第102話 1000
巨大な魔力が膨れ上がる。
森が震える。
地面が軋む。
「……何ネ」
ミカが眉をひそめた。
おかしい。
今までとは違う。
モラクスが動かない。
ただ。
立っているだけ。
なのに。
空気が重い。
「ユナさん……」
マキの声が震える。
ユナは答えない。
ただ。
モラクスを見ていた。
「……変わる」
ぽつり。
その直後だった。
——ドクン。
嫌な音。
モラクスの身体が膨れ上がる。
「なっ……!?」
ヒロが目を見開く。
筋肉。
骨。
魔力。
全てが増殖する。
顔が伸びる。
獣。
いや。
牛。
巨大なツノが天を突いた。
もう──
人の形ではなかった。
「……ハッ」
モラクスが笑った。
低く。
獰猛に。
「いい」
低く漏れたその声に。
森が震えた。
「1000……」
ユナが呟く。
マキの顔色が変わる。
「レベル1000ッス……」
一瞬。
空気が止まった。
「は?」
ヒロだけが理解できない。
次の瞬間。
モラクスが消えた。
「っ!?」
速い。
比較にならない。
ミカが反応する。
爪を構える。
だが。
間に合わない。
——ドゴォォォォン!!
衝撃。
ミカが吹き飛ぶ。
「ミカ!」
ヒロが叫ぶ。
木々を何本も折りながら。
ミカが地面を転がった。
「っ……!」
立つ。
それでも立つ。
だが。
口元から血が流れていた。
「冗談じゃないネ……」
その時。
モラクスがこちらを見る。
巨大なツノ。
ゆっくり。
前へ向いた。
「ユナ!!」
ヒロが叫ぶ。
「フィールド!」
「分かってる!」
透明な壁。
展開。
全員を包み込む。
モラクスが一歩踏み込む。
ツノが光る。
「え……?」
ユナの顔が強張る。
次の瞬間。
——バキィィィィン!!!
轟音。
フィールドに亀裂が走った。
「なっ!?」
ヒロが目を見開く。
——パリン。
フィールドが砕け散った。
「そんな……」
ユナの声が漏れる。
初めてだった。
自分のフィールドが破壊されたのは。
その向こうで。
モラクスが笑う。
巨大なツノを揺らしながら。
楽しそうに。
獰猛に。
絶望だけを連れて。




