第61話 後の楽しみ
衝撃が、続く。
ヒロの腕が軋む。
(……押される)
モラクスの拳。
止めているはずなのに——
止まりきらない。
「どうした」
モラクスが笑う。
「さっきの威勢は」
「……っ」
ヒロが踏ん張る。
だが。
後ろへ押される。
「ヒロ!」
ユナの声。
フィールドの内側。
苦しそうな表情。
「……限界ネ」
ミカが呟く。
「長くはもたないヨ」
「撤退だ」
ヒロが即断する。
「マキ、装置まで戻れるか!」
「ギリギリっス!」
「全員、下がる!」
「逃がすと思うか?」
モラクスが一歩踏み出す。
空気がさらに重くなる。
(間に合わねえ……!)
ヒロが歯を食いしばる。
だが――
モラクスは追わない。
「……」
ゆっくりと首を傾ける。
ヒロを見る。
ミカを見る。
そして——全員を。
「……やめだ」
ぽつりと呟く。
「は?」
ヒロが眉をひそめる。
「今、壊すには惜しい」
モラクスが笑う。
「面白くなってきたところだ」
一歩、下がる。
「ここで終わらせるのは、もったいない」
「……」
ヒロは無言で睨む。
「強くなれ」
モラクスが言う。
「今のままでは、遊びにもならん」
口元が歪む。
「次は——」
「もっと楽しませろ」
圧が、わずかに緩む。
「……今だ!」
ヒロが叫ぶ。
「戻るぞ!」
全員が動く。
重さが消えた一瞬。
走る。
装置へ。
光。
視界が歪む。
——消える。
その場に残るのは。
モラクス、一人。
「……はは」
低く笑う。
「いい」
「実にいい」
拳を握る。
「次が楽しみだ」
その目は。
完全に——獲物を見ていた。




