表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリジン  作者: ふとん
15/15

空の下

 今日もフロアは混んでいた。

 幾人もの人が掲示板を見て溜息をついて、検索画面をみて挫折していく。

 そんな中、何やら鬼気迫る様子でパソコンにしがみついている男がいる。

 サングラスをかけてはいるが、理想を偶像化したような端正な容貌の男である。ただ、すらりとした長身には真っ黒なコート、そしてあまり似合わない黒髪である。

「貴恵村数斗さん」

 受付で名前を呼ばれているのだが、パソコンの検索画面に見入っているのか気がつかない。

「呼んでますよ」

 パソコンの順番を待っていたフリーターらしい青年が呼びかけると、愛想笑いで場所を譲った。

 そそくさと受付に顔を出した男を見遣って、受付嬢は男が書いたらしい書類を突きだした。

「既にご職業についておられる方に、斡旋はできません」

「そ、そこを何とか……」

「できません」

 押し売りを断るかの如く、即答すると、受付嬢は次の名簿を呼び上げた。

 男は居場所をあっけなく追い出されて、職業安定所の入ったビルを出る。

 すると、その男の眼前に、一人の女が立った。

 淡い茶色の長髪の女である。かっちりとしたスーツ姿で、仁王立ちしている。

「貴恵村さん」

 女は怒りを押し殺すように男に呼びかける。

 だが、男はそれには応えず、その場を逃げ出した。

 はずだった。

 手慣れた様子の大男に首根っこを掴まれたのだ。

 女はそれを確かめずに、さっさと歩き出す。

「行くわよ。メネッセ」

「め、メネッセ。見逃してくれ」

 男が拝むが、巨漢はすまなそうな顔をしながら男を引きずっていく。

「すみまない。貴恵村さん」

「貴恵村さん。毎回毎回、あなたのために労力をさくのは、やぶさかではないわ。でももうちょっと理解がほしいわね」

 先を歩いている女は振り返りもせず言った。

 男は最後まで望みは捨てない覚悟なのか、あきらめ悪く粘った。

「こういうことはだね。相互理解が必要だと思うんだ。瀬戸さん」

 女は道路沿いに止めた車の後部座席側のドアを開く。

「仕事よ」

 ビルの上にある雲は、地上をあざ笑うかのように蒼空に消えた。

 それはとても、鮮やかに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ