第63話 それぞれの選択
拠点。
少しだけ、空気が落ち着いた頃。
「ヒロさん!」
元気な声。
マキが手を振りながら近づいてくる。
「……あれ?」
ヒロが首をかしげる。
「ユキたちに合流したんじゃなかったのか」
「それがッスね」
マキが軽く肩をすくめる。
「先輩にあっちサポートしてやれって言われたッス」
「……あいつらが?」
「はいッス」
少しだけ苦笑する。
「なんか先輩、縛りプレイとか好きなんスよね」
「わざときつい状況にしたいみたいな」
「……迷惑な趣味だな」
ヒロが呆れる。
「でも、その分強いッスよ」
「知ってる」
短く返す。
少し間。
「……なぁ」
ヒロが口を開く。
「さっきの話」
「元の世界に還れるかも、ってやつ」
「……」
ユナが少しだけ視線を逸らす。
「そうかもしれない、ってだけ」
「でも可能性はある」
「……そうか」
ヒロが軽く頷く。
「じゃあ、やること決まったな」
「強くなって、記憶戻して、帰る」
「シンプルだ」
「……うん」
ユナが小さく頷く。
その横で。
「……」
ミカが、じっとヒロを見る。
「……ヤダ」
ぽつり。
「……え?」
ヒロが振り向く。
「……あ」
ミカ自身が、一番驚いた顔をする。
「……いや、違うネ」
すぐに笑顔を作る。
「何でもないネ!」
「それよりミー、新しい必殺技思いついたネ!」
「は?」
「武器買いに行くヨ!」
くるりと背を向ける。
少し早足。
「……おい」
ヒロが呼ぶ。
だがミカは止まらない。
「……なんだったんだ」
ヒロが呟く。
「……」
ユナは何も言わない。
ただ少しだけ。
ミカの背中を見る。
武器屋。
中に入る。
「これネ」
ミカが手に取る。
金属製の爪。
指に装着するタイプ。
鋭く、硬い。
「近接強化ネ」
軽く振る。
「バッキュンだけじゃ足りない時もあるからネ」
笑う。
だが——
(……なんでネ)
胸の奥。
さっきの言葉が、残っている。
『元の世界に還る』
(それは……いいことのはずネ)
(なのに——)
少しだけ。
引っかかる。
分からない感覚。
「……ま、いいネ」
軽く振り払う。
「強くなる方が先ネ」
爪を装着する。
その目は、いつも通り。
——のはずだった。




