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第58話 モラクス

 空気が——変わる。


 


 モラクスが一歩、踏み出した瞬間。


 


 


 ——重い。


 


 


「……っ」


 


 


 マキの足が止まる。


 


 


 


「なに……これ……」


 


 


 


 ユナの声も鈍い。


 


 


 


 体が、沈む。


 


 


 


 動こうとしても——遅れる。


 


 


 


 


「……圧か」


 


 


 


 ジュリアスが歯を食いしばる。


 


 


 


 


「動きが……削られる……!」


 


 


 


 


 ドロスの詠唱も明らかに遅い。


 


 


 


 


 シャルルの回復も追いつかない。


 


 


 


 


 


「はは」


 


 


 


 モラクスが笑う。


 


 


 


 


「どうした」


 


 


 


 


「さっきまでの勢いは」


 


 


 


 


 


「くっ……!」


 


 


 


 マキが踏み込もうとする。


 


 


 


 だが——遅い。


 


 


 


 明らかに。


 


 


 


 


「……厄介ネ」


 


 


 


 ミカが目を細める。


 


 


 


 


「体が鈍るヨ」


 


 


 


 


 


「——でも」


 


 


 


 


 ヒロは違った。


 


 


 


 


「……普通に動けるな」


 


 


 


 


 手を握る。


 


 


 


 


 重さはある。


 


 


 


 だが——止まらない。


 


 


 


 


(圧は感じる)


 


 


 


(けど……それだけだ)


 


 


 


 


「……待て」







 


 ジュリアスが目を細める。


 









「お前、なぜその状態で動ける?」


 


 




 


 


 


「さあな」


 


 


 


 


 ヒロは軽く肩をすくめる。


 


 


 


 


 


「相性でもいいんじゃねえか?」


 


 


 


 


 


 だが——


 


 


 


 


 自分でも分かっていた。


 


 


 


 


 これは。


 


 


 


 


 ()()()()()()


 


 


 


 


 


「ほう?」


 


 


 


 


 モラクスの視線が、ヒロに向く。


 


 


 


 


 


「一人だけ違うか」


 


 


 


 


 


 口元が歪む。


 


 


 


 


 


「いい」


 


 


 


 


 


「実にいい」


 


 


 


 


 


「そういう奴を待っていた」


 


 


 


 


 


 


「来い」


 


 


 


 


 


 手招きする。


 


 


 


 


 


「相手してやる」


 


 


 


 


 


 


「……上等だ」


 


 


 


 


 


 ヒロが一歩出る。


 


 


 


 


 


 


「待て!」


 


 


 


 


 


 ジュリアスが制止する。


 


 


 


 


 


「単独は——」


 


 


 


 


 


 


「関係ねえ」


 


 


 


 


 


 ヒロは前を見る。


 


 


 


 


 


 


「どうせまとめて来る気だろ」


 


 


 


 


 


 


「違うか?」


 


 


 


 


 


 


「ははっ」


 


 


 


 


 


 モラクスが笑う。


 


 


 


 


 


 


「理解が早いな」


 


 


 


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 


 


 踏み込む。


 


 


 


 


 


 


 速い。


 


 


 


 


 


 


 だが——


 


 


 


 


 


 


(見える)


 


 


 


 


 


 


 ヒロの視線が追う。


 


 


 


 


 


 


 拳。


 


 


 


 


 


 


 振り抜かれる。


 


 


 


 


 


 


 ヒロが身を引く。


 


 


 


 


 


 


 ——ギリギリで回避。


 


 


 


 


 


 


「……ほう」


 


 


 


 


 


 モラクスが目を細める。


 


 


 


 


 


 


「避けるか」


 


 


 


 


 


 


「ますますいい」


 


 


 


 


 


 


 笑みが深くなる。


 


 


 


 


 


 


「楽しくなってきた」


 


 


 


 


 


 


 


 一方。


 


 


 


 


 


 


 他のメンバー。


 


 


 


 


 


 


 まだ動きが鈍い。


 


 


 


 


 


 


 圧に縛られている。


 


 


 


 


 


 


 


「……ヒロ……」


 


 


 


 


 


 


 ユナが小さく呟く。


 


 


 


 


 


 


 


(あれ、普通じゃない)


 


 


 


 


 


 


 


 気づき始めていた。


 


 


 


 


 


 


 


 異常なのは——


 


 


 


 


 


 


 


 敵だけじゃない。


 


 


 


 


 


 


 


 ヒロもまた。


 


 


 


 


 


 


 


 ()()だった。

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