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第16話 少しだけ騒がしい日常


 「……起きた?」


 


 柔らかい声。


 


 目を開けると——


 


 すぐ近くに、ユナがいた。


 


「……近くない?」


 


「いつも通りだよ」


 


 


 ヒロはしばらく黙って、ユナを見る。


 


 距離が近い。


 


 というか——近すぎる。


 

挿絵(By みてみん)



「起きるたびに思うけどさ」


 


「うん」


 


「なんでそんな近いんだ?」


 


 


 ユナは少しだけ首をかしげる。


 


「ダメ?」


 


 


「ダメではないけど」


 


 


 ヒロはため息をついた。


 


「慣れないだけだ」


 


 


「……そっか」


 


 


 どこか少しだけ、残念そうだった。


 


 


 体を起こす。


 


 


「……あれ」


 


 


 もう一人の気配。


 


 


 視線を向ける。


 


 


「グッドモーニングネ!」


 


 


 ミカが、窓際で座っていた。


 


 


「……なんでそこにいるんだよ」


 


 


「早く起きたネ」


 


 


「いやお前が早すぎるだろ」


 


 


「眠くなかったデス」


 


 


「自由か」


 


 


 


 ヒロは軽く伸びをする。


 


 


(ほんと、この二人……)


 


 


「……まあいいか」


 


 


「今日も行くネ?」


 


 


 ミカが楽しそうに言う。


 


 


「行くけど、その前に飯だな」


 


 


「大事」


 


 


 ユナが即答した。


 


 


 


 街へ出る。


 


 朝の空気は穏やかで、人の流れもゆったりしていた。


 


 


「今日はどうする?」


 


 


 ヒロが口を開く。


 


 


「昨日みたいなのは勘弁なんだけど」


 


 


「ミーは問題ナイネ!」


 


 


「お前はな」


 


 


 


「軽めにして、そのあと装備見直すか」


 


 


「いいと思う」


 


 


 ユナが頷く。


 


 


 


「ミーもついていくネ!」


 


 


「暴れるなよ」


 


 


「努力するネ」


 


 


「信用できねえ……」


 


 


 


 店が並ぶ通りに入る。


 


 


 ヒロは商品を見ながら歩く。


 


 


(ちゃんと見とかないとな)


 


(この先も使うだろうし)


 


 


「ヒロ、これ」


 


 


 ユナが回復アイテムを指さす。


 


 


「もう少し持っておいた方がいいと思う」


 


 


「だな」


 


 


 ヒロは素直に頷く。


 


 


 


 そのとき。


 


 


 ふと、空を見上げた。


 


 


「……?」


 


 


 屋根の上。


 


 


 フクロウが一羽——


 


 


 いや。


 


 


 二羽。


 


 


 こちらを見ていた。


 


 


「……なんだあれ」


 


 


「フクロウ?」


 


 


 ミカは一瞬だけ見て、すぐに興味を失う。


 


 


「どうでもいいネ」


 


 


 


 その横で。


 


 


 


「……」


 


 


 


 ユナの視線が、止まる。


 


 


 


 ほんの一瞬だけ。


 


 


 


 鋭く。


 


 


 


 フクロウを見た。


 


 


 


「ユナ?」


 


 


 


「……ううん」


 


 


 


 すぐに視線を戻す。


 


 


 


「なんでもない」


 


 


 


 けれど。


 


 


 


 その手が、少しだけ強くなる。


 


 


 


「……行こ」


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 ヒロは歩き出す。


 


 


 


 フクロウは動かない。


 


 


 


 ただ。


 


 


 


 じっと、見ていた。


 


 


 


 


 


 そのとき。


 


 


 


 ふと。


 


 


 


 ヒロは足を止めた。


 


 


 


「……?」


 


 


 


 わずかな違和感。


 


 


 


 誰かに見られているような。


 


 


 


(気のせいか……?)


 


 


 


「どうしたの?」


 


 


 


「いや……」


 


 


 


 首を振る。


 


 


 


「なんでもない」


 


 


 


 


 


 歩き出す。


 


 


 


 いつも通りの朝。


 


 


 


 いつも通りの会話。


 


 


 


 ——のはずだった。


 


 


 


 けれど。


 


 


 


 ほんの少しだけ。


 


 


 


 何かが、ズレていた。

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