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異世界リボーン――不死の身体で始まる冒険、これは現世へ還るための物語  作者: 東アガル


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106/108

第106話 傷跡


 静寂(せいじゃく)


 


 


 森に風が吹く。


 


 


 


 ついさっきまで。


 


 


 


 そこにいた。


 


 


 


 黒髪の少女。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 モラクス。


 


 


 


 どちらも消えた。


 


 


 


「……なんだったんスか」


 


 


 


 マキが呟く。


 


 


 


 ユナが首を振った。


 


 


 


「分からない」


 


 


 


 エバは答えない。


 


 


 


 ただ。


 


 


 


 少女が消えた場所を見ていた。


 


 


 


「姉さんって言ってたッスよね」


 


 


 


 マキが首を(かし)げる。


 


 


 


「誰のことッスかね」


 


 


 


 再びユナが首を振った。


 


 


 


「私にも分からない」


 


 


 


 ヒロが顔を上げた。


 


 


 


「……ミカ」


 


 


 


 倒れたまま。


 


 


 


 動かない。


 


 


 


 胸を(つらぬ)かれた。


 


 


 


 あの瞬間を。


 


 


 


 全員が見ていた。


 


 


 


 ヒロが近づく。


 


 


 


 膝をつく。


 


 


 


「ミカ……」


 


 


 


 返事はない。


 


 


 


 ユナも隣へ来た。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 目を見開く。


 


 


 


「……?」


 


 


 


「どうしたッスか」


 


 


 


 マキが覗き込む。


 


 


 


 そして固まった。


 


 


 


「え?」


 


 


 


 胸。


 


 


 


 そこにあったはずの穴を見る。


 


 


 


 ……傷がない。


 


 


 


 服が破れ、血だけが残っている。


 


 


 


 傷口だけが。


 


 


 


 消えていた。


 


 


 


「いや」


 


 


 


「いやいやいや」


 


 


 


 マキが後ずさる。


 


 


 


「刺されたッスよね!?」


 


 


 


「見たッスよね!?」


 


 


 


 ユナも黙ったまま。


 


 


 


 視線を外せない。


 


 


 


 ヒロも。


 


 


 


 言葉が出なかった。


 


 


 


 その時。


 


 


 


「ん……」


 


 


 


 小さな声。


 


 


 


 全員が固まる。


 


 


 


 ミカの指が動いた。


 


 


 


「イタタ……」








 ゆっくり。








 目を開く。








「……勝ったネ?」


 


 


 


 数秒。


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


「生き返ったァァァ!?」


 


 


 


 マキが叫んだ。


 


 


 


「失礼ネ」


 


 


 


 ミカが起き上がる。


 


 


 


「ミー死んでないヨ」


 


 


 


「死んでたッス!!」


 


 


 


「多分気のせいネ」


 


 


 


「気のせいじゃないッス!!」


 


 


 


 マキが頭を抱えた。


 


 


 


 ヒロは笑わない。


 


 


 


 ミカを見る。


 


 


 


 胸を見る。


 


 


 


 傷はない。


 


 


 


 何も残っていない。


 


 


 


「……」


 


 


 


 ヒロの目が細くなる。


 


 


 


「ヒロ?」


 


 


 


 ミカが首を傾げた。


 


 


 


 ヒロは首を振る。


 


 


 


「いや」


 


 


 


「なんでもない」


 


 


 


 立ち上がる。


 


 


 


 そして。


 


 


 


 前を見る。


 


 


 


 森の向こう。


 


 


 


 巨大な城。


 


 


 


 黒い城壁。


 


 


 


 天を突く塔。


 


 


 


 魔王城。


 


 


 


「行こう」


 


 


 


 ヒロが言う。


 


 


 


 その時だった。


 


 


 


「先に行って」


 


 


 


 エバだった。


 


 


 


 全員が振り返る。


 


 


 


「どうしたネ?」


 


 


 


「少し気になることがある」


 


 


 


 短い返事。


 


 


 


 ミカが眉をひそめた。


 


 


 


「一人は危ないヨ」


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


 少しだけ。


 


 


 


 間が空く。


 


 


 


「また会いに来る」


 


 


 


 次の瞬間。


 


 


 


 エバの姿が消えた。


 


 


 


「消えたァァァ!?」


 


 


 


 マキが叫ぶ。


 


 


 


「相変わらずネ」


 


 


 


 ミカが肩をすくめた。


 


 


 


 ヒロは少しだけ。


 


 


 


 エバが消えた場所を見る。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 何も言わなかった。


 


 


 


「行こう」


 


 


 


 再び歩き出す。


 


 


 


 その先には。


 


 


 


 魔王城が待っていた。

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