表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
79/97

第79話 馴染まない影


 夜。


 


 


 村の外れ。


 


 


 


 ヒロ達はラナに頼まれ、荷運びを手伝っていた。


 


 


 


「悪いねぇ」


 


 


 


 ラナが笑う。


 


 


 


「最近、森の魔物が増えててね」


 


 


 


「村の連中だけじゃ手が足りないんだよ」


 


 


 


「まあ世話になってるしな」


 


 


 


 ヒロが木箱を持ち上げる。


 


 


 


「ヒロさん、無茶しないでくださいッスよ?」


 


 


 


「もうだいぶ回復したって」


 


 


 


「信用ならないッス」


 


 


 


 マキが即答する。


 


 


 


 その横で。


 


 


 


 ミカは軽々と荷物を担いでいた。


 


 


 


「これくらい軽いネ」


 


 


 


「比較対象がおかしいんだよ……」


 


 


 


 ヒロが呆れる。


 


 


 


「じゃ、行くか」


 


 


 


 荷物を運び始めようとした時だった。


 


 


 


「俺も手伝うよ」


 


 


 


 軽い声。


 


 


 


 振り向く。


 


 


 


 あの旅人だった。


 


 


 


 昼間と同じ。


 


 


 


 軽い笑み。


 


 


 


「……またアンタか」


 


 


 


「暇だったし」


 


 


 


 旅人が肩をすくめる。


 


 


 


「別にいいだろ?」


 


 


 


「まあ、いいけど……」


 


 


 


 ヒロは微妙な顔をする。


 


 


 


 どうにも調子が狂う。


 


 


 


「へぇ」


 


 


 


 旅人がヒロを見る。


 


 


 


()()ってもっと弱いかと思ってた」


 


 


 


「失礼な奴だな」


 


 


 


「褒めてんだよ」


 


 


 


 旅人は肩をすくめる。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 視線はヒロではなく。


 


 


 


 ミカへ向いていた。


 


 


 


「アンタ」


 


 


 


「面白い動きしてたな」


 


 


 


「ん?」


 


 


 


 ミカが目を細める。


 


 


 


「昨日見てたヨ?」


 


 


 


「まあな」


 


 


 


 旅人が笑う。


 


 


 


「普通、あそこまで回したら腕ごと壊れる」


 


 


 


「でもアンタ、止めなかった」


 


 


 


「止まれなかったネ」


 


 


 


 ミカが笑う。


 


 


 


「楽しかったから」


 


 


 


 一瞬。


 


 


 


 旅人が黙る。


 


 


 


 まるで。


 


 


 


 理解できないものを見るみたいに。


 


 


 


「……変わってるな」


 


 


 


「アンタに言われたくないヨ」


 


 


 


 ミカが即答した。


 


 


 


 その瞬間だった。


 


 


 


 ——ガサッ。


 


 


 


 森が揺れる。


 


 


 


「っ」


 


 


 


 ヒロが振り向く。


 


 


 


 気配。


 


 


 


 複数。


 


 


 


「魔物ッス!」


 


 


 


 マキが叫ぶ。


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 森の奥から獣型の魔物が飛び出した。


 


 


 


 牙。


 


 


 


 赤い目。


 


 


 


 一直線に村へ突っ込んでくる。


 


 


 


「チッ」


 


 


 


 ヒロが前へ出る。


 


 


 


 風。


 


 


 


 流れ。


 


 


 


 見える。


 


 


 


 手を払う。


 


 


 


 ——ヒュンッ!!


 


 


 


 風刃。


 


 


 


 先頭の魔物が切り裂かれる。


 


 


 


「ミカ!」


 


 


 


「分かってるネ!」


 


 


 


 ミカが跳ぶ。


 


 


 


 回転。


 


 


 


 爪撃。


 


 


 


 魔物をまとめて吹き飛ばす。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 まだ多い。


 


 


 


「右からも来るッス!」


 


 


 


 マキの声。


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 一匹がニノへ向かった。


 


 


 


「っ……!」


 


 


 


 ニノが固まる。


 


 


 


 距離が遠い。


 


 


 


 間に合わない。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 ——ドッ。


 


 


 


 魔物が吹き飛んだ。


 


 


 


「……え?」


 


 


 


 ヒロが目を見開く。


 


 


 


 旅人だった。


 


 


 


 いつ動いたのか分からない。


 


 


 


 ただ。


 


 


 


 最短だった。


 


 


 


 迷いがない。


 


 


 


「下がってろ」


 


 


 


 旅人が淡々と言う。


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 さらに二匹。


 


 


 


 飛びかかる。


 


 


 


 旅人は振り向きもしなかった。


 


 


 


 半歩。


 


 


 


 ずれる。


 


 


 


 それだけで。


 


 


 


 魔物同士が激突した。


 


 


 


「……何だ、今の」


 


 


 


 ヒロが目を細める。


 


 


 


 戦い方が妙だった。


 


 


 


 上手いとかじゃない。


 


 


 


 違う。


 


 


 


 何もかも。


 


 


 


 無駄がなさすぎる。


 


 


 


「アンタ……」


 


 


 


 だが。


 


 


 


 旅人は気にした様子もなく魔物を蹴り飛ばした。


 


 


 


「ほら」


 


 


 


「ぼーっとしてると死ぬぞ」


 


 


 


「っ!」


 


 


 


 ヒロが反応する。


 


 


 


 風を払う。


 


 


 


 風刃。


 


 


 


 ミカがそこへ飛び込む。


 


 


 


「スパイラル!」


 


 


 


 回転。


 


 


 


 爪が魔物を切り裂く。


 


 


 


 血が舞う。


 


 


 


 数秒後。


 


 


 


 最後の一匹が倒れた。


 


 


 


 静寂。


 


 


 


「はぁ……」


 


 


 


 マキが息を吐く。


 


 


 


「最近ほんと多いネ」


 


 


 


 ミカが爪を払う。


 


 


 


 その横で。


 


 


 


 旅人は倒れた魔物を見下ろしていた。


 


 


 


「……」


 


 


 


 そして。


 


 


 


 ぽつりと呟く。


 


 


 


「……何で、今」


 


 


 


「ん?」


 


 


 


 ヒロが振り向く。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 旅人はいつもの笑みに戻っていた。


 


 


 


「いや?」


 


 


 


「別に」


 


 


 


 その時。


 


 


 


 エバがじっと旅人を見る。


 


 


 


 無表情のまま。


 


 


 


「……嫌」


 


 


 


 旅人の笑みが。


 


 


 


 一瞬だけ止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ