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第47話 適応


 霧の中。


 


 ケルベロスが(うな)る。


 


 しかし、さっきまでとは違う。


 


 


(……警戒してる)


 


 


 ヒロは感じ取る。


 


 


 さっきの一撃。


 


 


 罠を踏ませたことで——


 


 


 理解された。


 


 


 


「来るネ」


 


 


 ミカが構える。


 


 


 


「……ああ」


 


 


 ヒロは一歩前に出る。


 


 


 


「同じは通じないぞ」


 


 


 


 小さく呟く。


 


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 ケルベロスが動く。


 


 


 


 ——だが。


 


 


 


 さっきと違う。


 


 


 


 


 直線じゃない。


 


 


 


 蛇のように、軌道を変える。


 


 


 


 


「……!」


 


 


 


「動き、変わった!」


 


 


 


 マキが叫ぶ。


 


 


 


 


「読ませないつもりか……!」


 


 


 


 ヒロが歯を食いしばる。


 


 


 


 


 ケルベロスが大きく踏み込む。


 


 


 


 


 ——止まる。


 


 


 


 


 足を止めた。


 


 


 


 


「……は?」


 


 


 


 


 ヒロが一瞬だけ戸惑う。


 


 


 


 


 次の瞬間——


 


 


 


 


 横へ跳ぶ。


 


 


 


 


 ——カチッ


 


 


 


 


 トラップ発動。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 そこには——いない。


 


 


 


 


「……()けた!?」


 


 


 


 


 ミカが笑う。


 


 


 


 


「賢いネ!」


 


 


 


 


 


「チッ……」


 


 


 


 


 ヒロが舌打ちする。


 


 


 


 


 


(踏ませるのはもう無理か)


 


 


 


 


 


 ケルベロスがこちらを見る。


 


 


 


 


 三つの頭。


 


 


 


 


 わずかに笑ったように見えた。


 


 


 


 


 


「ヒロ!」


 


 


 


 


 


「来る!」


 


 


 


 


 


 ユナの声。


 


 


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 


 


 ケルベロスが加速する。


 


 


 


 


 


 さっきより速い。


 


 


 


 


 


「速——っ!」


 


 


 


 


 


 ヒロが前に出る。


 


 


 


 


 


 ——衝突。


 


 


 


 


 


 重い。


 


 


 


 


 


 今までより。


 


 


 


 


 


「……強くなってるな」


 


 


 


 


 


 押される。


 


 


 


 


 


 だが——


 


 


 


 


 


「それでも」


 


 


 


 


 


 踏ん張る。


 


 


 


 


 


 


「止まる」


 


 


 


 


 


 


 歯を食いしばる。


 


 


 


 


 


 


「ミカ!」


 


 


 


 


 


 


「了解ネ!」


 


 


 


 


 


 


『Bang!!』


 


 


 


 


 


 


 爆発。


 


 


 


 


 


 


 直撃。


 


 


 


 


 


 


 だが——


 


 


 


 


 


 


「……浅いネ」


 


 


 


 


 


 


「硬さ上がってる!」


 


 


 


 


 


 


「……だろうな」


 


 


 


 


 


 


(適応してる)


 


 


 


 


 


 


 攻撃も。


 


 


 


 


 


 


 罠も。


 


 


 


 


 


 


(なら——)


 


 


 


 


 


 


「切り替えるぞ!」


 


 


 


 


 


 


「罠に頼るな!」


 


 


 


 


 


 


「真正面から削る!」


 


 


 


 


 


 


「了解ネ!」


 


 


 


 


 


 


「うん!」


 


 


 


 


 


 


「了解ッス!」


 


 


 


 


 


 


 


 ヒロが踏み込む。


 


 


 


 


 


 


 今度は——


 


 


 


 


 


 


 読みじゃない。


 


 


 


 


 


 


 力で。


 


 


 


 


 


 


 正面から。


 


 


 


 


 


 


 剣で切り裂く。


 


 


 


 


 


 


「——っ!!」


 


 


 


 


 


 


 鈍い手応え。


 


 


 


 


 


 


 確実に削れている。


 


 


 


 


 


 


 


 ケルベロスが吠える。


 


 


 


 


 


 


 怒り。


 


 


 


 


 


 


 そして——


 


 


 


 


 


 


 変化。


 


 


 


 


 


 


 


 体表が、わずかに硬質化する。


 


 


 


 


 


 


「……おい」


 


 


 


 


 


 


 ヒロが目を細める。


 


 


 


 


 


 


「それ以上やるのかよ」


 


 


 


 


 


 


 


 圧が増す。


 


 


 


 


 


 


 


「……ヒロ」


 


 


 


 


 


 


 ユナの声。


 


 


 


 


 


 


 


「これ……長くやるの危ない」


 


 


 


 


 


 


 


「……分かってる」


 


 


 


 


 


 


 


 ヒロは短く答える。


 


 


 


 


 


 


 


(押せる)


 


 


 


(でも——削りきれない)


 


 


 


 


 


 


 判断が揺れる。


 


 


 


 


 


 


 そのとき。


 


 


 


 


 


 


「ヒロさん!」


 


 


 


 


 


 


 マキの声。


 


 


 


 


 


 


「後ろ、変!」


 


 


 


 


 


 


「……?」


 


 


 


 


 


 


 振り返る。


 


 


 


 


 


 


 霧の奥。


 


 


 


 


 


 


 何かが——


 


 


 


 


 


 


 増えている。


 


 


 


 


 


 


「……は?」


 


 


 


 


 


 


 影。


 


 


 


 


 


 


 もう一つ。


 


 


 


 


 


 


 同じような——気配。


 


 


 


 


 


 


「……嘘だろ」


 


 


 


 


 


 


 ヒロが呟く。


 


 


 


 


 


 


 ケルベロスが——


 


 


 


 


 


 


 二体。


 


 


 


 


 


 


 現れ始めていた。

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