第85話 追跡
——ドォンッ!!
地面が砕ける。
「逃げろ!!」
レインの叫び。
次の瞬間。
黒い衝撃が地面を薙ぎ払った。
「っ!?」
ヒロ達が飛び退く。
遅れていたら巻き込まれていた。
「ほう」
ブエルが目を細める。
「避けるか」
杖が持ち上がる。
直後。
黒箱の紋様が赤黒く光った。
——ゴボッ。
「っ……!」
箱が脈打つ。
次の瞬間。
黒い肉が溢れ出した。
「なっ……!?」
マキが顔を引きつらせる。
肉塊。
いや。
獣型の魔物。
だが。
身体が崩れている。
溶けたみたいに。
それでも。
赤い目だけがギラついていた。
「処分個体か」
ブエルが淡々と呟く。
「まあいい」
「使え」
魔物達が一斉にこちらを見る。
「チッ!」
ヒロが風を払う。
——ヒュンッ!!
風刃。
一匹を切り裂く。
だが。
黒い肉が蠢いた。
「また再生したッス!?」
「核探せ!」
ヒロが叫ぶ。
だが。
一瞬。
違和感。
「……違う!」
ヒロが目を見開く。
「核が動いてる!」
「また動くネ!」
ミカが跳ぶ。
回転。
加速。
「スパイラルッ!!」
高速回転した爪が黒肉を削り飛ばす。
肉片が舞う。
その奥。
赤黒い核。
「そこ!」
ヒロの風刃。
核を貫く。
——ギャァァァァッ!!
魔物が崩れ落ちた。
だが。
数が多すぎる。
「右行くぞ!」
レインが叫ぶ。
「そっちは塞がる!」
「っ!?」
ヒロが反応する。
直後。
左側の地面が崩壊した。
「な……」
ヒロが息を呑む。
何で分かった。
まるで。
先に見えていたみたいに。
「走れ!」
レインが苛立ったように叫ぶ。
珍しかった。
こいつがここまで感情を出すのは。
ヒロ達は森を駆ける。
だが。
後ろから。
ズルリ。
ズルリ。
肉を引きずる音。
「気持ち悪いヨ……!」
ミカが顔をしかめる。
その時。
レインが突然止まった。
「下がれ」
「は?」
次の瞬間。
黒い魔物が飛びかかる。
だが。
レインは動かなかった。
半歩。
ズレる。
それだけ。
魔物の爪が空を切る。
そして。
レインの指先が核へ触れた。
——パキン。
乾いた音。
核が砕ける。
「……え?」
マキが固まる。
ヒロも目を見開いた。
今。
何をした。
レインは答えない。
ただ。
珍しく。
苛立っていた。
「……マズいな」
ぽつり。
その目は。
遠く。
霧の向こう。
魔王城を見ていた。
「レイン」
ヒロが呼ぶ。
「お前、一体——」
「今はまだ聞くな」
レインが遮る。
軽さのない声だった。
「……今はまだだ」




