表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
81/97

第81話 異変


 翌朝。


 


 


 村はいつも通りだった。


 


 


 


 畑を耕す者。


 


 


 


 店を開く者。


 


 


 


 子供達の笑い声。


 


 


 


 魔界とは思えないほど平和だった。


 


 


 


「……ほんと普通だな」


 


 


 


 ヒロが呟く。


 


 


 


「だから言ってるネ」


 


 


 


 ミカが串肉を(かじ)りながら言う。


 


 


 


「偏見よくないヨ」


 


 


 


「でも魔界だぞ?」


 


 


 


「魔界ネ」


 


 


 


「そこは否定しないのか……」


 


 


 


 ヒロが苦笑する。


 


 


 


 その時だった。


 


 


 


 村の入口側。


 


 


 


 慌ただしい声が響いた。


 


 


 


「ニノ!」


 


 


 


 ラナだった。


 


 


 


 顔色が悪い。


 


 


 


「ニノ見なかったかい!?」


 


 


 


「え?」


 


 


 


 ヒロが振り向く。


 


 


 


「朝から見当たらないんだよ!」


 


 


 


「また森行ったんじゃないッスか?」


 


 


 


 マキが言う。


 


 


 


「違うんだよ……!」


 


 


 


 ラナが唇を噛む。


 


 


 


「今朝、黒鎧が来てた」


 


 


 


 一瞬。


 


 


 


 空気が止まった。


 


 


 


「黒鎧?」


 


 


 


「城の兵士だよ」


 


 


 


 ラナが小さく答える。


 


 


 


「最近、何人か呼ばれてるんだ」


 


 


 


「呼ばれてる?」


 


 


 


 ヒロが眉をひそめる。


 


 


 


「東区画の手伝いだとか何とか……」


 


 


 


 ラナが目を伏せる。


 


 


 


「……戻ってこないんだ」


 


 


 


 空気が重くなる。


 


 


 


「……何なんだ、それ」


 


 


 


 ヒロが低く聞く。


 


 


 


 すると。


 


 


 


 近くにいた老人——ゼフが口を開いた。


 


 


 


「最近、城の様子がおかしい」


 


 


 


「ゼフ爺……」


 


 


 


 ラナが止めようとする。


 


 


 


 だが。


 


 


 


「前はこんなんじゃなかった」


 


 


 


「魔王様は無駄なこと嫌う方だった」


 


 


 


「……今は違うのか?」


 


 


 


「分からん」


 


 


 


 ゼフが首を振る。


 


 


 


「だが最近は、妙に人を集めてる」


 


 


 


「そんなに集めて、何する気なんスか……?」


 


 


 


 マキが不安そうに呟く。


 


 


 


 すると。


 


 


 


「違う」


 


 


 


 ラナが即座に否定した。


 


 


 


「魔王様はそんなこと望んでない」


 


 


 


 その声には迷いがなかった。


 


 


 


「昔、村が魔獣に襲われた時だって」


 


 


 


「助けてくれたのは魔王様だ」


 


 


 


「……」


 


 


 


 ヒロは黙っていた。


 


 


 


 魔王は倒すべき存在。


 


 


 


 ずっとそう思っていた。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 この村の空気は。


 


 


 


 とても()()()()には見えなかった。


 


 


 


 その時だった。


 


 


 


「いたーっ!!」


 


 


 


 遠くから声。


 


 


 


 全員が振り向く。


 


 


 


 森の方から。


 


 


 


 ニノが走ってきた。


 


 


 


「ニノ!」


 


 


 


 ラナが駆け寄る。


 


 


 


「どこ行ってたんだい!」


 


 


 


「ご、ごめん……」


 


 


 


 ニノが息を切らす。


 


 


 


「でも見ちゃったんだ」


 


 


 


「見た?」


 


 


 


 ニノの顔が青ざめていた。


 


 


 


「東の森で」


 


 


 


「黒いのがいっぱい運ばれてた」


 


 


 


「黒い?」


 


 


 


「……棺みたいだった」


 


 


 


 空気が凍る。


 


 


 


「ニノ」


 


 


 


 ラナが強く肩を掴む。


 


 


 


「それ以上言うんじゃない」


 


 


 


「でもっ——」


 


 


 


「いいから!」


 


 


 


 強い声だった。


 


 


 


 ニノが黙る。


 


 


 


 ヒロが見る。


 


 


 


 ラナの手は震えていた。


 


 


 


「……変だな」


 


 


 


 ぽつり。


 


 


 


 レインだった。


 


 


 


 壁にもたれながら。


 


 


 


 じっと村人達を見ている。


 


 


 


「何がだ?」


 


 


 


 ヒロが聞く。


 


 


 


 レインは少しだけ黙った。


 


 


 


「怖がってるのに」


 


 


 


「誰も魔王を嫌ってない」


 


 


 


「……」


 


 


 


 その言葉に。


 


 


 


 村人達が少しだけ目を伏せる。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 ゼフが静かに言った。


 


 


 


「魔王様は、こんなことする方じゃない」


 


 


 


「だから皆、分からんのだ」


 


 


 


 風が吹く。


 


 


 


 遠く。


 


 


 


 霧の向こう。


 


 


 


 巨大な城の影が見えていた。


 


 


 


 その時だった。


 


 


 


 エバが小さく呟く。


 


 


 


「……増えてる」


 


 


 


「え?」


 


 


 


 ヒロが振り向く。


 


 


 


 エバは城を見ていた。


 


 


 


 無表情のまま。


 


 


 


「嫌な感じ」


 


 


 


「どんどん増えてる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ