第66話 届かない風
——ヒュン
見えない刃が、空気を裂く。
フィールドにぶつかる衝撃。
だが——外では。
また一人、倒れる。
「……クソ」
ヒロが歯を食いしばる。
「ユナ」
「うん」
「エバを頼む」
「フィールド、維持できるか」
「……やる」
ユナが手をかざす。
透明な壁が、さらに強く張られる。
その中で。
エバがじっと外を見ている。
「離れるな」
「……問題ない」
短く答える。
「ミカ」
「いけるネ」
即答。
爪を軽く鳴らす。
「マキ」
「……いけるッス」
少しだけ間を置いて。
頷く。
「……よし」
ヒロが前に出る。
(やるしかねえ)
風が集まる。
次が来る。
「ミカ、頼む」
「任せるネ」
踏み込む。
回転。
加速。
空気を巻き込む。
「スパイラルドライブ!」
突っ込む。
一直線。
その瞬間——
——ヒュン
風が走る。
ミカの体に直撃。
「っ——!」
だが。
回転が、衝撃を逃がす。
真っ二つにはならない。
それでも。
弾かれる。
地面を滑る。
「……効くネ……!」
息を吐く。
ダメージはある。
だが——
立つ。
「通るッス……!」
マキが思わず声を上げる。
(……でも)
(このままでは、まずいッスね……)
(ここまでやってきたのに——)
(ここでやり直しは、もったいないッス)
一瞬、視線が揺れる。
(先輩たちに怒られるかもだけど……)
(ここは——)
その時。
風が——集まる。
狙いは。
マキ。
「——マキ!」
ヒロが叫ぶ。
間に合わない。
——ヒュン
来る。
「……っ」
マキが固まる。
その瞬間。
ヒロが飛び込む。
両手を広げる。
大の字。
盾になる。
——直撃。
「ぐっ……!」
衝撃。
全身を貫く。
だが——
切れない。
血は流れる。
だが、両断はされない。
「……は……?」
マキが目を見開く。
「なんで……」
震える声。
目の前。
ヒロの背中。
ボロボロなのに——
立っている。
「……大丈夫だ」
振り向かずに言う。
「……まだ立てる」
「……っ」
マキの心臓が跳ねる。
「……おかしいネ」
ミカが呟く。
「今の、本来なら——」
首を振る。
その時。
風の主が、わずかに揺らぐ。
ヒロの血が地面に落ちる。
だが——倒れない。
「……そんなバカな」
低く、漏れる声。
「何故、両断できない……?」
一瞬の隙。
「……今ネ」
ミカが踏み込む。
再び回転。
加速。
「スパイラルドライブ!」
一直線。
直撃。
深く。
抉る。
風が乱れる。
距離を取る。
「……一旦引くネ」
「ヒロ、動ける?」
「……なんとか、な」
「撤退する」
ヒロが判断する。
誰も反対しない。
この相手は——
まだ、勝てない。




