第71話 狙い
霧の森。
再突入。
「前より空気軽いッスね」
マキが周囲を見渡す。
「雑魚減ったネ」
ミカが答える。
フォカロール。
あの存在が、この周辺の空気すら変えている。
「……来る」
ユナが小さく言った。
次の瞬間。
——ヒュン
「っ!」
ヒロが動く。
避ける。
背後の岩が斬れる。
「見えたッスか!?」
「……いや」
ヒロが眉をひそめる。
「来る感じがした」
霧の奥。
ローブの影。
フォカロール。
空気が歪む。
その瞬間。
風が集中する。
狙いは——
「ユナ!」
ヒロが叫ぶ。
——バシュッ!!
衝撃。
フィールドが軋む。
「っ……!」
ユナが顔をしかめる。
「まずいネ……!」
ミカが表情を変える。
「ユナから狙ってるヨ!」
マキが息を呑む。
フォカロールの視線。
完全に、ユナへ固定されていた。
「ユナ、下がれ!」
「でも——」
「いいから!」
その瞬間。
——ヒュン
連続。
複数の風刃。
フィールドへ直撃。
バキッ。
嫌な音。
「……っ!」
ユナの膝が揺れる。
「ユナ!」
ヒロが前に出る。
手を払う。
だが。
何も出ない。
「……くそっ」
もう一度。
振る。
出ない。
「ヒロ!」
ミカが叫ぶ。
フォカロール。
次はミカへ狙いを変えている。
風が集まる。
「っ……!」
ミカが踏み込む。
「スパイラルドライブ!」
回転。
加速。
だが。
——ヒュン
風刃。
回転で逸らす。
それでも。
「ぐっ……!」
腕が裂ける。
血が舞う。
勢いが落ちる。
「ミカ!」
ヒロが叫ぶ。
風。
出ろ。
出ろ。
だが——出ない。
(なんでだよ……!)
焦る。
その瞬間。
フォカロールの視線。
再びユナへ。
「しまっ——」
風が走る。
フィールド。
今度こそ砕ける。
そう思った瞬間。
ユナの姿が視界に入る。
ヒロの身体が、勝手に動いた。
考える前に。
手を払う。
——ヒュォッ!!
風。
今までより明確な刃。
フォカロールの風と衝突。
相殺。
「……っ!?」
フォカロールの目が見開かれる。
「またネ……!」
ミカが笑う。
血を流しながら。
それでも止まらない。
「ヒロ!」
「……ああ!」
ヒロが踏み込む。
フォカロールが初めて後退した。
ほんの少しだけ。
戦況が——変わり始めていた。




