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第17話 金貨と視線


 街の通りは、いつも通り賑わっていた。


 


「ユー、ここいいネ!」


 


 ミカが店先で立ち止まる。


 


「いや今日はちゃんと選ぶからな」


 


 ヒロは釘を刺す。


 


「昨日みたいなのは無しだ」


 


 


(まず暴発止めるのが最優先だな……)


 


 


「問題ナイ!」


 


 


「一番信用できねえやつのセリフなんだよそれ」


 


 


 


 店に入る。


 


 並んでいるのは、防具や補助装備。


 


 


「ヒロ、これ」


 


 


 ユナが一つ手に取る。


 


 


「軽いし、動きやすいと思う」


 


 


「お、いいじゃん」


 


 


 


 自然と距離が近くなる。


 


 


 


「……」


 


 


 


 ミカがじっと見る。


 


 


「ユーたち、距離近いネ」


 


 


「普通だろ」


 


 


「普通じゃないネ」


 


 


「どっちだよ」


 


 


 


 ユナは何も言わない。


 


 


 ただ——


 


 


 少しだけ、ヒロの袖を引いた。


 


 


「ヒロ」


 


 


「ん?」


 


 


「それ、似合う」


 


 


「そうか?」


 


 


「うん」


 


 


 少しだけ、満足そうだった。


 


 


 


「ミーも選ぶネ!」


 


 


 ミカが別の棚へ向かう。


 


 


「おい待て、勝手に触るなよ——」


 


 


 


(嫌な予感しかしない)


 


 


 


「おお……」


 


 


 


「それ置け」


 


 


 


「これ、面白そうネ」


 


 


 ミカが手に取ったのは、見慣れない装置だった。


 


 


「いやそれ絶対やめろ」


 


 


「ちょっと試すネ」


 


 


「やめろって!!」


 


 


 


「Bang!!」


 


 


 


 ——閃光。


 


 


 


「うおっ!?」


 


 


 


 店内の一角が、軽く吹き飛んだ。


 


 


 


「何やってんだお前は!!」


 


 


「試しただけネ」


 


 


「店でやるな!!」


 


 


 


 店主が奥から飛び出してくる。


 


 


「お、おい! 何してくれてんだ!?」


 


 


「大丈夫ネ!」


 


 


「大丈夫じゃねえ!!」


 


 


 


(止めきれなかった……)


 


 


 


 ヒロは頭を抱えた。


 


 


 


「……ごめんなさい」


 


 


 ユナが一歩前に出る。


 


 


「ちゃんと弁償する」


 


 


 


 そう言って——


 


 


 小さな袋を取り出した。


 


 


 


「……?」


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 ——ジャラ、と音が鳴る。


 


 


 


 机の上に、金貨が広がった。


 


 


 


 一枚、二枚ではない。


 


 


 


 明らかに多い。


 


挿絵(By みてみん)


 


 


「……いや待て」


 


 


 


 ヒロが引きつった声を出す。


 


 


 


「多くない?」


 


 


 


 店主も固まる。


 


 


 


「……これ、全部……金貨……?」


 


 


 


「足りないと困るから」


 


 


 


 ユナは、いつも通りの顔で言った。


 


 


 


「ヒロに迷惑かけたから」


 


 


 


 


「いやそういう問題じゃねえって!!」


 


 


 


 


「……多すぎネ」


 


 


 


 ミカですら、少しだけ引いていた。


 


 


 


 


 店主が震える手で金貨を見る。


 


 


 


「……足りるどころじゃねえ……」


 


 


 


 


「じゃあ、これで」


 


 


 


 ユナは軽く頷く。


 


 


 


 


「いや軽く済ませるな!!」


 


 


 


 


 なんとか場を収め、店を出る。


 


 


 


「……疲れた」


 


 


 


 ヒロは空を見上げる。


 


 


 


「まだ何もしてねえのに」


 


 


 


「したネ」


 


 


 


「お前がな」


 


 


 


 


 ユナが、そっと隣に寄る。


 


 


 


 距離が、近い。


 


 


 


 


「……ヒロ」


 


 


 


「ん?」


 


 


 


「さっき」


 


 


 


 少しだけ、言いにくそうにする。


 


 


 


「……楽しそうだった」


 


 


 


「何が?」


 


 


 


「ミカと」


 


 


 


「いやツッコミしかしてねえけど?」


 


 


 


 


「……そうじゃなくて」


 


 


 


 視線を逸らす。


 


 


 


「……いい」


 


 


 


 小さく呟く。


 


 


 


 


「……なんだそれ」


 


 


 


 


 ユナは、ほんの少しだけ頬を膨らませた。


 


 


 


 そして——


 


 


 


 指先で、自分の指をつつく。


 


 


 


「……別に」


 


 


 


 


 分かりやすく、いじけていた。


 


 


 


 


「いや、なんか怒ってないか?」


 


 


 


「怒ってない」


 


 


 


「絶対怒ってるだろ」


 


 


 


「怒ってない」


 


 


 


 少しだけ強めだった。


 


 


 


 


 そのとき。


 


 


 


 ——視線。


 


 


 


「……?」


 


 


 


 ユナの表情が、変わる。


 


 


 


 さっきまでの空気が、一瞬で消えた。


 


 


 


 


「……そこ」


 


 


 


 小さく呟く。


 


 


 


 


 視線の先。


 


 


 


 建物の屋根の上。


 


 


 


 ——フクロウ。


 


 


 


 


 じっと、こちらを見ている。


 


 


 


 


 ユナの目が、細くなる。


 


 


 


 


 一歩、踏み出す。


 


 


 


 


 ——その瞬間。


 


 


 


 


 フクロウの羽が、不自然に揺れた。


 


 


 


 次の瞬間、慌てるように大きく羽ばたく。


 


 


 


「……ひぇっ!」


 


 


 


 空へ逃げる。


 


 


 


 速い。


 


 


 


「……逃げた」


 


 


 


 ユナが小さく呟く。


 


 


 


「なんだ、今の」


 


 


 


 ヒロは空を見上げる。


 


 


 


「ただの鳥じゃないネ」


 


 


 


 ミカがぽつりと言う。


 


 


 


「気配、変だったヨ」


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 ユナは何も言わなかった。


 


 


 


 


 ただ。


 


 


 


 空を見上げたまま。


 


 


 


 


 ほんの少しだけ。


 


 


 


 表情が、硬くなっていた。


 


 


 


 


 ——その出来事が。


 


 


 


 この先に繋がることを。


 


 


 


 


 ヒロは、まだ知らなかった。

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