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第57話 遊戯

 霧が、割れる。


 


 重い足音。


 


 


 姿が、現れる。


 


 


 大柄な体。


 


 


 鎧に包まれた(からだ)


 


 


 顔は——


 


 


 人とも、獣ともつかない。


 


 


 牛のような輪郭。


 


 


 だが、その目は。


 


 


 ただの獣ではない、知性を持った目だった。


 


挿絵(By みてみん)


 


「……はは」


 


 


 


 低い笑い声。


 


 


 


「いいな」


 


 


 


 一歩、前に出る。


 


 


 


 地面が、わずかに沈む。


 


 


 


 


「まだ残っていたか」


 


 


 


 ジュリアスが剣を構える。


 


 


 


 


「残ってる?」


 


 


 


 それに反応する。


 


 


 


 


「違うな」


 


 


 


 


 ゆっくりと首を振る。


 


 


 


 


「増えた、だ」


 


 


 


 


 視線が——ヒロたちへ向く。


 


 


 


「いいな……」


 


 


 


 楽しそうに呟く。


 


 


 


「やっと、まともに遊べそうだ」


 


 


 


 一歩、踏み出す。


 


 


 


「第4位階(いかい)——モラクス」


 


 


 


「壊れるまで付き合え」


 


 


 


(……位階(いかい)?)


 


 


 


「……」


 


 


 


 ヒロは無言で見返す。


 


 


 


(こいつが……)


 


 


 


 分かる。


 


 


 


 これまでとは違う。


 


 


 


 圧が。


 


 


 


 質が。


 


 


 


 


「いい……」


 


 


 


 男は、満足そうに笑う。


 


 


 


「そういう目だ」


 


 


 


 腕を軽く振る。


 


 


 


 その動きだけで——


 


 


 


 風が鳴る。


 


 


 


「やっと当たりを引いた」


 


 


 


「……下がれ」


 


 


 


 ジュリアスが低く言う。


 


 


 


「ここは俺たちが——」


 


 


 


「いや」


 


 


 


 男が(さえぎ)る。


 


 


 


「全員来い」


 


 


 


「その方が壊し甲斐がある」


 


 


 


 口元が歪む。


 


 


 


「まとめて潰してやる」


 


 


 


「……っ」


 


 


 


 マキが息を呑む。


 


 


 


「来るぞ!」


 


 


 


 ジュリアスが叫ぶ。


 


 


 


 ——次の瞬間。


 


 


 


 消えた。


 


 


 


「な——」


 


 


 


 視界から消える。


 


 


 


 次の瞬間には——


 


 


 


 ダビデの前。


 


 


 


「遅い」


 


 


 


 (こぶし)


 


 


 


 振り抜かれる。


 


 


 


 ——轟音。


 


 


 


 盾が歪む。


 


 


 


 ダビデの体が後ろへ弾かれる。


 


 


 


「ぐっ……!」


 


 


 


「いい盾だ」


 


 


 


 楽しそうに言う。


 


 


 


「だが——軽いな」


 


 


 


 さらに一歩。


 


 


 


 踏み込む。


 


 


 


「させるか!」


 


 


 


 ジュリアスが斬りかかる。


 


 


 


 剣。


 


 


 


 確実に当たる軌道。


 


 


 


 ——だが。


 


 


 


 止められる。


 


 


 


 素手で。


 


 


 


「ほう」


 


 


 


 男が目を細める。


 


 


 


「悪くない」


 


 


 


 軽く弾く。


 


 


 


 ジュリアスの体が流れる。


 


 


 


 


「ドロス!」


 


 


 


「分かってる!」


 


 


 


 魔法が放たれる。


 


 


 


 直撃。


 


 


 


 ()ぜる。


 


 


 


 


 煙。


 


 


 


 


「……どうだ」


 


 


 


 


「どう、だと?」


 


 


 


 


 中から、声。


 


 


 


 


 無傷。


 


 


 


 


「今のは、効いたのか?」


 


 


 


 


 笑っている。


 


 


 


 


「試してみろ」


 


 


 


 


 楽しそうに。


 


 


 


 


「何度でもな」


 


 


 


 


「……ヒロ」


 


 


 


 ユナの声。


 


 


 


「分かってる」


 


 


 


 ヒロは構える。


 


 


 


(強い、なんてもんじゃねえ)


 


 


 


「……うわ」


 


 


 


 小さく、マキが漏らす。


 


 


 


「マジっスか……」


 


 


 


 引きつった声。


 


 


 


 だが、目は逸らさない。


 


 


 


「第4位階って……」


 


 


 


 乾いた笑いが漏れる。


 


 


 


「なんでそんなのがここにいるッスか……」


 


 


 


 わずかに、息を吐く。


 


 


 


「どうりで、強いはずっス」


 


 


 


(……位階って、そんなにか?)


 


 


 


 ヒロの中で疑問が浮かぶ。


 


 


 


 だが——


 


 


 


(……やるしかねえ)


 


 


 


 男は笑う。


 


 


 


「その目だ」


 


 


 


「そうでなくてはな」


 


 


 


 ゆっくりと。


 


 


 


 拳を握る。


 


 


 


 そして——


 


 


 


「楽しませろ」


 


 


 


 戦いが、始まる。

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