第49話 接続点
霧の中。
静寂が戻る。
「……終わった、のか」
マキがぽつりと呟く。
「……ああ」
ヒロは短く答える。
剣を下ろす。
(……今の)
頭の中に残っている。
距離が、消えた感覚。
(なんだ、あれ)
分からない。
だが——
「ヒロ」
ユナの声。
「……大丈夫?」
「……ああ」
少しだけ間があった。
「たぶんな」
「たぶんって何ネ」
ミカが苦笑する。
「さっきの、見えてなかったヨ?」
「……だろうな」
ヒロはそれ以上言わない。
言えない。
「……でも」
マキが前を見る。
「先、開けてるッスね」
霧の奥。
わずかに、空間が広がっている。
「……行くか」
ヒロが歩き出す。
霧を抜ける。
そこは——
小さく開けた場所だった。
中央。
細い柱のようなもの。
淡く光っている。
「……なんだこれ」
ヒロが足を止める。
周囲には何もない。
ただ、それだけがある。
「魔物……いないネ」
ミカが警戒しながら言う。
「……変だな」
ヒロはゆっくり近づく。
「ヒロ、待って」
ユナが止める。
「……危ないかも」
「分かってる」
だが。
ヒロは足を止めない。
(……こういうのは)
(触らないと分からない)
柱の前に立つ。
一瞬だけ、迷って——
手を伸ばす。
触れる。
——ビリッ
「……っ」
一瞬。
視界が揺れる。
知らない景色。
一瞬だけ、映る。
別の場所。
光。
そして——消える。
「……今の」
ヒロが手を引く。
何も起きていない。
だが——
(……違う)
何かが繋がった感覚。
「ヒロ?」
「……大丈夫だ」
言いながらも、もう一度柱を見る。
危険な感じはしない。
少なくとも、さっきのケルベロスよりは。
「たぶん、危険なもんじゃない」
「たぶん多いネ……」
ミカが呆れる。
そのとき。
足元。
小さな光。
「……ん?」
ヒロがしゃがむ。
そこにあったのは——
小さな結晶。
淡く光っている。
「……これ、さっきなかったよな」
「うん」
ユナが頷く。
「ヒロが触った後……出た」
「……だよな」
ヒロはそれを拾う。
軽い。
だが——
さっきの柱と、同じ感覚。
(これ……関係あるな)
「持ってくか」
「それ、大丈夫ッスか?」
「分からん」
「でも、使えそうだ」
ヒロは立ち上がる。
もう一度、柱を見る。
変わらず、そこにある。
(動かない、か)
持ち帰るものじゃない。
——場所だ。
「……戻るぞ」
「了解ネ」
「うん」
「了解ッス!」
霧の外へ向かう。
背後。
光の柱が、静かに残る。
変わらず。
ただそこにあった。




