第60話 届かない壁
重圧の中。
ヒロとモラクスの間合いがぶつかる。
「来い」
モラクスが笑う。
「——なら」
ヒロが踏み込もうとした、その瞬間。
「ヒロ、少し下がるネ」
ミカが前に出る。
「ミカ?」
「試すだけネ」
軽く笑う。
そのまま、手をかざす。
『バッキュン!』
光線。
一直線にモラクスへ。
——直撃。
鎧に火花が散る。
「……当たるな」
モラクスが呟く。
「なら——」
「もう一発ネ」
『バッキュン!』
連射。
今度は顔面へ。
モラクスが、わずかに頭をずらす。
かすめる。
「速いな」
楽しそうに言う。
「でも——浅いネ?」
ミカが返す。
「なら」
踏み込む。
距離を詰める。
「……っ」
ヒロが一瞬だけ目を見開く。
(前に出るのか……!)
ミカの拳。
振り抜く。
当たる。
確かに。
だが——
「軽い」
モラクスが言う。
同時に。
手首を掴まれる。
「……っ」
一瞬。
動きが止まる。
「悪くない」
「だが浅いな」
次の瞬間。
——叩きつけられる。
地面へ。
轟音。
「ミカ!」
ヒロが叫ぶ。
煙。
その中から。
「……いったネ……」
ミカが起き上がる。
だが——
姿勢が、わずかに崩れている。
「まだやるか?」
モラクスが楽しそうに問う。
「当然ネ」
ミカが構える。
だが——
(間に合わない)
ヒロの直感。
モラクスが踏み込む。
拳。
一直線にミカへ。
「——させるか!」
ヒロが割り込む。
剣を差し込む。
受ける。
——衝撃。
腕が軋む。
だが、止める。
「ほう」
モラクスが目を細める。
「庇うか」
「当たり前だ」
ヒロが睨み返す。
「大事な仲間だからな」
一瞬。
空気が、わずかに揺れる。
「ふふっ、命懸けだな」
モラクスが楽しそうに笑う。
「そうでなくては!」
さらに力を込める。
ヒロの体が押される。
足が地面を削る。
(重い……!)
だが——
離さない。
「ヒロ!」
ユナの声。
フィールドの中から。
出られない。
「……大丈夫ネ」
ミカが立ち上がる。
「まだやれる」
だが。
分かっている。
これは——
通じていない。
「ははっ!」
モラクスが笑う。
「いいぞ」
「全員で来い」
「それでも——届かん」
断言。
ヒロは歯を食いしばる。
(……分かってる)
(このままじゃ勝てねえ)
それでも。
ここで止まるわけにはいかない。
拳が来る。
ヒロが迎え撃つ。
戦いは——
さらに激しさを増していく。




