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第29話 違和の魔物

 街の外れ。


 


 いつも通りの依頼だった。


 


 低ランク魔物の討伐。


 


 数体、出ているだけ。


 


 


「……楽そうだな」


 


 ヒロは軽く言う。


 


「その言い方、不安ネ」


 


 ミカが笑う。


 


 


「ヒロ」


 


 ユナが小さく袖を引く。


 


 


「……奥、変」


 


 


「またそれか」


 


 


「……うん」


 


 


 短い返事。


 


 


 ヒロは周囲を見る。


 


 


 静かすぎる。


 


 


(……まあ)


 


 


「行ってみりゃ分かるか」


 


 


 森に入る。


 


 


 風がない。


 


 


 音も、ない。


 


 


 


「……来るネ」


 


 


 ミカが呟く。


 


 


 草むらが揺れる。


 


 


 魔物。


 


 


 だが——


 


 


「……一体だけか」


 


 


 ヒロは踏み込む。


 


 


 斬る。


 


 


 終わり。


 


 


「……弱いな」


 


 


「おかしいネ」


 


 


 ミカが眉をひそめる。


 


 


 


 ——ズン


 


 


 地面が揺れた。


 


 


 


「……来る」


 


 


 ヒロが呟く。


 


 


 


 木々が押し倒される。


 


 


 


 現れたのは——黒い獣。


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 獣の口が、ゆっくりと開く。


 


 


 


「——遅延付与……」


 


 


 


 低い声。


 


 


 


 詠唱。


 


 


 


 その間にも——


 


 


 


 動く。


 


 


 


 突進。


 


 


 


「っ!」


 


 


 


 ヒロは避ける。


 


 


 


 だが同時に——


 


 


 


『スロウ』


 


 


 


 空気が、絡みついた。


 


 


 


「……っ!?」


 


 


 


 ユナの動きが止まる。


 


 


 


「重……っ!」


 


 


 


 ミカの足も鈍る。


 


 


 


「これ……強いネ……!」


 


 


 


 明らかに効いている。


 


 


 


 だが——


 


 


 


 ヒロは踏み込む。


 


 


 


 普通に。


 


 


 


「……?」


 


 


 


 一瞬、違和感。


 


 


 


 重い。


 


 


 


 はずなのに。


 


 


 


(……動けてるな)


 


 


 


 そのまま距離を詰める。


 


 


 


 獣の爪。


 


 


 


 振り下ろされる。


 


 


 


 避ける。


 


 


 


 


「ヒロ!?」


 


 


 


 ユナの声。


 


 


 


「なんで動けるの!?」


 


 


 


「え?」


 


 


 


「それ、まともに受けてるよ!?」


 


 


 


 ミカも驚いた顔で叫ぶ。


 


 


 


「ユー、なんで普通に動いてるネ!?」


 


 


 


「いや、重いけど……」


 


 


 


 ヒロは首をかしげる。


 


 


 


「普通にいけるぞ?」


 


 


 


「普通じゃないネそれ!」


 


 


 


 ミカがツッコむ。


 


 


 


 


 その瞬間。


 


 


 


 獣が消える。


 


 


 


 


「——っ!?」


 


 


 


 


 背後。


 


 


 


 

(……来る)


 


 


 


 

 振り向く。


 


 


 


 

 間に合う。


 


 


 


 

 弾く。


 


 


 


 

 衝撃。


 


 


 


 

「……っ、重いな」


 


 


 


 

 腕が痺れる。


 


 


 


 

 だが——耐える。


 


 


 


 

「ヒロ、止める!」


 


 


 


 

 ユナが魔法を展開。


 


 


 


 

 拘束。


 


 


 


 

 一瞬止まる。


 


 


 


 

「今!」


 


 


 


 

「おう!」


 


 


 


 

 踏み込む。


 


 


 


 

 斬る。


 


 


 


 

 ——弾かれる。


 


 


 


 

「……硬すぎだろ」


 


 


 


 

「いいネ」


 


 


 


 

 ミカが笑う。


 


 


 


 

「面白いヨ」


 


 


 


 

 指を構える。


 


 


 


 

『Bang!!』


 


 


 


 

 爆発。


 


 


 


 

 直撃。


 


 


 


 

 煙。


 


 


 


 

 だが——無傷。


 


 


 


 

「……硬いネ」


 


 


 


 

 ミカが低く言う。


 


 


 


 

 煙の中。


 


 


 


 

 目が光る。


 


 


 


 

 咆哮。


 


 


 


 

 再び、重圧。


 


 


 


 

「……っ」


 


 


 


 

 ユナの膝が揺れる。


 


 


 


 

「これ……きつい……!」


 


 


 


 

 ミカも動きが鈍る。


 


 


 


 

 だが——


 


 


 


 

(……やっぱりな)


 


 


 


 

 ヒロは踏み込む。


 


 


 


 

 普通に。


 


 


 


 

「……効いてないのかな、これ」


 


 


 


 

 呟く。


 


 


 


 

 懐へ入る。


 


 


 


 

 避ける。


 


 


 


 

 斬る。


 


 


 


 

 浅い。


 


 


 


 

「……チッ」


 


 


 


 

 そのとき。


 


 


 


 

 獣が後退する。


 


 


 


 

「……逃げる?」


 


 


 


 

「違うネ」


 


 


 


 

 ミカが言う。


 


 


 


 

「様子見デス」


 


 


 


 

 獣は、森の奥へ消えた。


 


 


 


 

 気配だけを残して。


 


 


 


 

「……なんだよ、今の」


 


 


 

 ヒロは息を吐く。


 


 


 

 違和感が残る。


 


 


 

 確実に。


 


 


 

 おかしい。


 


 


 

「ヒロ」


 


 


 

 ユナの声。


 


 


 

 振り返る。


 


 


 

 その顔は、明らかに強張っていた。


 


 


 

「……あれ」


 


 


 

「また来る」


 


 


 

「……だろうな」


 


 


 

 ヒロは頷く。


 


 


 

 森の奥を見る。


 


 


 

(……次は)


 


 


 

 少しだけ、目を細める。


 


 


 

(逃がさねえ)


 


 


 

 初めて。


 


 


 

 追う側になっていた。

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