第51話 広がる道
拠点。
研究者の装置が、静かに光っている。
「……こんなもんでいいだろう」
男が手を止めた。
「完成したのか?」
ヒロが腕を組む。
「完全ではない」
研究者は首を振る。
「だが、接続はできる」
「固定点へ戻ることが可能だ」
「……誰でも使えるのか」
「使える」
研究者は即答した。
「ただし——」
「向こうで生き残れるかは別だ」
「……だろうな」
ヒロは小さく息を吐く。
そのとき。
「ヒロさん!」
マキが前に出る。
「報告していいッスか?」
「みんなに」
「……好きにしろ」
「危険だってことはちゃんと伝えるんだぞ」
「了解ッス!」
マキは通信を開く。
「マキです!」
「霧の森、行けるッス!」
「ルートあるッス!」
ざわめきが返ってくる。
「……本当か?」
「マジッス!」
「即死トラップあるッスけど——」
「回避できるッス!」
「魔物も強いッス!」
「でも、突破は可能ッス!」
沈黙。
「……ありがとう」
低い声。
「俺たちは……諦めてた」
「何人もやられて……もう無理だと思ってた」
「でも——」
「これで、やっと……」
一瞬、言葉が詰まる。
「敵討ちができる」
空気が変わる。
ヒロが口を開く。
「……おい」
「大丈夫なのか?」
少しの間。
そして——
「大丈夫じゃねえよ」
苦笑混じりの声。
「でもな」
「今までやられてばっかで」
「何人仲間が死んだと思ってる」
一拍。
「……だから行く」
「止めても無駄だぜ?」
「それに——」
「俺たちは、あんたらより経験もレベルも上だ」
「安心しな」
「……」
ヒロは何も言わない。
(止められないな、これ)
「……分かった」
「無理はすんな」
「それはお互い様だ」
通信がざわつく。
その中で——
「おい……あれ」
別の声。
「ジュリアスじゃねえか」
「ワイルドカードの……!」
空気が変わる。
少し離れた場所。
四人のパーティ。
先頭に立つ男。
静かに前を見ている。
ヒロたちの方へ、軽く視線を向ける。
それだけで——十分だった。
小さく、頷く。
「行くぞ」
短く言う。
「ダビデ」
「ドロス」
「シャルル」
「了解」
「いつでも」
「任せて」
四人が、迷いなく進む。
霧の中へ。
「……行ったネ」
ミカが呟く。
「……ああ」
ヒロも小さく頷く。
「……ヒロ」
ユナが袖を引く。
「私たちは?」
「一旦休む」
ヒロは即答した。
「今行っても無駄だ」
「……うん」
ユナは頷く。
霧の向こう。
人の気配が消えていく。
(さて……)
ヒロは静かに目を細めた。




