第48話 限界線
霧の中。
唸り声が、二つ。
「……嘘だろ」
ヒロが低く呟く。
視界の奥。
ケルベロスが——二体。
「ヒロ……」
ユナの声がわずかに揺れる。
「これ……無理」
「……だな」
ヒロは即答した。
(押せてたのは一体だからだ)
(これは別だ)
一体目が動く。
もう一体も——連動するように動く。
「来るネ!」
ミカが叫ぶ。
二方向から同時。
「チッ……!」
ヒロが踏み込む。
一体を受ける。
だが——
もう一体が横から来る。
「ヒロ!!」
ユナの声。
『フィールド!』
光が展開される。
衝撃。
ギリギリで防ぐ。
「……っ!」
ユナの体が揺れる。
「大丈夫か!」
「……うん……でも」
「きつい……」
(長くはもたねえな)
ヒロは剣を構える。
「ミカ!」
「分かってるネ!」
『Bang!!』
爆発が一体に直撃する。
だが——
「……削れてるけど!」
「押し切れないネ!」
もう一体が突っ込む。
ヒロが受ける。
重い。
「……っ」
剣で受け止める。
だが、押される。
「ヒロさん!」
マキの声。
「後ろ、来てるッス!」
「分かってる!」
(囲まれる)
その瞬間。
——カチッ
どこかで音が鳴る。
見えない。
(どこだ)
「……ヒロ」
「……これ以上は、無理」
ユナの声。
「……ああ」
(守れない)
「……一回引く」
「ここまで来て……!?」
マキが驚く。
「だからだ」
「これ以上は賭けになる」
「それはやらない」
「……戻るぞ!」
「了解ネ!」
「……うん!」
「了解ッス!」
ヒロが後ろに下がる。
だが——
ケルベロスは追ってくる。
「チッ……!」
距離が詰まる。
振り返る。
その瞬間。
足元。
何かが——見えた気がした。
(……ここ)
考えるより先に。
踏み込む。
——カチッ
トラップが発動する。
だが——
ヒロの姿が、掻き消える。
次の瞬間。
ケルベロスの懐。
「——っ!?」
距離が、消えていた。
剣が——振り抜かれる。
「——!!」
閃光のような一撃。
一体が、断ち切られる。
「……は?」
ヒロ自身が止まる。
(今……)
分からない。
だが——
もう一体が来る。
ヒロは考えない。
体が動く。
踏み込む。
また、距離が消える。
剣。
「——っ!!」
振り抜く。
二体目が、崩れる。
静寂。
「……え」
マキが呟く。
「今の……何ッスか」
「……」
ヒロは答えない。
(……なんだ、今の)
それだけが、残った。




