第27話 余韻と疑問
朝。
いつも通りの光が差し込む。
「……」
ヒロは、しばらく天井を見ていた。
(……普通だな)
体を起こす。
痛みはない。
(今まで何回か死んだはずなんだけどな)
少しだけ考えて、やめる。
「まあいいか」
深く考えるのはやめた。
「ヒロ、起きた?」
横を見ると、ユナがいた。
「……近くない?」
「いつも通りだよ」
「いや絶対近いだろ」
軽くツッコむ。
ユナは少しだけ首をかしげた。
「ダメ?」
「ダメじゃないけど」
ヒロは軽く息を吐く。
「慣れないだけだ」
「……そっか」
少しだけ、残念そうだった。
その様子を見て。
(……こんな感じだったか?)
ふと、引っかかる。
(いや——)
すぐに流した。
「グッドモーニングネ!」
横から声。
「……なんでいるんだよ」
ミカが窓際にいた。
「早起きデス」
「自由か」
軽く伸びをする。
体は軽い。
(……やっぱり、調子いいな)
理由は分からない。
けれど、悪くない。
「今日も行くネ?」
「行くけど、その前に飯だな」
「大事」
ユナが即答する。
ギルドへ向かう道。
「ユーたち、いい感じネ」
ミカが言う。
「何がだよ」
「バランスデス」
「お前が一番バランス崩してるだろ」
「問題ナイ」
「あるわ」
ユナが、少しだけ袖を引く。
「ヒロ」
「ん?」
「……あんまり前出すぎないで」
「またそれか」
「大事だから」
ヒロは少しだけ笑う。
「分かってるって」
(……そんな危ない感じ、してるか?)
少しだけ考える。
(まあいいか)
すぐに流した。
歩きながら。
ヒロは、ふと空を見上げる。
(……あのとき)
頭の中に、一瞬だけよぎる。
焼ける光。
消える人影。
(……)
止まりかけて——
やめた。
(考えても仕方ないか)
そのとき。
「……ヒロ」
ユナの声。
少しだけ、間があった。
「ん?」
振り返る。
ユナが——
一瞬、止まっていた。
「……?」
足を止める。
「ユナ?」
反応がない。
目は開いている。
けれど、焦点が合っていない。
「……おい」
近づく。
肩に手をかける。
「ユナ?」
軽く揺らす。
「……」
無反応。
(……またか?)
頭に引っかかる。
(いや——)
そこで、違和感が強くなる。
「……なあ」
ぽつりと呟く。
「ユナってこんなすぐ気絶?してたっけ……?」
自分の中で、何かがズレる。
(前から……こうだったか?)
思い出そうとして——
(……思い出せない)
はっきりと、そう感じた。
「——ヒロ!」
声が戻る。
「うおっ!?」
ヒロは一歩引く。
「びっくりした……急にどうした」
ユナが、強く腕を掴む。
「……ヒロ」
その手が震えている。
「大丈夫?」
「それさっきも聞いたぞ」
ヒロは苦笑する。
けれど。
少しだけ、ユナを見る。
「……お前こそ大丈夫か?」
「え?」
「今、止まってたぞ」
「……」
ユナが言葉に詰まる。
一瞬だけ、視線が揺れる。
「……気のせい」
すぐに言った。
「そうか?」
「うん」
少しだけ強かった。
(……気のせい、か)
ヒロはそれ以上追及しなかった。
けれど。
胸の奥に、小さな引っかかりが残る。
(……なんか、おかしくないか)
(ユナも——)
(俺も)
言葉にはならない。
けれど——
何かがおかしかった。
それが何かを理解するには——
もう少し時間が必要だった。




