第107話 さらなる違和感
魔王城へ向かう。
森は終わっていた。
黒い城壁。
巨大な塔。
近づくほど。
その大きさが分かる。
「どうッスか!」
マキが胸を張った。
「凄いッスよね!」
「何で誇らしげネ?」
ミカが呆れる。
「いや!」
「魔王の城ッスよ!?」
……
「あっ」
「そうッスよね……」
慌てて言い直した。
そんな二人の横。
ユナは黙っていた。
前だけを見ている。
「ユナ?」
ミカが覗き込む。
「何でもない」
即答。
「顔怖いヨ」
「別に」
「怖いネ」
ユナが小さくため息を吐いた。
その様子を見ながら。
ヒロは考えていた。
モラクス。
ミカ。
あの謎の少女。
そして。
自分自身。
死なない。
何度も。
助かってきた。
あり得ない傷でも。
気付けば生きていた。
今回も。
ミカは胸を貫かれた。
それなのに。
傷は消えていた。
「……似てる」
小さく呟く。
「何がネ?」
ミカが首を傾げた。
「いや」
首を振る。
まだ分からない。
だから言えない。
それに。
他にもあった。
敵の技。
気付けば使えていた。
異世界に来て。
間もない頃。
自分を殺した女。
あの時、受けた力。
フォカロールの風刃。
モラクスとの戦いでも。
自然に使っていた。
なぜ。
使える。
食らったからか。
見たからか。
分からない。
分からないことばかりだった。
「……」
空を見る。
青空。
見慣れたはずなのに。
どこか遠い。
そして。
ふと思った。
そもそも。
俺は。
どうやってここへ来た。
「……あ」
足が止まる。
何か。
大事なことを忘れている。
そんな気がした。
学校。
教室。
幼馴染。
そこから先を思い出せない。
「ヒロ」
ユナだった。
ヒロが顔を上げる。
ユナは前を見ていた。
「着いた」
巨大な門。
魔王城。
目の前にある。
「行くネ」
ミカが笑う。
重い門を押した。
ギギギギギ。
ゆっくり開く。
中は静かだった。
長い廊下。
赤い絨毯。
誰もいない。
その時。
「ふふっ」
女の声。
全員が振り向く。
そこにいた。
豪華なソファ。
いつからいたのか。
一人の女が座っている。
長い髪。
白い肌。
妖艶な笑み。
脚を組み。
楽しそうに。
ヒロ達を見ていた。
「待っていたわ」




