だが、最近の彼らは少々行き過ぎて、ギスギスしがちだった。
前述のパーティーとしての弱点が露呈する場面が増えつつあり、それ故の苛立ちもあるのだろう。
「落ち着け二人とも。ともかく、一息ついたら前進再開だ。俺たちが倒さなきゃいけないのは―――あの吸血鬼なのだから」
ルキウスが向けた視線を残る二人も追う。
その先には、天高く聳え立つ虚ろの館の本城があった。
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「ふむ⋯⋯また仲違いしているな」
「そのようですわね」
今日の謁見の間には、円卓もなければ椅子もない。
その代わりに、巨大な水晶玉が宙に浮いていて、勇者たちを映し出している。
シャルロットとジークリンデは、2人で勇者たちの様子を観察しているのだ。
「しかし、ある意味丁度良いかもしれんな。あんな調子では、ミラベルとの相性は最悪となる」
ジークリンデが差し出した紅茶のカップを受け取りつつ、シャルロットは不敵に笑う。
「何せ、バスチアンやマクシムとの対決は3対1となるが、ミラベルは無数の触手を操る特性がある。即ち、3対ミラベルと触手の大群⋯⋯あんな調子では、怪獣化すら不要であろうよ」
「そうですわね。後はあの御三方が、無事にミラベルの下に辿り着ければ―――あら?」
離れの別棟からミラベルのステージとして作り上げた中庭&植物園に向かわんとする勇者たちの様子が変わり、ジークリンデが首を傾げた。
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「⋯⋯やはりそうだ。俺たちは、塔の上から見えた植物がたくさんあるエリアに誘導されている」
エルフのルキウスが地面に手を置いて発動した、探索魔法に基づいて得られた情報。
勇者一行は顔を見合わせる。
「この城、植物のバケモンが住んでるんだったな?」
拳闘士ウォンが顔を顰め、勇者ジェイクが頷きながら言った。
「みんな、聞いてくれ。これはたぶん敵の罠だ。なんとか本城に直接乗り込む手段を考えよう」
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「ふむ? 割と脳筋チームと噂に聞いていたが、なかなかどうして知恵が回るではないか。しかし―――」
にやりとシャルロットが笑いながら、指を鳴らす。
「そのくらいは織り込み済みだ」
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勇者たちの知らぬ所で、密かに城の構造が変わる。
そして、一行はやがてそれに気づいて立ち止まる。
「⋯⋯誘われているな」
「ああ」
エルフのルキウスと勇者ジェイクが頷き合う。
「本城突入前に消耗は避けたかったが―――仕方ないか」
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「くはは、そうだそうだ!! そのままミラベルに蹴散らされてしまえ!!」
「楽しそうですわね、お嬢様」
上機嫌な主に苦笑しながら、ジークリンデはなんとなく嫌な予感がしていた。
何故なら―――この主が上機嫌な時と言うのは、だいたい予想外の何かが起きるからだ。
「このまま予定通り、ミラベルと戦ってくださればよいのですが⋯⋯」
「何を言う? 普通に考えれば、本城に突入する為の封印か何かがミラベルを倒さねば手に入らんとか、そう言うふうに判断するものであろう?」
「⋯⋯」
ジークリンデは返事をしなかった。
なんの根拠もないのだが、ふと思ったのだ。
"あー⋯⋯やっぱりたぶんダメなやつですわね、これ"と。




