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第43話 差違

霧の中。


 


 再び、同じ場所へ向かう。


 


 


 足は止めない。


 


 


 だが——


 


 


(……覚えてる)


 


 


 さっきの感覚。


 


 


 倒れるユナ。


 


 


 血。


 


 挿絵(By みてみん)




 


(……あれは)


 


 


 一瞬、考える。


 


 


 


(ユナの恩恵……なのか?)


 


 


 


 あの口ぶり。


 


 


「また」


 


 


「何回目」


 


 


 


 あいつは知っている。


 


 


 


(俺だけ、引っかかってる?)


 


 


 


 答えは出ない。


 


 


 


 だが——


 


 


 


(できれば使いたくない)


 


 


 


 それだけ決める。


 


 


 


「……ヒロ」


 


 


 


 ユナの声。


 


 


 


「……ここ、近い」


 


 


 


「……ああ」


 


 


 


 ヒロは頷く。


 


 


 


 視界は同じ。


 


 


 


 霧。


 


 


 


 木。


 


 


 


 変わらない景色。


 


 


 


 


(でも——)


 


 


 


 さっきとは違う。


 


 


 


 何かが。


 


 


 


 


「止まれ」


 


 


 


 ヒロが手を上げる。


 


 


 


 


「この辺だ」


 


 


 


 


 全員が止まる。


 


 


 


 


 静寂。


 


 


 


 


 そして——


 


 


 


 


 ヒロがゆっくり足元を見る。


 


 


 


 


 地面。


 


 


 


 


 ——何もない。


 


 


 


 


「……?」


 


 


 


 


「ヒロ?」


 


 


 


 


 ユナが不思議そうに見る。


 


 


 


 


「……いや」


 


 


 


 


 ヒロは眉をひそめる。


 


 


 


 


(ここだったはずだ)


 


 


 


(トラップ)


 


 


 


(踏んだ瞬間——)


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 ない。


 


 


 


 


「……違う」


 


 


 


 ユナが小さく呟く。


 


 


 


「位置が……ズレてる」


 


 


 


「……は?」


 


 


 


 意味が分からない。


 


 


 


 だが——


 


 


 


 嫌な予感だけが強くなる。


 


 


 


「動くな」


 


 


 


 ヒロが低く言う。


 


 


 


「誰も、動くな」


 


 


 


 全員が止まる。


 


 


 


 静寂。


 


 


 


 その中で——


 


 


 


 ヒロは、一歩だけ横にずれる。


 


 


 


 わずかに。


 


 


 


 ほんの数センチ。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 地面を見る。


 


 


 


 そこに——


 


 


 


 あった。


 


 


 


 薄く隠された金属。


 


 


 


「……ここだ」


 


 


 


「え?」


 


 


 


「さっきのやつだ」


 


 


 


 


 空気が張り詰める。


 


 


 


 


「……でも」


 


 


 


 ユナが小さく呟く。


 


 


 


「さっきとは違う」


 


 


 


「……ああ」


 


 


 


 ヒロも頷く。


 


 


 


(同じじゃない)


 


 


 


(でも——近い)


 


 


 


 完全な再現じゃない。


 


 


 


 ズレている。


 


 


 


「解除できるか?」


 


 


 


「……無理」


 


 


 


 ユナが首を振る。


 


 


 


「分からない」


 


 


 


「……だろうな」


 


 


 


 ヒロは軽く息を吐く。


 


 


 


 そして——


 


 


 


 一歩、後ろに下がる。


 


 


 


「回避する」


 


 


 


「踏まなきゃいい」


 


 


 


「……うん」


 


 


 


 そのとき。


 


 


 


 ——ドンッ


 


 


 


 地面が震える。


 


 


 


「……来るネ」


 


 


 


 ミカが構える。


 


 


 


 霧の奥。


 


 


 


 三つの影。


 


 


 


「ケルベロス……!」


 


 


 


 ユナの声が強張る。


 


 


 


 低い唸り声。


 


 


 


 空気が揺れる。


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 ケルベロスが突っ込んできた。


 


 


 


「ヒロ!」


 


 


 


「分かってる!」


 


 


 


 ヒロが前に出る。


 


 


 


 だが——突っ込まない。


 


 


 


 一歩、引く。


 


 


 


「ミカ、撃つな」


 


 


 


「え?」


 


 


 


「今は待て」


 


 


 


 ケルベロスが一直線に来る。


 


 


 


 


(来い)


 


 


 


 ヒロは位置を読む。


 


 


 


 視界じゃない。


 


 


 


 ()()の流れ。


 


 


 


 一歩、横にずれる。


 


 


 


 ——カチッ


 


 


 


 ケルベロスの足元。


 


 


 


 空気が歪む。


 


 


 


「——っ!?」


 


 


 


 巨体がわずかに揺れる。


 


 


 


「今だ!」


 


 


 


『Bang!!』


 


 


 


 爆発が直撃する。


 


 


 


「通ったネ!」


 


 


 


 ミカが笑う。


 


 


 


 ヒロは口の端を上げる。


 


 


 


(使える)


 


 


 


 罠は敵じゃない。


 


 


 


 利用できる。


 


 


 


「ユナ!」


 


 


 


「次、右来る」


 


 


 


「……そこじゃない!」


 


 


 


 ユナの声に合わせて、ヒロが踏み込む。


 


 


 


 重圧。


 


 


 


 空気が沈む。


 


 


 


「……またか」


 


 


 


「効かねえって言ってんだろ」


 


 


 


 そのまま前へ。


 


 


 


 剣で切り裂く。


 


 


 


「——っ!」


 


 


 


「通る!」


 


 


 


 ケルベロスが唸る。


 


 


 


 明らかに——反応が変わる。


 


 


 


 狙われている。


 


 


 


 理解している。


 


 


 


(いいぞ)


 


 


 


(やっと戦いになってきた)


 


 


 


 ヒロは一歩踏み込む。


 


 


 


 今度は——


 


 


 


 主導権を握る側として。


 


 


 


 ——だが。


 


 


 


 まだ足りない。


 


 


 


 噛み合い始めただけだ。

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