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第39話 研究者


 街外れ。


 


 人の気配が薄くなる。


 


 道も整備されていない。


 


 


「……ほんとにこんなとこにいるのか?」


 


 


 ヒロが周囲を見回す。


 


 


「いるって言ってたネ」


 


 


 ミカが気楽に答える。


 


 


 


「……近い」


 


 


 ユナがぽつりと呟く。


 


 


「気配が」


 


 


 


「マジか」


 


 


 ヒロは少しだけ警戒を強める。


 


 


 


 その横で——


 


 


 


「……」


 


 


 


 エバがぴったりとくっついていた。


 



挿絵(By みてみん)

 


 


「……離れろ」


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


「ある」


 


 


 


 即答。


 


 


 


 


 やがて。


 


 


 


 小さな小屋が見えてくる。


 


 


 


 古びているが、手入れはされている。


 


 


 


 


「ここか」


 


 


 


 ヒロが扉を叩く。


 


 


 


 


「——入れ」


 


 


 


 中から声。


 


 


 


 


 扉を開ける。


 


 


 


 


 中は——


 


 


 


 本と紙で埋まっていた。


 


 


 


 


 そして。


 


 


 


 


「……来たか」


 


 


 


 


 男が一人。


 


 


 


 


 年齢は分かりにくい。


 


 


 


 


 目だけが、妙に鋭い。


 


 


 


 


「研究者ってのはあんたか?」


 


 


 


 


「そうだ」


 


 


 


 


 短く答える。


 


 


 


 


 


「魔物の件で来た」


 


 


 


 


 ヒロはそのまま本題に入る。


 


 


 


 


 


「最近、似たような個体が出てるって聞いた」


 


 


 


 


「……ああ」


 


 


 


 


 男は頷く。


 


 


 


 


 


「確認されている」


 


 


 


 


「硬質化」


 


 


 


 


「高出力」


 


 


 


 


「短時間出現」


 


 


 


 


 


「ケルベロスだけじゃないのか?」


 


 


 


 


「違う」


 


 


 


 


 即答だった。


 


 


 


 


 


「複数いる」


 


 


 


 


「型が違う」


 


 


 


 


 


「……なるほどな」


 


 


 


 


 ヒロは腕を組む。


 


 


 


 


(意図的だな)


 


 


 


 


(ランダムじゃない)


 


 


 


 


 


「原因は?」


 


 


 


 


「分からん」


 


 


 


 


 


「ただし」


 


 


 


 


 男の目が細くなる。


 


 


 


 


 


「調整の可能性がある」


 


 


 


 


 


「……調整?」


 


 


 


 


 


「強さのバランスを取るためのものだ」


 


 


 


 


 


「……は?」


 


 


 


 


 


 ヒロは眉をひそめる。


 


 


 


 


 


「誰がやってる」


 


 


 


 


 


「分からん」


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


「少なくとも——自然ではない」


 


 


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 


 


 ヒロは少しだけ黙る。


 



 


 


 


 


 


 だが否定はできない。


 


 


 


 


 


 


「で」


 


 


 


 


 


「情報くれる代わりに何かあるんだろ?」


 


 


 


 


 


 ヒロが言う。


 


 


 


 


 


 男はわずかに笑った。


 


 


 


 


 


「話が早いな」


 


 


 


 


 


「一体、追っている個体がいる」


 


 


 


 


 


「そいつを確認してきてほしい」


 


 


 


 


 


「倒さなくていい」


 


 


 


 


 


「情報が欲しい」


 


 


 


 


 


 


「場所は?」


 


 


 


 


 


「森の手前」


 


 


 


 


 


「霧の境界付近だ」


 


 


 


 


 


 


「……境界、ね」


 


 


 


 


 


 ヒロは小さく呟く。


 


 


 


 


 


 


「危険だぞ」


 


 


 


 


 


「分かってる」


 


 


 


 


 


 ヒロは即答する。


 


 


 


 


 


 


「やる」


 


 


 


 


 


 


「ヒロ」


 


 


 


 


 


 ユナが小さく呼ぶ。


 


 


 


 


 


 


「大丈夫だ」


 


 


 


 


 


 ヒロは軽く言う。


 


 


 


 


 


 


「確認だけだろ」


 


 


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 


 


 ユナは何も言わなかった。


 


 


 


 


 


 ただ——


 


 


 


 


 


 袖を強く掴む。


 


 


 


 


 


 


「いいネ」


 


 


 


 


 


 ミカが笑う。


 


 


 


 


 


「面白くなってきたヨ」


 


 


 


 


 


 


 そのとき。


 


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 


 


 エバが一歩前に出る。


 


 


 


 


 


 研究者をじっと見る。


 


 


 


 


 


 


「……何だ?」


 


 


 


 


 


 男が眉をひそめる。


 


 


 


 


 


 


「……違う」


 


 


 


 


 


 エバが呟く。


 


 


 


 


 


 


「……?」


 


 


 


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


 


 


 それだけ言って戻る。


 


 


 


 


 


 


「……なんなんだそいつ」


 


 


 


 


 


「知らん」


 


 


 


 


 


 ヒロは即答した。


 


 


 


 


 


 


 話は終わり。


 


 


 


 


 


 


 外に出る。


 






 森の方を見る。


 






 奥に——


 






 薄く、霧がかかっている。


 






 


「……あそこか」


 






 


 ヒロは小さく呟く。


 






 


(調整、ね)


 






 


 頭の中で繋がる。


 






 


(誰かが作ってる)


 






 


(強さを)


 


 






 


 そのとき。


 


 






 


「……いる」


 


 






 


 ユナが、ぽつりと呟いた。


 


 






 


「……何がだ?」


 


 






 


「分からない」


 






 


 


 けれど。


 


 






 


「……近い」


 


 






 


 その声は、はっきりしていた。


 


 






 


「いいネ」


 






 


 


 ミカが笑う。


 


 






 


「分かりやすいヨ」


 






 


 


 


 ヒロは、もう一度霧を見る。


 






 


 


 何も見えない。


 


 






 


 それなのに——


 


 






 


 視線だけが、通らない。


 


 






 


 


(……いるな)


 


 






 


 確信だけがあった。


 


 


 






 


「行くぞ」


 


 






 


 短く言う。


 


 


 






 


 その一言で。


 


 






 


 


 全員が動き出した。


 


 






 


 


 霧の奥へ。


 






 


 


 まだ見えない()()に向かって。

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