第65話 見えない刃
霧の森、深部。
ここまで来る間——
戦闘は、順調だった。
「レベル、また上がったネ」
ミカが軽く手を振る。
「さっきの連携、良かった」
ユナが小さく言う。
「まあな」
ヒロも頷く。
敵は強くなっている。
だが——
対応できている。
「このままいけば——」
マキが言いかけた、その時。
——ズバッ
「……え?」
音だけが、先に届いた。
次の瞬間。
少し前を歩いていた冒険者が——
真っ二つになった。
「……」
一瞬、誰も理解できない。
血が遅れて噴き出す。
崩れる。
「なっ……!」
マキが息を呑む。
「今の……何も……」
見えなかった。
「……来る」
ミカの声。
低い。
霧の中。
何かが、いる。
——ヒュン
空気が、裂ける音。
横にいた別の冒険者。
避ける間もなく——
胴が、ずれる。
遅れて、落ちる。
「っ……!」
ヒロが歯を食いしばる。
「見えない……!」
「見えないんじゃないネ」
ミカが言う。
「速すぎるだけネ」
その時。
「……まずいッス」
マキの声。
いつもより低い。
「アイツ……」
視線は、霧の奥。
「格が違うッス」
わずかに、息が乱れている。
霧が揺れる。
ゆっくりと——影が現れる。
人影。
ローブ。
その周囲。
空気が、歪んでいる。
「……風か」
ヒロが呟く。
「無詠唱ネ」
ミカの目が細くなる。
「……あれ、ヤバいやつッス」
マキが断言する。
次の瞬間。
——ヒュン
『フィールド!』
ユナが即座に展開する。
透明な壁。
直後——
衝撃。
だが。
切れない。
止まる。
「……防げる」
ヒロが確認する。
「でも——」
ミカが前を見る。
フィールドの外。
冒険者たち。
逃げる。
だが——
間に合わない。
——ヒュン
また一人。
真っ二つ。
「……当たれば終わりネ」
ミカが静かに言う。
「……クソッ……!」
ヒロが拳を握る。
そいつは、動かない。
ただ——
立っているだけ。
それだけで。
周囲が、切り裂かれていく。
「……次は」
ヒロたちを見る。
風が——集まる。
目に見えない刃。
それが、確実にこちらへ向いていた。




