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第18話 呼び出し


 ギルドの中は、いつもより少しだけ静かだった。


 


「……なんか空気違くないか?」


 


 ヒロは小さく呟く。


 


「うん……」


 


 ユナも周囲を見ていた。


 


 視線が、集まっている。


 


 昨日の件が原因なのは、なんとなく分かる。


 


 


「ユーたち、有名ネ」


 


 ミカが楽しそうに言う。


 


「嬉しくねえよ」


 


 


 


 受付に向かう。


 


 いつもの職員——だが、様子が違った。


 


 


「ヒロさん、ユナさん、それと……ミカさん」


 


 


 名前を呼ばれる。


 


 


「……え、なんで知ってるんだ?」


 


 


「本日、王城より通達が来ています」


 


 


 空気が変わった。


 


 


「王城?」


 


 


「はい。至急、来城するようにと」


 


 


 短く、はっきりとした声。


 


 


「……なんかやらかしたか俺ら」


 


 


「したネ」


 


 


「お前のせいだからな?」


 


 


 


「理由は?」


 


 


 ユナが静かに聞く。


 


 


「詳細は不明です」


 


 


 職員は一瞬だけ視線を逸らした。


 


 


「ただ……」


 


 


 言葉を選ぶようにして。


 


 


「重要案件であることは間違いありません」


 


 


 


 小さな沈黙。


 


 


 


(王城、か……)


 


(ただの呼び出しじゃなさそうだな)


 


 


 ヒロは一度、息を吐いた。


 


 


「……行くしかないか」


 


 


 そう言って、顔を上げる。


 


 


「逃げても面倒になるだけだろ」


 


 


「だったら最初から行った方がいい」


 


 


 


「行くしかないネ」


 


 


 ミカが即答する。


 


 


「面白そうデス」


 


 


「お前は少し黙ってろ」


 


 


 


「……行こう」


 


 


 ユナが言った。


 


 


 迷いはなかった。


 


 


 ——ように見えた。


 


 


 


 その手が、ほんの少しだけヒロの袖を掴む。


 


 


 


「……ほんとは」


 


 


 小さく、呟く。


 


 


 


「こういうの、増えてほしくなかった」


 


 


 


「ん?」


 


 


 


「……なんでもない」


 


 


 すぐに顔を上げる。


 


 


 いつもの表情。


 


 


 


「行こう、ヒロ」


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 ヒロは軽く頷く。


 


 


(まあ——)


 


(ただの用事で済むとは思えないけどな)


 


 


 


 ギルドを出る。


 


 


 街の中心へ向かう。


 


 


 


 遠くに見える建物。


 


 


 他よりも明らかに大きく、重厚な造り。


 


 


 


「……あれか」


 


 


「王城ネ」


 


 


 ミカが軽く言う。


 


 


 


「なんか、急にスケール上がったな……」


 


 


 ヒロは苦笑する。


 


 


 


 その横で。


 


 


 


「……」


 


 


 


 ユナは、ほんの一瞬だけ視線を落とした。


 


 


 


(……やっぱり、来た)


 


 


(避けられないよね)


 


 


 


 心の中でだけ、呟く。


 


 


 


(……ヒロを巻き込むことになる)


 


 


(でも——)


 


 


 


 その指先に、力が入る。


 


 


 


(守る)


 


 


 


 それだけは、決めていた。


 


 


 


「ヒロ」


 


 


「ん?」


 


 


「気をつけて」


 


 


「何にだよ」


 


 


「……全部」


 


 


 


 短い言葉。


 


 


 


 その意味は、分からない。


 


 


 けれど——


 


 


 


 いつもより、少しだけ重かった。


 


 


 


 王城が、近づいてくる。


 


 


 


 その先で何が待っているのか。


 


 


 


 まだ、誰も知らなかった。

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